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チ。

文字を読めない。書けない。そんな人たちが大半の時代の話。
地球は動かずに他の星たちが動いている。
天動説
太陽が動かずに地球を含めた星たちが動いている。
地動説

学生時代のほんの一瞬通り過ぎていくだけの情報。知っているのはガリレオ・ガリレイ位で、ほとんど人が興味すら持たなかったはずの話を、こんなにも面白く。深く切り込んでいく漫画。

「敵は手強いですよ。」
「あなた方が相手にしてるのは僕じゃない。異端者でもない。
 ある種の
   想像力であり
   好奇心であり
   逸脱で他者で外部で・・・・」
「畢竟(ひっきょう)、
 それは知性だ。」
「あれは流行り病のように増殖する。
宿主さえ制御不能だ。
 一組織が手懐けられる程かわいげのある物じゃない。」


『では勝つのは君か?』
『この選択は・・・
  君の未来にとって〈正解〉だと思うのか?』

12才の少年ラファウは答える。

「そりゃ不正解でしょ。」
「でも不正解は無意味を意味しません。」



宗教の教えに反している。
異端審問官ノヴァクは


『死の先に恐ろしい運命が待っているぞーーー』

12才の少年ラファウは応える。
ソクラテス曰く、

「誰も死を味わっていないのに
誰もが最大の悪で
 あるかのように決めつける」

エピクロス曰く、


「我々のある所に死はない
死のある所に我々はない」


セネカ曰く、


「生は適切に活用すれば
十分に長い」


異端審問官ノヴァクも応える。
『全て2千年近くも前の異教徒の言葉だろ!』
『救世主が誕生する前の暗愚な連中だ!
奴等には絶対神も救いもない!そんな言葉が何になる!』

「感動できる。」


「僕の命に変えてでも、この感動を生き残らす。」



『訳もわからん物に熱中して命すら投げる。
そんな状態を〈狂気〉と言うとは思わないのか!?』

「でもそんなのを、〈愛〉とも言えそうです。」



命を捨てても曲げられない信念があるか?
世界を敵に回しても貫きたい美学はあるか?

 
       引用 チ。第一集

地動説を研究する。漫画の話。
壮大な先人達が紡いだ話。
今の時代にあたりまえの事や考えが当たり前じゃなかった時代。

読み書きや思想までもが、一つの組織に独占されていた時代は、今の僕達からは考えられない。

言葉や文字すらも自由なこの時代に生まれてきた僕達はこのままで良いのかと考えさせられる。
あの時代は文字を読み書き残す事が〈奇跡〉だとある。
今の時代は比較的自由で、言葉や文字に溢れているが何処か閉塞感があり、ありふれた文字や言葉が大切にされていない時代かも知れない。

更に未来には言葉や文字、思想までもが過去に戻るかも知れない危機すら感じている、今。
この漫画に出てくる チ。
同音同語が上手く出来ている。

まだまだ続くこの物語が明日を生きる糧になっている。 
久しぶりに一撃でガツンとハマった漫画に出逢った。

チ。ー地球の運動についてー


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