私の頭の中の川

日々絶えず思考が頭の中を巡る中、外側からはまた絶えず外部刺激がある。私が見たり聞いたり読んだり体感したりしたことを受けて、思考は一本の流れではなく、横や上から流入してくるものを受けてぐるぐると渦を巻いていく。できるだけ記録しておきたいと思うのだが外の流れは私の中の川の流れより早く、また記録を取ろうとする手に思考が追いつくことはなく、しようとするとうまく書き起こせす、考えたそばから霧散していく。外の流れはその間も止まることなく、他から流入してくる急流を受け入れることだけで精一杯だ。「確かにそこにあった」ことは決定的に一点にあるが、進みを止められないためにそこに旗を立てることもままならず濁流に流されていく。その地点ははるか遠くなり確かにあの地点にあった気がするという記憶のみが残るばかりだ。過去の向こう側ははるか彼方でぼんやりとしか見えない。私が語ろうとすることはすべてそれを行おうとする指の間からすり抜けてゆく。以前のように体験したことをつぶさに残すことが、私にはもう可能ではない。頭の中の容量はいっぱいいっぱいで、それを増やすために記憶はどんどん忘れ去られていく。何も忘れたくない。速すぎる流れに、押し流されてゆく。ただ流されてゆく。

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