RBA 金融政策に関する声明
11月2日にオーストラリア準備銀行(RBA)の定例理事会で金融政策の発表がありました。
豪中銀 YCCの終了を発表
11月2日のRBAの定例理事会で、2024年4月償還債(3年物国債)の利回りを0.1%とする政策(イールドカーブコントロール:YCC)の打ち切りを発表しました。
YCCに関しては、先週、RBAが予告なく3年物国債の利回りコントロールを取りやめ、利回りが0.7%位まで急騰していましたので、今回の会合で正式発表されるのではとの観測がありました。
YCCの打ち切りの理由としては、インフレ目標(2~3%)に向けた予想よりも早い進展や、経済の改善を挙げています。
政策金利であるキャッシュレート誘導目標を0.1%で据え置き、少なくとも2022年2月半ばまで週40億豪ドルペースで債券買い入れを行う方針の維持も発表されています。
四半期経済見通し
四半期経済見通しでは、インフレ率を上方修正し、失業率は2023年に向けて4%へ低下する見込みとなっています。
上方修正されたインフレ率は、2021年10-12月期に前年比+3.25%まで上昇した後、2022 年同月期に同+2.25%、2023年同月期に同+2.5%となる見通しです。
労働力
豪では、行動制限が緩和され人流も戻り、労働市場も回復傾向にあります。10月の求人広告件数は4カ月ぶりに増加し、デルタ株感染拡大前の2021年6月とほぼ同水準まで改善しました。(下のグラフ参照)
パンデミックの発生時に非自発的な離職率が急激に上昇し、2021年2月までの1年間に離職または失業した人の5人に1人が解雇されました。対照的に、パンデミックの開始時に自発的な理由で仕事を辞める人の数は減少していましたが、昨年とは異なり、最近の離職者数の増加は自主的な理由によるものであり、労働力不足から新規雇用に好条件を提示する企業が増え、労働者はより良い条件の仕事を得るために転職する人が増加している傾向が伺えます。賃金の上昇はインフレ率の上昇に繋がるため、インフレ率の上方修正の背景の一つではないでしょうか?(下のグラフ参照)
労働参加率は、6月の66.2%から9月は64.5%に低下しています。様々な理由から、職に就いていない人が多くいるため、労働参加率の好転が労働市場の安定に繋がり、最終的には安定した景気回復に繋がると思います。
この点からすると、豪の労働市場もまだ回復の途中であると言えるかもしれません。
住宅市場の高騰と与信残高
RBAの金融政策に関する説明で気になるポイントとして、国内情勢では住宅価格の高騰です。ほとんどの都市では、平均住宅価格が最高値を更新しています。(下のグラフ参照)
新築一戸建て住宅の承認件数は減少しているが、パンデミック前の水準を上回っており、今後数年間で約25万戸の住宅が完成する予定となっています。また、改築・増築の承認は過去1年間で大きく増加しており、多くの世帯が家で過ごす時間が長くなり、ロックダウンや国境の制限により消費の選択肢が減ったことで住宅の購入や改修に資金を使っていることが表れています。
この住宅への投資を促進していたのが、低利の住宅ローンです。好調な不動産販売を受けて、金融機関は新規顧客獲得のため低金利の住宅ローンを提供しています。長期固定金利型のローンは金利も上昇していますが、貸付残高も減少しており、その代わりに変動金利型住宅ローンが増加しています。(下のグラフ参照)
金融機関の貸付残高は既にパンデミック前の水準を超えており、住宅ローンの増加とともに企業への貸付も増加しています。(下のグラフ参照)
好調な不動産販売による需要と、急速な景気回復による企業の資金需要が表れている結果となっています。
利上げが行われるとなれば、これら借入の返済に直撃し、景気が安定し、企業収益の向上、雇用の安定、労働者の可処分所得の上昇などが見えてこないと経済に与える影響は大きくなるかもしれません。
利上げの見通し
金融政策発表後の記者会見で、ロウRBA総裁はYCCを廃止し、利上げに向け道を開くことで新型コロナウイルス禍で講じた景気刺激策の解除に向け大きな一歩を踏み出したと説明しつつ、早期利上げの市場観測を改めて否定しています。
利上げの条件としては、「インフレ率見通しが2~3%のRBAの目標レンジ内にあること」としており、RBAの四半期経済見通しに基づくと、2021年10-12月期は3.25%となり景気の過熱先行でインフレ率がレンジを越えますが、2022年6月期には2.75%となり目標レンジ内に収まることになりますので、このタイミングで利上げが行われる可能性が高いと市場も予測しています。
この目標の達成のためには、労働参加率の改善による労働力不足の改善、賃金上による可処分所得の上昇などが必要となるため、ここから次回CPI発表まで、雇用統計のデータを確認しながら、その達成状況を見極める展開となるかもしれません。
まずは、来週11月11日の雇用統計に注目です。
<注意事項>
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