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養育費おざなり 共同親権ゴリ押し  ―どうなってるの?法制審

2021年2月、上川陽子法務大臣(当時)が、父母の離婚に伴う子の養育のあり方に関する法制度の見直しを法制審議会に諮問しました。このとき各紙は「養育費不払い解消」を諮問と報じています。
ところが、諮問から間もなく2年。法制審の要綱案(案)では、離婚後共同親権を導入を押し通す一方で、養育費問題の対策はおざなりで「不払い解消」とは程遠い状況にあるのです。



2021年、「養育費不払い解消策」を法制審へ諮問

2021年当時、各紙は「養育費不払い解消」を諮問と、養育費を主な論点として報じていました。
一方、離婚後共同親権は論点の一つに過ぎず、法務省の担当者は「丁寧な議論が必要だ」と述べています。

養育費不払い解消策を法制審に諮問 「共同親権」も議論へ
(2021年2月10日 毎日新聞)
約140万とされるひとり親世帯の半数が貧困状態にあり、離婚後の養育費不払いがその要因の一つとなっている実態を踏まえ、養育費不払い解消に向けた方策が主な論点となる。

養育費不払い解消を諮問へ 法制審、共同親権も議論
(2021年1月15日 日経新聞)
離婚後も父母双方が親権を持つ「共同親権」制度もテーマの一つに。ただ、父母が対立する場合には子が不安定な立場に置かれるとする懸念もあり、法務省の担当者は「丁寧な議論が必要だ」としている。

養育めぐる課題解消へ 制度見直しを諮問 法相
(2021年2月10日 NHK)
養育費の不払いや、離れて暮らす親子が定期的に会う「面会交流」が実施されない問題など、親が離婚したあとの子どもの養育をめぐる課題の解消に向けて、上川法務大臣は、法制審議会に対し、関連する制度の見直しを諮問しました。

養育費不払い解消策、諮問 法制審議会
(2021年2月11日 中日新聞)
養育費不払いの解消策をはじめ、親と子の面会交流、共同親権の是非、財産分与の在り方といった離婚後の課題を網羅的に検討する。


2023年12月、要綱案(案)では養育費より共同親権

ところが諮問から約2年。要綱案(案)についての各紙の見出しには「養育費」の文字はなく、共同親権が主な論点に変わっています。
養育費については、記事の後ろのほうで「先取特権」付与と「法定養育費」設立に言及されています。

子供と別居している親が同居親に支払う養育費には、他の債権者などより優先して支払いを受けることができる「先取特権」を付与。双方で養育費の金額を合意できない場合でも最低限支払うべき金額を示す「法定養育費」を設定する。

2023年12月19日 産経新聞


専門家からは「実効性に乏しい」との評価

要綱案(案)は、養育費問題を解消するものとなっているのでしょうか?
専門家からは「実効性に乏しい」との評価も聞かれます。

養育費の履行確保の手段として「先取特権」が盛り込まれていますが、結局、申し立ては自身で行う必要があり、負担が大きく実効性は乏しいと指摘されています。
また、「法定養育費」は、低額であることが予想されます。「ないよりまし」とも言えますが、一方、正式な養育費を請求することがかえって躊躇されるのではないかとの懸念もあります

参考:家族法制の見直しに関する要綱案(案)


海外比較したのに、「公的立替払い」や「徴収制度」は見送り

法制審議会では、養育費に関する諸外国の制度についても調査審議されていました。しかし、養育費問題のカギとなる「公的立替払い」も「徴収制度」も、要綱案(案)に盛り込むことはありませんでした。

米国
・養育費局による支援(義務者の収入や所在調査,家庭裁判所への申立ての援助等)
・給与天引き制度

英国
・公的機関による情報提供,給与天引き制度
・公的機関による収監や運転免許の没収の申立て等

ドイツ
・立替払い制度
・少年局による支援(当事者間の合意形成,裁判手続における子の代理,強制執行の援助等)

フランス
・公的取立て制度
・家族給付支給機関による立替払い,取立ての援助,支払の仲介,合意に対する執行力の付与

オーストラリア
・公的機関による徴収サービス
・給与天引き制度

韓国
・一時緊急支援制度
・養育費履行管理院による支援(相談,訴訟支援等)

参考:法制審議会家族法制部会第5回会議(令和3年7月27日開催)
   参考資料5-1


「泣き寝入り」は解消されるのか?

朝日新聞は、12月26日、養育費について、シングルマザーの声を取り上げています。
「DVを受けた身。相手を追い込めば危害を加えられるという不安があり、泣き寝入りするしかない」との切実な状況は、要綱案(案)で解消されるのでしょうか?

途絶えた養育費 シングルマザー「泣き寝入りしか」 制度改正の課題(2023年12月26日 朝日新聞 伊藤和行)
養育費が支払われない場合、現行法でも家裁に強制執行を申し立てることはできる。だが、元夫の住所や財産を特定する必要があり、時間や費用もかかるため、女性は見送っている。
「DVを受けた身。相手を追い込めば危害を加えられるという不安があり、泣き寝入りするしかない」
女性の周囲でも、様々な事情で養育費を取り決めずに離婚した人や、強制執行をためらっている人がいる。「当事者同士での解決には限界がある。国には支払いを強制できるような仕組みを作ってほしい」と話した。


DV被害者が懸念する離婚後共同親権を導入する一方で、養育費問題はおざなりの要綱案(案)。

法制審議会は、「養育費不払い解消」という原点に立ち返るべきではないでしょうか?

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