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204:社交場はスーパーの前

今日も今日とて、家を掃除しておつかいに出た。
いつものスーパーに辿り着いたら、やけにおじいちゃんおばあちゃんの姿が多い。
ああ、あそこに来てる人たちだなー、と視線を向けた先にバタバタとはためく『エナジートロン』の文字。

確か数年前にできた店舗だと思うのだが、特に気にしたことは無かった。
だけど、今日は何だか気にかかってしまったので、スマホをポチポチいじりつつ、イートインコーナーでたむろしているおじいちゃんおばあちゃんの話に聞き耳を立ててみた。

『エナジートロン』とやらの効能や素晴らしさについて語り合っているのだろうという私の予測は見事に外れ、彼らの会話は本当に普通だった。
「この前のお正月、ひ孫が来た」とか「おせちはしばらく見たくない」とか、「そういえば〇〇の××さんが」とか。

井戸端会議かな!!

元介護職員だった私から見ると、彼らはとても楽しそうにしていて、生き生きとして見えた。

2年ほど前までは、近所にジジババのたまり場として有名だった個人経営のカラオケ屋さん(歌声喫茶?)があったのだが、オーナーさんがホームに入ってしまって閉店。
カラオケほどアクティブではないジジババ向けの喫茶店もあったのだが、こちらは5年ほど前に閉店。
落ち着いた店内にいつもコーヒーの豊かな香りがたゆたっていて、私も好きなお店だった。
だが、マスターが入院され、そのまま閉店になってしまった。

あとはファミレスのみとなった近辺で、ジジババたちの新たな社交場となったのが、どうやら『エナジートロン』とやらの店だったようだ。

老夫婦だけ、あるいは独居の高齢者が増えているのは、うちの近所を見渡しただけでもよく分かる。
何気ない会話でも、言葉を発する機会が少なくなると、口だって上手く回らなくなってしまうものだ。
そうすると言葉を発することも億劫になって、どんどん衰えていってしまうことが多い。
そういう意味では、スーパーで飲み物を買って、イートインコーナーでおしゃべりをするというのはいいことなんじゃないかなーと思う。

時代の流れというやつなのかどうか、ジジババたちがちょっとだけめかしこんで、近所の友達と話ができるような場所って、そういえば少なくなっているような気がする。
平和な時代が終わり始めているような、そんな空気があるものね。

この人たちが、元気に楽しく過ごしてくれたらいいなあ、あとカモられないでね! と思いながら、私はおつかいに戻った。
まあ、あんだけ元気に頭しゃっきりで喋れてれば、余計な心配かな、と思いながら。

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