ECB理事会議事要旨にみるユーロの展望

■ ECBは新型コロナウイルス感染再拡大などリスク要因に注視し、追加緩和の必要性を唱える

■ ECBメンバー内の意見調整が図られるまで、ユーロは高値圏で居所を探る展開に

 欧州中銀(ECB)は昨日、9月9、10日に開催した理事会議事要旨を公表した。主要政策金利は据え置き、またパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の買い入れ額を1兆3500億ユーロに維持し、買い入れ期間は少なくとも来年6月末まで、2022年末までの再投資継続も決めた。市場が比較的安定していることを踏まえ、一部のメンバーは買い入れ規模の縮小を提案したが、期限までにすべての買い入れ枠が利用される公算が大きいとの認識が示された。こうしたなか、新型コロナウイルス感染再拡大、ユーロ高、英国と欧州連合(EU)との離脱交渉、米大統領選など、様々なリスク要因に着目。不確実性が高い環境の下で、「金融政策は安定した姿勢を維持することが適切」だと指摘した。ユーロ高については、政策効果を打ち消し、インフレ見通しに影響を与えることに懸念の色をにじませた。こうしたなか、「裁量の余地(free hand)」を保つ必要性に言及し、為替レートを含む全ての情報を踏まえ、必要に応じ適切な政策を講じる柔軟性を維持すると強調した。

 一方、ECBメンバー内の意見集約は図られていない様子もうかがえる。ECB理事会メンバーでドイツ連銀のワイトマン総裁は、金融緩和策はユーロ圏経済を想定以上に押し上げる可能性があることに鑑み、追加緩和の必要はないとの考えを示した。ECBの経済・物価見通しには、EU加盟国が合意した7500億ユーロ規模の復興基金などが含まれておらず、追加緩和は喫緊の課題ではないとの認識だ。一方、デキンドスECB副総裁は、「景気回復の勢いが弱まるなか、インフレ期待は低下しており、一段の措置を講じる必要がある」と慎重姿勢を崩していない。9月のユーロ圏消費者物価指数(HICP、速報値)は前年比0.3%低下し、依然としてデフレリスクがくすぶる。10月29日の次回理事会では現行政策が据え置かれる可能性はあるが、市場では12月10日の年内最後の理事会でPEPPの拡充が決定されるとの見方が高まる。追加緩和のタイミングや内容を見極めるまで、当面のユーロドルは方向感に乏しく、1.16-1.19ドル、ユーロ円は123円から126円で居所を探る展開になるとみている。

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