パチュリ
パチュリは精油のことを知って一番初めに好きになったにおい。墨汁のようで呼吸が深くなる。
20数年前、ボディケアの店に勤めていた。
その店は大阪の真ん中、繁華街とオフィス街を備えている場所にあって、忙しかった。忙しすぎて、毎日鬱々していた。アリナミンの液体ドリンクをドラッグストアで購入して、一本キメてから仕事場に向かうような日々だった。
ある日、大阪駅を出てすぐの雑貨店に精油のロールオンボトルが販売されていて、その中の一本を手首に塗った。とてもいいにおいで、なんどもなんども手首から立ちのぼるにおいを吸いこんだ。出勤前にその店に立ち寄り、連日試し塗りをさせてもらった(しばらくつづけたが、ここまで好きならばとさすがに購入した)。気持ちがとても落ち着いた。
その時のかおりがパチュリだった。
これだけだと苦手だという人もいるけれど、ブレンドすると奥行きが出てぐっと深みが出る。パチュリ、今訳してみたところ。からだに言葉が沁みる。
昔、においと言ったら「においって言うな」と言われたことがある。その人の中では「におい=臭い」のだそうだ。そうなんだ。においというと、確かに有機質な感じ。でも、くさいけれどたまらなく好きみたいなフェチ具合もあって、「におい」という方を私は選ぶな。
そういえば、源氏物語には薫と匂宮が出てきたね。今思い出した。薫りと匂いは対照的だった。
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