バトルシップ手筋集第1部

この記事はペンシルパズルアドベントカレンダー2023の12月20日の記事です。
バトルシップは手筋が潤沢なパズルなので、アドベントカレンダーの記事だというのにまさかの3部構成です。
このページに載せるのは第1部の初級編となります。
この部は「ペンシルパズルを解いた経験はあるがバトルシップは初めて。手筋を一から知りたい。」くらいの人を対象にしています。わざわざこんな記事を読みに来る人にそのレベルの需要があるのかという話は気にしないことにします。
バトルシップに興味のある素敵なパズラーの方々は第2部以降も読んでくれると喜びます(多分年内に出ます)。


バトルシップのルール

例題

ルール

1.リストの艦を全て盤面に配置します。艦は縦か横に配置します。
2.盤面に与えられたヒントは全て艦の一部として用います。波のマスには艦は入りません。
3.数字はその列に入る艦影のマス数を表します。
4.異なる艦が入るマス同士は縦横斜めに接しません。

例題答

バトルシップは対戦ゲームである海戦ゲームを由来とするパズルです。もともとの海戦ゲームには艦の接触禁止ルールはありませんが、艦同士が近接していると衝突の危険があると考えればモチーフにあったルールといえるでしょう。


手筋の紹介に入る前に

艦のリストについて

以降では特に断りがない場合、配置する艦のセットは4マス艦×1、3マス艦×2、2マス艦×3、1マス艦×4のセットであるとします。例題のリストを一回り大きくしたようなリストですね。このように、最大の艦から順に1隻ずつ増えていくリストはバトルシップのリストの中で最もメジャーなものであり、Standard fleetと呼ばれます。
この手筋集の中の数字にはこのリストに基づいているものもあります(艦の総マス数が20など)。その場合、リストが変われば当然に対応する数字も変える必要があります。しかし手筋自体が使えなくなることはほとんどなく、艦が真っ直ぐでありさえすれば通用する手筋ばかりです。


列やマスの表記

列を表す表記として上からn段目の列をRn、左からn列目の列をCnのように書き、それらを組み合わせてRmCnという形でマスを表記します。例として、R5C7と書いたら上から5段目左から7列目のマスを指します。
パズル界隈では割と使われている表記なので覚えておくと他の記事などを読むときにも役に立つかもしれません。


盤面上の表記

艦が入らないと決まったマスには×をつけています。また、艦が入ると分かったが形まで決まらないマスには■記号をつけています。
手筋を紹介するに際して注目してほしいマスは赤マスにしてハイライトしています。


初級手筋

艦影周りの×

バトルシップでは、異なる艦が縦横斜めに接することはありません。
したがって、艦影が入るマス同士は斜めに隣接しません。
艦影が入るマスが分かったら周囲斜め4マスに×をつけておきましょう。これはバトルシップを解く中で何度も行う動きですので、艦影を書いたら周囲に×を置くのはバトルシップを解くうえで最初に身に着けるべき癖といえるでしょう。

また、ヒントとして表出している艦影は形まで分かっているため、斜め4マスと言わずもう少し×が付きます。それぞれの形に対し、以下の図のように×が打てます。

これはバトルシップを解き始めて最初に使う手筋であり、かつ形が完全に決まっているので形を覚えてしまったほうがよいでしょう。

ヒント数字の達成

列中に存在する艦影の数がその列のヒントと一致した場合残りのマスに×をつけることができます。

例:艦影ヒントから、R6には既に2マスの艦影の存在が確定しています。残りのマスに×をつけましょう。

一応初級手筋として書きましたが、さすがにこれについて語ることはありません。さっさと次に行きましょう。


大きい数字

バトルシップにおいては0以外の小さい数字が単体で大きな制約になることは少ないです。まずは大きい数字に着目するのがよいでしょう。(小さい数字も束になると大域手筋を生むことがありますが、それは後ほど。)

まずは最も極端な場合から始めましょう。
列中の艦を置けるマスの数がその列のヒントと一致した場合それらのマスに艦を置くことができます。

例1:緑の列は残り6マスで、ヒント数字が6なので空いている全てのマスに艦影が入ります。
…これはさすがに当たり前だろうと言われるところでしょうかね。

艦を置けるマスの数がその列のヒントより1だけ大きい場合にも、部分的な情報が得られる場合があります。


例2: 緑の列は残り6マスで、ヒント数字が5です。空いている6マスのいずれか1マスだけ艦が入らないマスがあることになりますが、5マスの艦はないので両端のマスが×だとまずいことになります。したがって艦影が2マス確定します。

