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朝焼けにいっぱいのモーニング・ティーを

 午前4時。アラームで目を覚ます。軽く顔を洗い、紅茶を入れる。草木も目を覚ます前の静かな一時。仕事前の憂鬱な朝を乗り越えるための素晴らしきメソッド。一杯だけの紅茶。この瞬間だけは面倒なことは考えない。仕事も、人間関係も、今日を、明日を、そして昔のことを。

 だがこんな時間も明日で最後だ。明日になれば…いや明日のことを考えるのはルール違反だ。本でも読もうか。この本を読み返すのはもう5回目か…新刊が二度と出ないって考えるとちょっと悲しくなる。”向こう”でも、本を書いているのかな?

 外は美しい朝焼け。だけど最近は完璧とは言えない…ふと時計を見る。気が付けば午前6時30分、我ながら一杯だけの紅茶でよく持たせたものだ。朝食を食べ、出社する。

 

 午前4時。アラームで目を覚ます。軽く顔を洗い、紅茶を入れる。今日が最後の日。せいせいしたような、寂しさに襲われるような奇妙な時間。

 本を読む…外を見る…あぁ駄目だ、集中できない。今日だけは…今日だけは、最後に振り返ろう。窓を開けベランダに立つ。

 空は大半が岩に覆われ、まだ暗い本当の空はほとんど見えない。落ちてくる空。誰もが宇宙へと飛び立った。誰かが残らなければならなかった。

 思いを巡らせるうちに、だんだんと、空全体が赤く染まってくる。それはまさしく、長い間待ちわびていた、完璧な朝焼けの空だった。こんなに美しく素晴らしい日なんだ。今日くらいは、美しい朝焼けを観ながら、満足するまでいっぱい紅茶を飲むとしようか。

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