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家電量販店から

私は家電量販店が苦手だ。

蛍光灯の明るさ
電化製品特有の匂い
繰り返される高い声の売り込み

幼い頃から24歳になった今まで、
そこは自分から決して足を踏み入れない空間のひとつである。

高校生の時、お世話になった人から一冊の本を渡された。
HSPの本だ。
「多分あなたはこれかもしれない。でも病気とかじゃないし安心して読んで。」と言われた。

最初に簡単な診断項目があり、チェックしていく。
確かに当てはまる項目が多く、というか
・感動したらすぐに涙が出る
・グロテスクな表現に強い嫌悪感を示す
以外の2点以外全てに当てはまり、当時はひどく動揺した。

今やHSPに関する書籍が多くなり、病気ではないことは広く認識されている。つい考えすぎてしまう人や刺激に敏感な人たちが、その気質に名前を与えられたことで生きやすくなる。とても優しい世界で、なんだかほっこりあたたかい気持ちになる。

一方、その本を読んだ当時から私はなかなかこのHSPの気質を受け入れられない。
HSP(Highly Sensitive Person)という言葉と主な気質についての説明がひっかかるのだ。(日本では最近の某書籍より「繊細さん」の方が認知されているか)
断っておくが、名前や診断内容などにケチをつけるのではない。
ただ、こう名前を付けられたことで自分が普通ではない人間になった感じが嫌なのだ。自分は普通に過ごしている、普通の人間なのに。

HSPの気質として主に挙げられる2つの特性がある。
それらについて私が思うところを書くと、こうなる。

(1)考えすぎてしまう人
➡みんなだって考えているのに、なんで自分だけが「考えすぎて」いるなんて言えるのだろう。人によってその程度は違うのに、まるで自分が1番考えている人であるかのような言い方ではないか。
こう言われると、「考えている」という行為そのものにおごりを感じるようになってしまい、本当に考えたい事に集中できなくなる。
少し話は違うが、私は「○○についてずっと/たくさん考えた」とか自己申告してくる人が苦手なので(ブーメランでもある)、この性質を全然受け入れられていない。

(2)刺激に敏感な人
➡これもみんなでしょうよ。私だけじゃない。
確かにちょっとしたことに驚きやすかったりするし、「なんでそんなすぐビックリするの?」とは人から何度も言われてきた。でもなんか違う…

HSPに関する情報、特に書籍では読者の繊細さを汲んでか作者は優しく語りかけてくる。そして言う。「これは気質ですよ」

「これは気質ですよ」「病気じゃないですよ」
この言葉の裏に、私は「あなたは人の気づかないところに気がつく特別な人間ですよ」というメッセージをどうしても読み取ってしまう。
言ってしまうと。要は自分が特別な人間だと持ち上げられているような気がして嫌なのだ。
もちろん、自分は特別な人間だと思いたいし、思ってないと言ったら嘘になる。ただそれは口を裂けても言いたくない。こんなことを言うのは私にとって恥ずかしいことだから。

自分は考えているが、人より考えているなんて分からない。
人よりよく気がつくなんて分からない。
人よりも共感する気持ちが高くて疲れやすいだなんて。そんな。

私は自分がHSPだと言いたくない。
HSPだから自分の気質に折り合いをつけて開き直り、
他人にも「私はHSPだから」と恩赦のような、なにか許しを乞うようなことはしたくないのだ。

私がこの考えだからか、なんの躊躇もなく「私はHSPで本当に生きるのがしんどい」「HSPだからちょっとのことも気になっちゃって」と伝えてくる人が私は苦手だ。(特に初対面で言ってくる人)
だから?と思ってしまう。
HSPだと分かったなら、自分の心でその基質と折り合いをつければいいじゃない?
なんで私に言ってくるの?
あなたは私もHSPだとは思わない?「私もHSPなの!」って返すべき?
あなたのその申告の後、私は自分もそうと言ってあなたの会話の番を取りたくないから滅多にしないけど…
でもその申告が私には結構負担かもしれない…
書いてて思うけど自分めちゃくちゃ意地悪だな。
HSPじゃないかもな。

HSPという言葉を知ることで、私自身にもいい事はあった。
あの時のこの言葉は、ここまでは事実、ここからが自分の想像、ここからが被害妄想…
そうやって落ち着いて、分けて、深呼吸して、対処していくことが前よりは可能になった。
私はこの作業を1人心の中で毎日している。 しないと眠れない。

日頃の発言や振る舞いを思い出す度、私は後悔することの方が多い。
でも私のその後悔する対象は、恐らく相手が私に感じた不快感とはまた少し違う所にあるのだと思う。というのも、私に対する相手の不満を私自ら指摘して謝る時、ドンピシャでそれを指摘出来た経験があまりないのだ。
私の言葉を受けた相手はいつも不思議そうな顔でこちらを見つめてくる。
ああ、また失敗した。
もう何も考えたくない。人の気持ちなんてクソ喰らえ。自分の感情をもっと大切にしなきゃ。でも一緒にいる人が私と話してて楽しくなかったら?楽しくしなきゃ。一緒に笑えて私も初めて楽しくなるんだし…
これってHSPなのか?
違う。私は人間関係では、ただのご機嫌取りの八方美人、人の顔色をうかがいまくる臆病者だ。
私は自分がHSPではないと信じる人だ。

繰り返すが…
これはあくまでも私の感覚なので、しかも割とひねくれた考えなので、この記事で多くの人を不快な気持ちにさせてしまったらごめんなさい。多分悲しい気持ちになった人はいると思う…

それでも、私のHSPに対しての考えはこんな感じだ。
ちょっとスッキリしたから仕事行くぞ〜!