好きなゲームを語る(6日目 28355!)

基本データ


※「つばさごーごー!」と読みます。
作者: yas
適正プレイ人数: 3人ないし4人(2人用ルールも面白いが、立ち位置は拡張)
プレイ時間:約15分
※アイドルマスターシャイニーカラーズの二次創作ゲームです。


ゲームの概要


アイドルのプロデューサーとなって輝き溢れるアイドル達を生み出し、オーディションを勝ち抜くゲームです。とはいってもアイドル育成系の要素はなく、プレイヤーにできるのはアイドルの組み合わせによる「編成」をカードドラフトによって作ることだけです。
ドラフトによって獲得したカードを順に並べて列を作り、その列1つが1人のアイドルとなります(1列の中で1枚だけ表を向ける)。そのアイドルの能力はその列の構成によって決まり、相性の良い組み合わせで構成するほど強いアイドルが誕生します。この列は1列に2枚以上5枚以下の制約のもとで自由に改行することができるため、場合によっては今作っている列に見切りをつけて新たな列を作り始める判断も必要になります。
カードドラフトを一通り(5枚ドラフト×3回)終えたらオーディションとなり、ボーカル、ダンス、ビジュアルの各要素について、最も強いアイドルを擁立したプレイヤーに勝利点が入ります。また、ドラフト時に表向きにしたアイドルが特定の組み合わせ(ユニット)になっている場合にも勝利点が入り、これらの勝利点合計の多寡で勝敗を決定します。

二次創作のゲームは原作要素に引っ張られてゲームとしての面白さが犠牲になることや、ネームバリューやガワ頼みで内容が疎かだったり既存ゲームの模写だったりということも多くあるものです。しかしこのゲームについては全くその感はなくきっちりゲームとして成立しているばかりか、非常に高い完成度を誇っています。二次創作ゲームを正直ナメていた私がそれを見直すことになったゲームでもあります。

このゲームの特長


1.保留が許されない選択の連続

このゲームは勝利点形式で勝敗を決定しますが、勝利点を獲得する手段はオーディションに勝つか、表を向けたカードでユニットを揃えるかの2通りしかありません。
他の細かい加点はなく、オーディションは1位のみ加点で2位以下は0点、ユニット点も規定人数揃って初めて加点のオールオアナッシングに近い形式なので、甘いプレイングをすると0点で終わることもあり得ます。
このシステムがゲームを非常に鋭敏なものにします。「とりあえず2点取って、巡りが良ければ追加得点もあるだろう」のような丸い考え方は通用しません(補足:拡張ではちょっと可能になりました)。ユニット点を取りに行くのか捨ててオーディションに賭けるのか、今作っている列を育てるのか見切るのかなど、常に中庸の存在しない選択を要求され、その結果も点数が取れたか取れなかったかの二つに一つです。アイドルの世界は厳しいですね。
この得点方式は、勝利点の増加ペースを競うタイプのゲームとは根本的に異なるプレイ感をもたらします。期待値的に強そうな動きではなく勝てる確率が最大になる動きが求められる、シビアな判断が楽しいゲームとなっています。

2.カットが有力となるドラフト

ゲームにおけるドラフトには大きく分けて、
1) カードの引き運を均す。
2) 場にあるカードの偏りや特徴的なカードの存在を知り、のちの行動に生かす。
3) 隣の人に対してカットによる干渉要素を生む。
の3つの効用があるかと思われますが、このゲームにおいてはこの効用が全て発揮されており、ドラフトの持ち味をフルに活かしていると言えます。
この中で1)はスキルカードの引き運による差を小さくする点に、2)は他のプレイヤーの編成を推察してその後のピックやオーディション判断に生かす動きにきいていますが、このくらいは他のドラフトゲームとて持っているもの。このゲームを他のドラフトゲームと区別する点は3)にあると言えるでしょう。
ドラフトゲームではたまにカットの重要性が語られますが、実際にはカットすべき局面はそれほど多くないものです。下家のプレイヤーだけ妨害しても、足を止めた分他のプレイヤーに負けるならカットする意味は薄いのです。したがって、カットによる影響が自分の利得の変化量に対して著しい場合か、下家とのマッチレースになっているなど下家を選択的に抑えることに意味がある状況でしかカットは有力でありません。
ところがこのゲームでは、回ってきた手札からどれをとっても自分の利益がほぼ同じとなる(大抵は、どれをとってもほとんど利益にならない)局面がよく発生します。こうなると途端にカットは有力になります。下家の-2点より自分の1点といえど、自分がどうせ0点なら下家の2点を止めるのが当然の動きです。また、カットによる影響も大きく、特にカットによって下家のユニット点を阻止できれば強烈なダメージとなります。
カットの動機も影響も大きいのがこのゲームのドラフトの特徴であり、それによるインタラクションが面白さの一端を担っていると言えるでしょう。


3.縦と横のバランス

アイドルの能力決定の方式上、1列に多くのカードを並べるほど強いアイドルが生まれます。1列に並べられる上限枚数は5枚で、オーディションに勝てるアイドルを作ろうと思えば大抵4枚は並べる必要があります。
一方で、ユニット点を取ろうと思った場合は少なくともその人数分だけは列を作らねばなりません。場に配置するカードが15枚と決まっている以上、必然的に一列あたりに割ける枚数が少なくなります。
ここのバランスがほどよく、横に並べてオーディション優先で組むか、捨て列を作ってユニット点を取りに行くか、どちらが一概に強いと言えない形になっています。
最初の5枚ドラフトだけ見ても、スキルカードの巡りが良く強いアイドルが生まれそうならオーディション優先で一列に並べる、逆にオーディションでの出力に乏しそうなら縦に並べてユニット点の下地を作りオーディションは次以降のラウンドで強いアイドルが誕生することに賭ける、といった具合に、状況に応じて動きを変えることになります。
一通りの戦略では勝率が伸びず、手札や周囲の動きに応じて最善の対応を探す楽しさが絶えずあります。


4.可愛い

かわいい!

こんな人にお勧め

インタラクションの強いゲームが好きな人にはお勧めできます。特に、ドラフトゲームを経験していて、普通のドラフトゲームではインタラクションが足りないと感じる人には強く勧められます。自分の場と下家の場、場合によってはさらに隣まで見ることで初めて見えてくるものがあるので、それなりにゲーム慣れは必要です。ゲーム初心者を可愛さで釣るなら別のゲームを用いるべきでしょう。
また、最初数回のプレイでは核心に至ることなく「結局スキルカードを多くとった人の勝ちでは?」となる可能性があると思うので、5~10ゲームほど連戦する環境を用意して、思い込みに囚われずいろいろな立ち回りを試してみてほしいところです。最初数回の頃の定石がだんだんと覆されていく感覚を味わってください。

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