見出し画像

木村草太さん「合意型共同親権で見落とされがちなこと」(4月22日 田村淳のNewsCLUB)

4月22日、文化放送の「田村淳のNewsCLUB」で、共同親権問題が取り上げられました。
憲法学者の木村草太さんが「今週の気になるニュース」で、「合意型共同親権で見落とされがちなこと」と題して解説。「両親が仲のよいタイプか、悪いタイプか」が戸籍に書かれてしまう「スティグマ」の問題を指摘しました。
また、弁護士の島田さくらさんからは、「共同親権って何かをするのを片方が止められるっていう制度なので、仲良くやってハッピーみたいな制度じゃないんですよね」と、共同親権制度の本質に触れる発言もありました。

YouTubeでも配信中 -10分で見れる!

ざっくりまとめ

「共同親権導入へ」という報道の誤解
・「合意型」の議論が始まるだけで、「非合意型」の議論は先送り。

「合意型」で見落とされている「スティグマ」の問題
・「両親が仲のよいタイプか、悪いタイプか」が戸籍に書かれてしまう。

「合意型」は、需要がない割に、弊害や影響が大きい
・すでに協力しているカップルにとっては意味がないので需要がない。
・一方、早く離婚したくてしぶしぶ合意、DVがある場合に無理やり合意、などの懸念がある。
・学校や病院は落ち度がないように、共同親権者の合意を確認するとなると影響が大きい。
・引越し業者も、「不法に子どもを連れていくのを手伝った」と訴えられかねない。
・日本社会で禁止されていた「重婚」のような状態になりかねない。

離婚後共同親権の本質は、一方の拒否権
・共同親権は、「仲よくやってハッピー」という制度ではなく、「片方が止められる制度」。

国会で「非合意型」がねじ込まれる恐れ
・フランスでは、合意型の法案だったが、議会で条文をいじって非合意型も含めるようにした結果、DVの見落としが指摘されている。

Radikoで聴き逃し配信中

聴き逃した方は、Radikoの「タイムフリー」機能で、番組から一週間以内の間、視聴することができます。
※共同親権については、31分~41分の部分です。

番組の文字起こし

(田村淳さん)
ここで木村草太さんに、さらに気になるニュースを伺います。お願いします。

(木村草太さん)
「合意型共同親権で見落とされがちなこと」。

先ほどニュースで読まれたと思いますけど、法制審議会という法務省の審議会の方で、共同親権について、離婚した後の親権を両親で持ち合う制度について議論をされています。
今、共同親権導入議論っていうことばかり強調されているんですが、丁寧に見ていく必要があって、共同親権っていうのは、子どもの住む場所や進学先、財産管理などを決定する権利なんですけれども、現在、婚姻中はお父さんとお母さんが二人で行使しているものを離婚した場合には、基本的には子どもと一緒に住む側が親権を持つとしていたわけですが、これを離婚後も共同親権にできるようにしようという議論が始まっています。
今回の4月の審議会では、二人がお父さんとお母さんが離婚後も一緒にやろうねと共同して合意をするタイプと、合意ができないんだけど無理やり共同親権にするっていうタイプ、これまでごっちゃにしてきたんだけれども、合意型と非合意型は分けて議論しなきゃいけないよねと法務省審議会でもなりまして。
で、合意できない場合っていうのは、DVや虐待の継続の懸念や、お父さんとお母さんがすごく仲が悪いので適切に意思が決定できない危険っていうのがあって、いろいろ懸念があるので棚上げにしておきましょうと。とりあえず一緒に合意した場合については導入できるんじゃないかということで、制度の内容を詰めてみましょうかっていうような議論をしよう、っていうことが決定されたというのが現状です。
なので、「共同親権導入へ」って聞いた時と、だいぶその議論の中身、違っているんですね。

(田村淳さん)
僕は共同親権が進んじゃうんだと思ってたんですけど、懸念してた非合意型のことはまだ先に送るってことですね。

(木村草太さん)
先送り。そこは分けて議論しないと危ないってことが分かったってことで、この方向、自体は正しいと思います。

(田村淳さん)
だって、合意型であれば、お互いに関係性は維持できてる二人ってことですよね?

