「全くあたりません」しか言い訳の方法がないという時点で、すでにもうかなりヤバいという話

 昨今、某首相がやたらめったら言い放つ、「全くあたりません」という空虚な言葉。

 聞いてる方としては、どう考えても「心当たりあるんだろうな」としか思えない。でも仮に、ちょっとでも「当たってます」と言いでもしたら、非難ごうごうになるのは必至なので、彼としては「全く」あたらないということにしておくしかない。もちろん、そこに欠けているのは「真摯な姿勢」だ。

 というか、本当に「全く心当たりのない」「心外な」言いがかりなのだったとしたら、首相はもっとキレていいに決まっている。そもそも、制度を「恣意的に運用しようとしてるんじゃないか」なんていう批判は、相当な根拠に基づかないと指摘できないものだろう。

 そして、今回の法改正では、「内閣が認めれば特例で延長できる」という規定がある時点で、明らかにそこに「恣意」が含まれる余地をうんでいるわけだ。そりゃあ、ふつうの国民は疑問をもつもんだろう。だから、純粋に「大丈夫ですか?」って聞いてるわけで。それを、「全く的外れな指摘だ」と言うことでしか反論できない時点で、そこに「恣意」が多少なり含まれてることをもう明らかにしちゃってるわけだ。「じゃあその基準をちゃんと示してください」って言ってるのに、いつまでも示そうともしない。こりゃもうアウトじゃんって話になる。

 思えば、「桜を見る会」の前夜祭の収支を、報告書に記入していなかった話でも、これに似たような答弁がつづいた。というか、これはもうほぼほぼ「アウト」という場面まで追い詰めてるのに、あと一手が打てていない。

 ただとにかく気になるのは、この問題にしても、アベ側があたかも野党の「的外れな指摘」だと見せかけようとしている点だ。「領収書は事務所じゃなくて、参加者ひとりひとりに渡した」なんていうムチャクチャを言ってる始末だし。その中で俺がいちばん気になるのは、この前夜祭に実際に参加した奴らが、なんで「アベを守ろう!」と言って立ち上らないんだろうっていう純粋な疑問である。みんながもらった領収書を手に持って、「アベさんはウソなんかついてない!!」と言いながら国会に押しかけでもすればいいのに。というか、もしアベの言ってることが本当なのだとしたら、完全に野党がでっち上げたとんでもない「言いがかり」をつけてきてるってことになるわけだし。そんなことをされたら、ふつうの人は怒るだろう。仮にも「支持者」なら。

 でも、そんな人は出てきていないようだ。だとするとどう考えても、指摘されていることが「真実」であって、「政治資金収支報告書への不記載」の構成要件を満たすと考えるのが、ふつうの流れだろう。そして、アベはもうすでに十分「ヤベー」って思ってるから、「全くあたらない」という「全否定」で応酬するしかないわけだ。


 ただ、この流れの中でとにかく俺がいちばん危ないと思ってるのは、この「全くあたらない」という発言を真に受けてしまっているアベ支持者がけっこういるんじゃないかってことだ。「私の支持するあの人が、ウソなんかつくはずない!」という思考停止に陥ってる人がけっこういそうなのだ。

 さて、その支持者のほうからこの一連の問題追及の流れを見てみると、とにかくアベは「悪いこと」は何ひとつしてないっていう話になる。その根拠は、「全くあたらない」と、「尊いあの人」が言っているからで。

 そうすると、その「あのお人」に対してイチャモンをつけている「野党」のやつらが、「とんでもない大悪党」に見えてくるものだ。「私にはまったく理解のできない複雑なイチャモンをつけてきて、あのお方を苦しめているのだ」という発想になってもおかしくなさそうだ。そういう人からすると、「こんなにささいな重箱の隅をつつくことでしか、彼らは自分の存在をアピールできないんだ」というふうに見えるだろう。「しかもこんなウソ八百を並べて」と。検察庁法改正についても、「こんなコロナで大変な最中に、なにをやかましく叫んでるんだろう」ということになる。でも、その人たちは争われている「中身」をいっさい知らない。だから、それに反論するには、「興味ありません」という論法に頼るしかなくなる。

 というか、ほんとうは彼ら自身も、心のスミのスミには、ひとカケラくらいアベに対する「疑念」があるけど、それを追求すると、今まで覆い隠してきた「ボロ」が全部出てくることになって、自分自身が反省したりしなくちゃいけないことになるって思ってんじゃないか。それがイヤだから、とにかく目をつぶって、耳もふさいでるんじゃなかろうか。そういう姿勢の先に、将来の多くの国民の「苦しみ」が生まれる可能性があるなんてことは、いっさい考えてなさそうだけど。

 

 とにもかくにも、ただ「全くあたりません」というウソをついて言い訳をする為政者よりも、多少なりその「当たる」部分に向き合って、問題点を整理、改善して、国民にわかりやすく提示することができる人のほうが、絶対に理想だよなぁ、って俺には思えるのだけど。

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