IMFの見通しは米中両国への注目を促す形に

■ 世界経済見通し(WEO)を踏まえると、今後投資家は米中両国の資産に焦点を当てていくと想定

■ IMFは各国政府に対して、景気支援策の継続や多国間協調の進展を求めた

 本稿では、10月13日に公表された国際通貨基金(IMF)の世界経済見通し(WEO)について整理する。この見通しは、世界の投資家が景気動向を掴む上で重要視するデータの一つである。更新された見通し全体の傾向を踏まえると、経済面で米中両国により注目が集まる状況が示唆されたとみる。ただし、世界経済が新型コロナウイルス感染拡大前の水準に戻るには長い時間がかかる点も明確にされた。また、パンデミックの今後の展開次第で経済見通しは変化する可能性が高い点をIMFは強調し、依然不確実性が高い状況に変わりはない。
2020年の見通しを今年6月時点の予想と比較すると、世界全体(マイナス5.2%→マイナス4.4%)と先進国(マイナス8.0%→マイナス5.8%)は、ともに上方修正された。背景は、先進国が主に5月と6月に都市封鎖を解除した後、市場予想を上回る速度で景気回復が進んだためとIMFは指摘した。一方、新興国(マイナス3.0%→マイナス3.3%)は2020年の見通しを一段と下方修正。特にインドの下方修正幅は5.8%ポイントに及び、見通し修正に大きく影響した。

 国別の見通しでは、米国と中国の上方修正に注目したい。先進国では、日本と英国は上方修正幅が1%ポイント未満だったが、米国は3.7%ポイントと大きく上方修正された。さらに、米国は協議中の追加経済対策が今回の予想の前提に含まれず、今後の上方修正も期待できる。新興国では、G20構成国で唯一今年のプラス成長が想定される中国(プラス1.0%→プラス1.9%)の見通しが上方修正された。つまり、IMFの見通しを踏まえると、政治面のリスクを考慮しつつも、投資家は今後、米中両国の資産に焦点を当てていくことが想定される。

 IMFによると、今後の経済成長に関するポイントは主に(1)パンデミックの展開と(2)各国政府の動向に分けられる。(1)では、都市封鎖地域の拡大を食い止められれば、景気回復にプラスとなる。目先は欧州の動向に注目が集まろう。(2)では、内政面で景気支援策の継続を強く求めている。これは、従来財政緊縮策を求めていたIMFが、一時的とはいえ財政支出を認める方向へ立場を変えたことを意味しており、重要な転換と解釈する。また、外交面ではワクチン開発、債務問題の解決、通商関係の緊張解消へ向けて、一層の多国間協調が求められるとした。

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