(木村草太さん)
そういうことなんでスッキリするんですが、じゃあそこで見落とされていることがないかっていうのが、今日お話したいことで。

まず合意型については、そもそも仲がいい元夫婦ってことになるので、すでに協力していて、特に共同親権じゃなくて問題がないわけですね。学校の進学先の時に、お母さんのサインだけあればいい、お父さんのサインだけやればいいと。でも、実態としては二人で話し合って、「今度こういう高校に行くんだけど」「それはいいね」「じゃあ、そこにしよう」って決めてるわけですから。サインする時に最後に、一人で書くか、二人で書くかだけの違いで、すでに協力してるカップルにとっては、あまり意味がないルートですね。一方、実は、この合意型については海外でも議論をする時に、例えば、早く離婚したくて、本来は別々にしといた方がいいのに、しぶしぶ合意しちゃう場合とか、DVがある場合に無理やり同意させられるっていうようなことがあるんじゃないかっていうことで…

(田村淳さん)
あぁ、なるほどね。

(木村草太さん)
真摯な合意をどうやって確認するのかっていうところがポイントだと。なので、じゃあ裁判所が入って確認しようかとか、それで充分かっていうような議論が、審議会で進められていくということなんですね。これ自体は確かに重要なことなんで議論してほしいです。

ただ、こうした問題とは別に合意型を導入されたときに、私が気をつけてほしいのがスティグマの問題。スティグマっていうのは、周りからかわいそうな子って目線で見られちゃうかもしれないって問題なんですが、お父さんとお母さんが仲いい時は離婚後も共同親権だよと。で、それは共同親権って戸籍にそれが書かれるってことになるんですが、戸籍に書かれるっていうのは、合意型が導入されると、離婚後の父母が仲がいいのか悪いのか戸籍で表示されちゃうってこと。
なので、子ども自身、あるいは学校の先生やお医者さんなど、親権行使に関わる場面の人たちが、「この子のお父さん、(僕のお父さん・お母さんは)仲が悪いタイプなんだ、仲がいいタイプなんだ」ってこと自体、人にわかっちゃうってことになってしまって、それが表示されるのが本当にいいことなのかっていうのは、あまり議論されてないので、ぜひ考えてほしいなあっていうことなんですよね。

(田村淳さん)
どうですか? 島田さん、合意型の場合、それが分かっちゃう…

(島田さくらさん)
戸籍って、でも正直、今、見ないじゃないですか。戸籍にこだわり強い人は記載がどうこう言うけど、じゃあ、あなたは免許取る時と結婚するとき以外、見たことあるんですか?って言ったら見たことないですっていう人も多いので。ただ、合意型っていうのを採用すると、結局、病院なり学校なり、「親権者のサインを取ってくださいね」って言った側は、本当に両親が共同親権を行使しているのか、片方にしか親権ないのかっていう時に戸籍を確認する機会が出てくるってことが目に触れる機会が増えるんじゃないかなと。

(木村草太さん)
増えるでしょうね。だって、これまでは一緒に住んでる人が親権者って前提だったんで、子どもに紙渡してサインしてもらえばよかったんですけど…

(田村淳さん)
チェックする項目が増えるんですよね。

(木村草太さん)
だから、うちは離婚してるけど、共同親権なんで、これからは別々に住んでる私のところにも書類をくださいみたいなことを学校が言われたときに対応しなきゃいけなくなる。

(田村淳さん)
学校側も、病院側も、じゃあ落ち度がないようにってことになる。

(木村草太さん)
そうすると、一人だけじゃなくて子どもみんなに確認しなきゃいけなくなるので、結構、合意型も社会への影響大きいんですよ。

(島田さくらさん)
それをやってまで、議論はした方がもちろんいいと思うんですけど、そもそも私は必要性がないと思ってるので…

(田村淳さん)
僕も共同親権じゃなくていいんじゃないかって。他の権利の主張の仕方があるって、木村先生も言っていて…

(木村草太さん)
会う、会わないは、また別に面会交流っていう手続きをやればいいのであって、何か決めるときに、子の住む場所とか進学先とかを決めるときにどうなのかっていうことですし、例えば、共同親権だったら「勝手に引っ越した」とかって言われて、引越し業者さんが「不法に子どもを連れて行くのを手伝いましたね」みたいなこと言われちゃうかもしれないんで、引っ越し業者さんも…

