右から来る雨

 雨雲はいつも西からやって来る。そして東へと去っていくその道すがら、消えて無くなる。

 雨が降るよと予報があれば、雨雲レーダーのページを開いてみる。画面上、左から、雨雲を表す薄い青色のドットはピコピコと(イメージです)広がって、その色を濃くしながら画面を侵食して、しばらくすると自分がいる地の頭上から、本物の雨が降ってくる。

 ドットは薄い青から濃い青、緑、黄、橙色から真っ赤に変わる色で、雨の強さを表している。そのドットを地図上に被せて動かすことで、6時間後の雨雲の行方まで見せてくれるという仕組み。
 その動きの予想はかなり正確で、小さな雨雲が30分後にやって来てすぐ去るという予想なら、実際ほぼ確実に30分後に雨は降りすぐに止む。
 スーパーに買い物に行こうと思っていたけれど、何十分後かに雨が降り出すようだから、やっぱり明日にしておこうとか、近々の緊急でない予定を実行するか繰り延べるか、雨に降られず行動するためにはとても役立つ。
 雨が降るのは止められないけど、待ち構え、あるいは逃げることはできる。

 ところで、雨雲はいつも画面の左側から登場する。自分が住んでいる地点の西側には山並みがあり、その下には大きな川が流れており、そちらの方から雨は来る。常ならば。
 昨日の夜、青いドットは右側から左側へと動いていた。ものすごい違和感があった。
 いつもとは違う方向から現れ、高速で動くドットは、異常事態を告げている。風が強くなってきていた。

 台風7号が西日本を席巻しているいま現在、自分がいる地域の地図は濃い青や緑に塗られている。窓の外では間断なく雨が降り、不思議と東の空は少し明るい。そして画面上、左下側には赤い塊がやって来ている。
 いろんな色が混ざったドットは、右から左へ少しずつ移動しながら、渦を描いて上へと抜けていく。強く風が吹いていて空は一面に雲だけれど、2時間もすれば雨は通り過ぎていくようだ。
 明日は晴れるだろう。

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