リスク選好の背景に注目

■ 米ハイテク株や金は新型コロナ禍が逆風とはならず、マネーの流入先として選択されやすかった

■ 仮に、早期景気回復を見込んだ相場となれば、投資家の物色対象の序列に変化が生じよう

 ハイテク株中心の米ナスダック総合と金価格(現物)の年初来上昇率(9月3日終値時点)は、前者が27.7%、後者が26.7%と、主要な株価指数やアセットクラスの中で両者のパフォーマンスは突出している。しかしながら、8月以降では、前者が6.6%上昇しているのに対して後者は2.3%下落しており、米ハイテク株と金の「二強」状態に変化が生じた。
  
 「二強」への選好が続いた背景は、新型コロナウイルスによる世界経済への影響がネガティブな材料となるか否かの違いであると筆者は考える。景気の最悪期は通過したとみられる現時点においても、ほとんどのリスク資産には「新型コロナによる景気の下振れ懸念」が付きまとう。しかし、米ハイテク株は、在宅勤務や巣ごもり消費の増加など経済活動の様式が急速に変化するなかで、むしろ企業業績の拡大が期待できる。金については、「安全資産」と認識されており、景気下振れ懸念が払しょくされない限りは一定の需要が見込まれよう。さらには、主要通貨の金利がほぼゼロ近辺まで低下しており、利息が付かないという実物資産保有のデメリットが低下していることもプラス材料となる。よって、いずれも世界的な大規模金融緩和によって生じたマネーの流入先として選択されやすかったとみている。

 では、仮にコロナ禍が終息したとするとどうか。米ハイテク株は、相対的な優位性は低下しようが、業績拡大期待は持続する。一方、金については、安全資産としての需要が大きく低下するうえ、主要通貨の金利が上昇すれば実物資産保有のデメリットも意識されるため、「二強」の明暗は分かれよう。つまり、8月から足元にかけての相場は、コロナ禍の終息までとは言わないまでも、景気回復期待の高まりを背景としたものと考えられる。昨日、米国株が急落したが、特段の悪材料は見当たらない。各国中銀の緩和姿勢も維持されており、今後もリスク選好的な地合いが続く公算が大きいとみている。しかし、一時的ではなく、本格的にリスク選好の主たる背景が「豊富な流動性」から「景気回復」に移るのであれば、マネーの流入先としての序列に変化が生じることとなろう。

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