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#007|広島のランティス

時々出張に行く広島で、きれいなマツダ・ランティスを見かけた。
ランティスは2種類のボディを持っており、そのうち5ドアクーペのほうは、マニアックなファンの多い車種と記憶している。僕の家の近所でも、埃をかぶった5ドアクーペを車庫で眠らせている家がある。しかし、写真の4ドアハードトップは、ここ何年も見かけたことはなかった。もはや日本でもだいぶ少なくなっているのではないだろうか。
 
このクルマが発売されたのは1993年で、同時に投入された5ドアクーペは、その外観デザインの美しさが話題となった。確かに、「323F」(日本名ファミリア・アスティナ)の発展形を思わせる5ドア+ハッチゲートのボディは、欧州では日本以上に評判をとったとも聞いた。

でも、4ドアハードトップはいただけなかった。当時、世の中にはまだ「カリーナEDコンセプト」に基づく4ドア車があふれていたが、このクルマもよくあるカリーナEDの亜種のように思えて、当時の僕はあまり興味をそそられなかった。全体のフォルムもダメなら、リアコンビランプも好きになれなかった。
 
でも、このマツダお膝元の広島で、約30年を生き延びた車両に遭遇し、(おそらくは)日常の足として長きにわたってこのクルマを静かに、そして大事に乗っているオーナーのことを考えると、結局クルマなんて、実際に懐を痛めて買う人が、好きなものを選び、好きなように乗ればいいのだという気がしてきた。
誰に何を言われようが、そのクルマの価値を決められるのは、そのクルマのオーナーだけだ。誰もこのランティスとオーナーの間に積み上げられた私的な歴史に、ケチをつけることはできないのである。そう考えるとこのクルマの外観も味があると思えてきたし、すごくいいものを見せられた気がした。

きれいに掃除された、しかし不自然にきれいすぎない外観。フリオリジナルなのがうれしい。
カリーナEDコンセプトではあるが、キャビンは結構大きいことに気づく。
個性的なリアコンビランプを改めて確認。いまなら受け入れられそうな気がする。
ランティス5ドアクーペ。あえての中級グレード。デザイン優先でありながら、後席乗員のためにルーフ後端を膨らませてヘッドルームを確保している。


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