好きなゲームを語る(3日目 Latria)

ゲーム情報


Latria
作者:Y.Ohashi
適正人数: 4人(箱には3~7とありますが、3人でも5人でもかなりゲーム性が失われます。)
プレイ時間:20分程度、ただし割と複数回プレイ前提。
現在絶版

以降の文章では、4人プレイを前提とした数値の記述があります。手札に使われるカードが90枚中40枚など。

ゲームの概要


占星術師として天体の巡りを予測する、みたいなストーリーだった気がします。ゲームのルールには特に絡んでこないのでほぼノーテーマです。
ドラフトで10枚の手札を構成したのち、同時に手札を出しては勝敗決定するステップを10ラウンド行います。
各ラウンドでは1枚の場札をめくったのちに全員がカードを出します。各色について場にあるカードのランクの和を出し、最もランク和が大きい色を勝利勢力とした上で、勝利勢力の中で最高ランクのカードを出したプレイヤーがラウンドの勝者となります。その勝者は多くの勝利点を獲得しますが、場札と同色で場札より低いランクのカードを出した人は自分の出したカードだけは勝利点として確保できるルールがあり、ランクが高いカードにも低いカードにも使いどころがある構成となっています。
ドラフトの際に得た色の偏りなどの情報を基に相手の動きを予想できるのがこのゲームのポイントといえるでしょう。


ゲームの特長


1.ドラフトを経ることによって発生する情報戦

得点確保のルールがあるとはいえある程度はラウンド勝利を取らなければ得点は伸びません。したがって手札中の強いカードをより強いカードとぶつからないように出せるか、逆に他プレイヤーの強いカードをより強い自分のカードで潰せるかが勝敗の鍵となることは容易に想像がつきます。
では強いカードを今出すべきなのか否かをどう判断するのでしょうか。同時出しでは結局相手が何を出してくるかなど分からない、場札の点数が高いときほど強いカードを出してきそうとはいえ、裏をかいて一旦しゃがみの可能性もあると考えていくと畢竟は指運で考えても無意味とも思えるところです。
しかし事はそう単純ではありません。事前にドラフトを行っており、各色の多寡や各色の最高ランクがある程度見えているためです。手札に使われるカードは90枚中40枚。ドラフトの過程でそのうち10+9+8+7=34枚は見えますし、見えない6枚も回ってきた手札から「これらより優先して取りたくなるカードが存在する」と存在だけは認知できます。
この情報があるおかげで、手の内の強いカードを今出したとしてどれほど勝てるか、その見込みがある程度分かります。自分の出そうとしているカードが色内最強と自信が持てることもありますし、色の偏りからこのラウンドは手札調整に回る人が多いだろうといった読みが立つこともあります。
そして、その読みに基づいた動きをしていればときに裏をかかれることはあってもトータルでは良い結果になることが多い点も報われるところです。


2.蝕が生み出す強烈なじゃんけん

ラウンドの勝敗決定手順から、基本的には場にめくられた出た色のカードを出すのが安定択(最大勢力になりやすい)と言えますが、ここに蝕のカードが絡んできます。蝕はこのゲーム唯一の特殊効果であり、蝕が場に出ると場札と同色のカードは最大勢力の候補から除外されます。一方で蝕のカードはランクが低く、場札以外の色のカードが出ればその勢力には大抵負けます。
したがってこのゲームは大雑把に言えば、場札と同じ色<蝕<場札と異なる色<場札と同じ色、のじゃんけんになっています。
ここで再びドラフトが効いてきます。蝕はじゃんけんの手のようにランダムに出てくるわけではありません。手札になるカードは90枚中40枚なので世の中にある色は偏ります。蝕が無力化するのは場札と同色のカードだけなので、蝕が出やすいのはみんなの手札に余っている色が場札に来たときです。また、蝕は90枚中3枚しかないので、ドラフト時に観測できていなければそもそもの存在も怪しいです。それらを踏まえてどう動くか、という話になるのですね。
同時出しのゲームなので、1.で書いた話も含めて突き詰めればどのラウンドもグリコじゃんけんになるのですが、実に考え事の多い変形グリコじゃんけんがごく少数のルールで実現されているのは驚くべきことでしょう。カードにあれこれ特殊効果をつければいくらでも複雑怪奇なじゃんけんを作ることは可能ですが、それでは読みようがないただの渾沌になりがちで、読みが打ち切られて終わりです。その点このゲームのじゃんけんは機構がシンプルで、かつ手の対称性が低いために、読めた「気になる」のが素敵です。


3.一手遅れて得点化

ラウンドで勝てず確保もされなかったカードは次のラウンドの勝者の取り分となります。一見平凡なルールですが、これは工夫の産物です。
このゲームでは各色でランクのレンジが異なり、青、白、黄の順にランクが上に寄っています。一方で各カードについている勝利点は黄が最も高く、以降白、青となっています。勢力で強さ比べをする以上、ランクが上に寄っている青のカードは勝利勢力になりやすいです。もしここでルールがトリックテイキングのように勝者がそのラウンドに出た他のカードを取る形式であれば、黄のカードは勝ちにくい割に高得点を献上してしまうので、かなり弱いカードになります。しかしそのカードが次のラウンドに回るのであれば、次のラウンドで勝てればよいのです。次のラウンドで回収できれば、前ラウンドで確保したのとなんら変わりません。
そうはいってもラウンドで勝てないと話にならないので、中途半端なランクの黄のカードはドラフトで売れ残りがちになるのですが、だからと言って食われて終わりの捨て札でないのが見事な一工夫だと思います。


こんな人にお勧め


このゲームをバッティングゲームに含めてよいかは怪しいですが、相手が何を出してくるかの予想を踏まえた同時出しの構造は共通しているので、バッティングゲームが好きな人にはお勧めできます。
1ゲームプレイしただけではいまいちよく分からないまま終わる可能性がありますので、ドラフトがメインパートに与える影響が感じられるまで、できれば5~10ゲーム連戦してみるとよいかと思います。
また、これはプレイヤーへの要請ではないですが、このゲームは「各ゲームトップのみに価値があり、他は等しく敗者である」の考え方でなく「何度もゲームを繰り返して累計点が高い人ほど優れている」の考え方(麻雀などでよくある考え方ですね)でプレイすることをお勧めします。このゲームには得点を増やすための技はいろいろききますが、トップを取るための行動はあまりなく、特定のプレイヤーに厳しい動きなどもできないので、トップ至上の姿勢とは相性が悪いと思います。

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