インド株:現状の整理と当面の注目点

■ 2020年のインド株は5月以降、海外投資家が株価を支えている構図と認識している

■ 当面の注目点は3点あり、「海外投資家」「インド準備銀行」「インド経済」を巡る動向とみる

 本稿では、主要新興国の一つであるインド株式市場の動向を整理する。MSCI新興国株指数では、国別配分比率でインドは第4位(8.3%、2020年8月末時点)。また、2019年に国際連合が公表したレポート*では、インドの人口が2027年に中国を抜くと予測されている。一般的に、経済成長を測るGDPの計算では人口増加が成長の大きな要素となる。新型コロナ禍以降でも複数の米ハイテク企業がインドの複合企業へ出資を継続するなど、米中対立の激化も相まって、世界第2位の消費市場とされるインドは、今後も注目を集める国と考えている。

 直近のインド株式指数(S&P BSE Sensex Index 以下、同指数)は、3月下旬につけた年初来安値(25,638.90)から上昇しているが、東アジア地域の新興国と異なり、昨年末水準(41,253.74)の回復には至っていない。いわば「株価はもう一伸びに欠ける」状況と言えよう。しかしながら、Bloombergの集計では、同指数の予想株価収益率(PER)は13.0倍(3月24日時点)から21.0倍まで上昇(9月8日時点)。過去5年間のレンジ上限が概ね19倍だったことを考慮すると、一段の株価上昇を見込むには企業業績の明確な好転が必要となろう。

 当面のインド株見通しで筆者が重視する材料は3点。(1)海外投資家の動向、(2)インド準備銀行(RBI)の政策姿勢、(3)インド経済の動向だ。現時点で(1)は株価の支援材料、(2)は中立材料、(3)は悪材料と整理する。(1)では、海外投資家によるインド株への投資額が年初来で約51億ドルの流入超まで拡大。なお、5月上旬以降では累積で100億ドル以上の資金が流入超となり、海外投資家が株価を支える構図との認識だ。(2)では、RBIが3月以降計1.15%の政策金利引き下げを実施した上、複数の金融安定化措置を導入するなど、金融緩和姿勢を維持。ただし、直近では消費者物価上昇率(前年比)がRBIの目標値(4±2%)のレンジ上限を超え、追加利下げ観測は大きく後退した。(3)では、大規模な都市封鎖策に伴い、4-6月期実質GDPが前年比23.9%減と過去最悪のマイナス幅を記録。また、本稿執筆時点でインド国内の新型コロナウイルス感染者数は世界第2位まで増加し、収束の兆しはみえない。そのため、市場では景気回復見通しが2021年にずれ込むなど、企業業績の急速な好転は見込みづらい。この中で、目先は特に(1)に注目したい。インドの信用格付けが非投資適格級へ格下げされた場合、海外投資家の資金引き揚げに伴う株価急落リスクは無視できないと考えるためだ。当面は(1)と(3)の綱引きに振らされ、インド株は不安定な展開が続くと想定する。

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