また、艦影が決定しなくても、×のマスが確定する可能性があります。

例3: C5は残り6マスで、ヒント数字が5です。先の例のように艦影が確定するマスはありません。ここでは赤く塗ったマスに注目してみましょう。もしR2C4に艦影が入ったとするとその斜め4マスは×になるので、C5の空きマスが足りなくなってしまいます。したがってR2C4は×です。同様に他の赤マスも×になります。

例4:先ほどの例に、R3のヒント数字が加わった形です。赤マスに注目しましょう。R3C4に艦影が入ったとするとその斜め隣のR2C5が×に、また数字ヒントからR3C5も×となり、C5の空きマスが足りなくなります

このような×のつけ方はよく現れますし、「余裕が少ない列があるとその隣の列に制約が及ぶ」という感覚はのちの上級手筋を理解する際に助けとなります。

最後に一つ、特殊な例を見ておきましょう。

艦の真ん中を表す艦影ヒントが与えられている盤面です。もしこの艦影ヒントが縦向きの艦の一部だった場合、C5に計5つの×がついてしまい、空きマスが足りなくなります。

艦の真ん中を表す艦影ヒントはその艦が縦であるか横であるかによって周囲の列に与える影響が大きく変わることが多いため、この例に限らず「もしこれが縦だったら?横だったら?」と考えてみると話が進展することはよくあります。


大きい艦の限定

主に中盤以降盤面に×が多く入ってきたときや小さいヒント数字が多いときなど、大きい艦が入れる場所が限定されることがあります。
もし4マス艦が入る場所が1箇所しかなければ、4マス艦の位置が確定します。完全には確定しなくても、候補が絞れれば情報が得られる場合があります。

4マス艦が入れるのは中央のスペースだけです。R6はヒント数字から4マス艦が入れないので、R5に入ることになります。場所は完全には確定しませんが、どこに入るにしても真ん中の2マスには必ず艦影が入ることになります。

例:4マス艦が入れるのはR5とR6だけです。
どちらに入るにしてもC7の列に艦影がかかりますから、C7の数字ヒントから残りのマスに×が付きます。


艦の品切れ

バトルシップでは使う艦のリストが与えられているので、「品切れ」が発生することがあります。

例1:既に3マス艦が2つ配置されています。R4C10の艦影ヒントはそこだけ見ると2マスか3マスか分かりませんが、3マス艦が品切れになったことで2マス艦と確定します。

例2:C6は残り7マスでヒント数字が6です。配置を考えると2マス+4マスか3マス+3マスの2通りですが、4マス艦が既に使われているので3マス+3マスの配置しかありません。

例3:盤上に既に4マス艦と3マス艦が入り、残る1隻の3マス艦も右下で使われることが確定しています。これで3マス以上の艦は品切れなのでR5C4の艦影は2マス艦に決定します。

リストを利用して可能性を狭める手筋があることで、バトルシップは単に数字に合うように盤面を黒く塗るだけのパズルから飛び立っています。
同時に、これはパズル自体始めたての初心者に厳しい点でもあります。「全体でこれだけの艦が使われる」という情報の利用は大域手筋の入り口といえるもので、パズル自体に不慣れで局所的な視点しか持てていない人には優しくない手筋です。パズル初めて勢にパズルを布教するときは別のパズルを勧めましょう。

リストの利用にはもう少し難しいパターンもありますが、それは中級手筋の部に持っていくことにします。


第1部締め

この部で紹介した手筋は比較的易しいものなので、これらを用いるだけで解ける問題は初級問題の域といえるでしょう。
最終盤、あと3、4隻ほどの艦を配置する局面まで来たら勘で置いてしまうことも多いパズルなので、その段階までこれらの手筋で進めさせれば最後の一歩は難しくても初級問題の域に収まると思います。

ただ、ごく個人的な意見として…これらの手筋だけで問題を作ってしまうのはもったいないと感じるところでもあります。バトルシップにはリストの性質を使った華々しい手筋がたくさんあり、それらを織り込んでこそ輝くと私は思っているのです。
その数々の手筋たちについては、第2部以降で紹介することにしましょう。

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