(田村淳さん)
運ぶに運べないですね。

(木村草太さん)
共同親権者の引っ越しへの合意書をちゃんと取ってくださいねみたいなことになったりするんですよね。
仲のいい夫婦はそんなことはすでに協力してるので、あえてそこまでコストをかけてやるべきなのかっていうのが、今度、合意型については、ちゃんとやれば危険はないかもしれないけど、需要がないってまた別の問題があるんです。

(田村淳さん)
もともとできてるのに共同親権にする意味あるかなあって話になるかもしれない。話し合えるような仲だから。こっちはこっちで問題だし、今その棚上げされている非合意型も非合意型で、問題いっぱいあるわけですよね。

(木村草太さん)
そうなんですよね。そこまできちんと法制審の皆さんが議論してくれているのかなというところが、ちょっと今の報道だと気になるところですよね。

(島田さくらさん)
私がもし夫との間に子どもが出来て、夫が「子ども連れて出て行きたい」「離婚したい」と言ってきたとしたら、かなり高確率で、「じゃあ共同親権にしてくれるんだったらいいけどね」とか、「単独でも親権くれるんだったらいいけどね」っていうのを切り札にして。で、離婚後も「進学? そこまでお金かける必要なくない?」「本当にそこ行く?」「留学する?」「本当にそこまでやる必要ある?」「こっちも新しく再婚してお金かけたくないし、そこ、厳しいなあ」とか。嫌がらせっていうことじゃなくても、例えば私が仕事人間になって、もう前の夫と子どものこととか見なくなった時に、「サインか、後で」と置いとくと、それはそれでまた進まないですよね。共同親権って何かをするのを片方が止められるっていう制度なので、仲良くやってハッピーみたいな制度じゃないんですよね。

(田村淳さん)
だからブレーキってことですよね。

(木村草太さん)
確かにおっしゃる通り

(砂山圭大郎さん)
もとの夫婦関係の力関係がちょっと残る場合もあるんじゃないかなって…

(木村草太さん)
だから最初から見なきゃいけないってことになって、もう離婚全部、裁判所が見るみたいな、になりますね。

(田村淳さん)
こんなたくさん数がある離婚を裁判所が見るっていうのは、ちょっと現実的じゃない。

(木村草太さん)
島田さんおっしゃったように重婚みたいになっちゃうってのもあるんですね。これまでも離婚した場合は、子どもを育てる側ってことだったんですが、共同親権ができるようになると、たくさんの女性と子どもをたくさんつくって、全部に共同親権持ってます、みたいになると、なんか重婚っぽくないですか?って話もあるんですよ。

(田村淳さん)
仮に4回、離婚したとしたら、それぞれに親権があって行使できるわけですよね。その自分が親権を。

(木村草太さん)
それはちょっと、我々、日本社会で重婚は禁止されてきたのは何だったんだみたいな話にもなりかねないっていうところもあるんですね。なので、考えたら、結構、合意型だからいいでしょって、単純な問題でも…

(田村淳さん)
なさそうですね。今までのシステムがうまく円滑に行かなくなることもあるし。共同親権の合意型が進んだら、当然、非合意型の話も進まざるを得ないですよね。

(木村草太さん)
結構、危ないところがあって、フランスでは最初合意型だけで法案をかけたんですよ。で、ギリギリのところで議会で合意型の条文をちょこっといじって、非合意型も含めれるようにしちゃったんですよ。それで非合意型にも広がっていったっていうところがあって、「フランスはDVに見落としてない?」みたいなことを、専門の機関から指摘されてたりするので、合意型で法案かけたときに、立法府でころっとその条文ちょこっと書き換えるみたいなことも、心配した方がいいですね。

(田村淳さん)
なるほどね。

(砂山圭大郎さん)
妥協案みたいな形で、ちょこっと入れちゃうのが、大きな穴になってしまう…

(木村草太さん)
ぜひ、ここも注意していきたい思います。

(田村淳さん)
議論に議論を重ねていただきたいと思います。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


よろしければサポートお願いします。 共同親権問題について、情報収集・発信の活動費として活用させていただきます。