元高圧力はくすぶる

■ 中国人民銀行の法定準備金撤廃は元高けん制にあらず

■ 元高進行の背景に変化はなく、元高圧力はくすぶる

 人民元相場が揺れている。米ドル人民元レートは6月上旬から7月上旬にかけて7.04-7.08元で推移していたものの、徐々に元高が進行。10月9日には6.69元台前半まで元高が進んだ。その背景には、投資など内需主導の中国経済回復への期待に加え、中国の相対的高金利を狙った利回り追求の動きや指数採用による資金流入への期待があると思われる。中国の10年国債利回りは12日時点で約3.2%と、主要先進国より高水準にある。また、指数算出会社FTSEラッセルは9月24日、2021年に世界国債インデックス(WGBI)に中国国債を組み入れると発表した。中国中央国債登記結算(CCDC)のデータによると、外国人投資家の中国国債保有高は9月末時点で1.68兆元と、前月比4.8%増となり過去最高を記録した。元建て債に対する海外投資家の関心が高まっていることがうかがえる。

 こうしたなか、中国人民銀行は10日に、金融機関が外国為替市場で市中銀行が為替予約(フォワード取引)を行う際の法定準備金を12日から撤廃すると発表した。従来は前月のフォワード取引の決済額の20%を外為関連リスクの準備金として計上することが義務付けられていたが、これをゼロにするという。これにより元売りポジションを造成しやすくなるため、人民銀が足元の急激な元高進行をけん制したと受け止められた。国慶節の休場明けの9日に6.69元台まで元高ドル安が進んだが、この発表を受けて反転し、12日には6.75元台前半まで戻している。

 しかしながら、今回の措置は為替ヘッジの余地を広げるもので、元高・元安双方向のボラティリティーが高まるとみられる。為替予約にかかる法定準備金は、元安が進むなか投機的な元買いを実施しにくくする通貨管理上の施策として、2015年8月に導入された。その後は急速な元高が進むなかで2017年9月にゼロに引き下げられ、元安圧力が強まった2018年8月には再び20%に引き上げられた経緯があるが、いずれの局面でも元高・元安に歯止めをかける結果とはならなかった。今回の措置が中国当局による元高けん制と解釈するのは早計で、元高進行の背景に変化がないなか、元高ドル安が進展する余地は残されているとみるべきだろう。

いつもありがとうございます。 サポートいただけると励みになります!