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ぐっすり寝ていたらお姫様が勝ってました......。




朝日が昇り、光がカーテンを貫通する。



光にこじ開けられて目を覚ますと、横には彼がぐっすりと寝ていた。


「最近家でも仕事しとったからな......」


最近は仕事から帰ってきても家で仕事している○○。


ただでさえ1度寝たらあまり起きないタイプなのに、疲れも相まってどこまでやったら起きないか気になる茉央。


いろはと咲月が家にやってくるのは午後と伝えてあるため、少なくとも午前中は起きないだろう。


「あ、せや。」


茉央はいいことを思いつき、3人のグループに集合時間を早めることを伝えた。
























                              ・・・

「おじゃましまーす。」




「ええよー」



朝でもテンションの高い咲月と普通くらいのいろは。


来てもらう時間を少し早めて、茉央達で○○にちょっとしたいらずらをしようと思った。




「なんで少し早くなったの?」


いろはの提案に茉央はドヤ顔をしながら答える。



「○○、最近疲れとるみたいでな?今もぐっすりやねん。」


「確かに、私たちに構ってくれてる時以外はパソコンとにらめっこしてたもんね......」


「そこで、誰が○○を起こせるか対決ってこと?」


「そう!」


茉央と咲月がハイタッチをしている中、いろはが口を開いた。



「寝かせてあげた方がいいんじゃない......?」



「大丈夫やで、○○はほんまに起きひんから」


「......知らないからね」



ウキウキな2人と罪悪感を抱えた1人は寝室へと向かっていった。






















「......」


扉を開けて入ってもぐっすりな○○。


「可愛い寝顔......」


咲月の口から漏れた言葉にいろはも自然と頷く。


「じゃあルール決めよか。」


「時間は5分くらい?」


「せやな、まぁ5分だけは何しても許したる。」



「ほんとに?!」



「さっちゃん、食いつきすぎ。」




こんだけ騒いでも起きない○○。


よほど疲れているのだろう。




順番はじゃんけんで咲月、茉央、いろはとなった。




「よーし、さちゃん行きまーす」


「ん、ええよ」






始まった途端に○○の上に跨り、ぐわんぐわんと○○を揺らす咲月。




「○○の大好きな咲月ちゃんですよー、ほら起きて。」



耳元で言ったり、乗っかったり。



見ている2人は茉央が冷蔵庫から取ってきた梨を食べて見ていた。






結局5分間、○○が起きることは無かった。



「起きないんだけど......どういうこと?」


「言ったやん、疲れとるって。」



「にしてもでしょ!」



梨をもうひとつ食べて、茉央が○○の元へ。



「行くで。」


「いいよー」




5分間が始まった途端、茉央は○○の頭の横に座った。



「○○......いつもありがと......」


膝の上に○○の頭を乗せ、膝枕の状態を作ると茉央は○○に軽い口付けをした。



「ねぇいろは、あれズルくない?」


「まぁ......呼吸してるとこ塞ぐのはね」



今回も見ている2人は梨をひとつまみ。



勝ちたかった咲月と大して勝負にこだわってないいろはに温度差はあるものの、茉央の行為に関しては少し疑問が残るところだった。




「なんでこれで起きないん......」



絶望する茉央、弱めのパンチを○○にお見舞いしたところで5分が過ぎてしまう。




「あれは無理や、訳分からん。」



彼女の茉央がこういっているのに、出来るわけないといろはは半ば勝負を諦めていた。




「じゃあ......行くね」


「ん、いいよー」




2人が見てる前でくっつくのも少し恥ずかしいと思い○○の頭を撫でていたら、突如○○の腕が伸びてきた。




「ふぇ......?!」



「んぅ......」



○○に抱き寄せられるいろは。



顔はトマトのように赤く、ミュージカルを経験したとは思えないくらいに感情を揺さぶられる。




「○○君......?」



起きてはいない様子だが、2人の方をちらっと見ると頬を少し膨らませていた。



「ずるい......」



「いつもああされとるの茉央やのに......」





いろはは身動きが取れないため、○○の事を少しくすぐってみることに。




「○○君......効くのかな......?」




脇腹や背中をくすぐっても効果が無く、首筋を触ってみる。



すると大きく寝返りをうち、それに伴っていろはもぐるっと横へ動かされた。



「首筋......弱いのかな?」



重点的に首筋を指でなぞったりさわったり。



明らかに反応している様子の○○に少し驚いた。




「茉央、○○は首弱いの?」



「分からん......でもあれみる感じ弱そうやな」





引き続き首筋を触っていると目は閉じているものの、○○の体が動き出した。




「んぅ......あれ......まお......」



寝ぼけているのか、いろはを茉央と勘違いして自分の胸に強めに抱き寄せる○○。



「○○君......」



顔はおろか耳まで真っ赤のいろは。


当然見ている2人はちょっぴり不機嫌になる。


○○がゆっくり目を開けると、目の前にいるのは茉央では無くいろはだった。


「あれ......いろは......いろは......?!」



脳が覚醒し、状況を理解する○○。




「あはは......ちょっと苦しいかな......」



かわいい。



○○の頭の中をこの四文字が支配しそうになる。




しかし、奥からの視線を感じてしまった。



「おい、鼻の下伸ばすな。」



「茉央......咲月もいる......」



いろはをゆっくりと解放し、頭を正常に働かせる。



「これ、どういうこと?」



「実は......」





勝負をするために少し早く集まったこと。



今はいろはの番だったことなどを伝えると、○○から質問があがった。



「対決なのに勝った人には何も無いの?」



「確かに......まぁ、○○が決めてええで。」



彼女からの視線を受けながら、○○はいろはに聞いた。



「いろはのお願い、何でもひとつ聞こうかと思ってるんだけどなにがいい......?」



○○からの提案。



最近はお姫様扱いされたり、気を遣ってくれたりだったいろは。



気にならないわけも無い。




「その......なんでもいいの......?」


なんでも。


この言葉の強さと広さからか、確認を取ってくる。



「うん、いいよ。」



横目に見える頬の膨らんだ可愛い子達を置いといて、目の前のお姫様に集中した。



「その......いろはとデートして欲しいな......?」




デート......デート?!


「え、デートって......」



「経験があった方が演技に幅が出るかなって......」




茉央の方を見ず、いろはと向き合って答えを出す。



「いいよ、行こっか。」



「ほんと?ありがと......!」



ようやく見れた笑顔にこちらも安心する。



「ていうか、いろはも疲れてるでしょ?一緒に寝よ?」



「え......う、うん......」


戸惑いながらも布団に入り込んでくるいろはを抱きしめる。




「ふふっ、あったかいね。」



「○○君こそ......」




いい雰囲気が流れる中、痺れを切らした外野の2人が声を上げる。



「○○ー!!」



「私達も混ぜろー!」




「ちょっ?!」



ベッドに飛び乗ってきた2人を受け止め、ダブルベッドに4人が寝転がった。




「うげぇ......いろは、大丈夫?」



「うん......」





「○○......好きやで......」



「私、みんなでいるこの時間がだーいすき!」



「ふふっ、俺も好き。」



「まおも!」



「いろはも......!」












休日のベッドの上では、クロッカスの淡い残り香が漂っていた......













To be continued......

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