(3)調査報告書5つの疑問、そして貴重な資料としての価値 【TBS報道特集が取り上げる「実子誘拐被害調査報告書」とは?】
TBS報道特集が、来週8月24日は「子供の連れ去り」と告知しています。
報道特集(JNN / TBSテレビ)
告知動画などによると、報道特集では、NPO法人「キミト」による「実子誘拐被害調査報告書」も取り上げるようです。
この記事では、あらためて「調査報告書」への疑問を提示するとともに、資料として貴重な価値があることを付言しておきます。
<これまでの記事>
調査報告書5つの疑問
1.サンプリング方法が示されていない
調査報告書には、調査対象「日本国内の同意なき子ども連れ去りをされた親」、調査方法「WEBアンケート」と記載されています。
しかし、この記載からは、どのような方法でリクルーティングし、どのような条件でスクリーニングしたのか、明らかではありません。
また、同一人物による複数回の回答を、どのように排除しているのかも明らかではありません。
2.「実子誘拐」の定義が明らかではない
本調査において、「子ども連れ去り」「実子誘拐」は重要な概念です。
しかし、調査報告書には用語の定義が示されておらず、また、調査票も掲載されていないため、その意味するところが明らかではありません。
なお、設問20によれば、本調査では「まだ出産前の胎児」も実子誘拐としてカウントされています。
3.回答形式が示されていない
本調査報告書では、単一回答・複数回答・自由記述などの回答形式が示されていません。
後述するように、複数回答の回答者数が示されておらず、また、単一回答の選択肢もMECEではないため、数表から回答形式を判別することも困難です。
4.複数回答の集計方法に疑問がある
通常、複数回答の集計では、割合(%)は「各選択肢の回答数÷全回答者数×100」で算出します。
しかし、本調査報告書では、選択肢の回答数を足し上げた合計を分母として算出しています。
一方で、不可欠な情報である各設問の回答者数が記載されていません。
さらに、表やグラフに選択肢「その他」が示されていないにもかかわらず、「その他の回答」の自由記述が記載されている設問があります。
5.単一回答の選択肢がMECEでない
単一回答の設問では、選択肢を「漏れなくダブりなく」設計することが必要です。しかし、本調査では、排他でない選択肢、不足している思われる選択肢が散見されます。(ただし、そもそも、どの設問が単一回答形式か示されていないので断定はできません)
他にも気になる点はありますが、ここまでにして割愛します。
なお、富山が四国に区分されているとの指摘を見かけましたが、事実ではありません。調査報告書では、富山は、北陸に区分されています。
※8月20日 補足訂正
数表では北陸に区分されていますが、グラフでは、四国と北陸に富山が記載されていました。
「実子誘拐被害者」が見ている世界を理解する貴重な資料
以上、調査方法や集計について疑問を提示してきましたが、私自身は、この「調査報告書」が価値のないものとは全く考えていません。
今回のアンケート呼びかけに応じた「実子誘拐被害者」は、子連れ別居やDVについてどのような意識を持っているのか? また、子連れ別居時の実態はどのようなものなのだったか?
「実子誘拐被害者」を自認する人たちの意識・実態を理解するにあたり、その一助となる貴重な価値ある資料と言えるのではないでしょうか。
さて、TBS報道特集は、この「調査報告書」をどのように取り上げるつもりなのか、TBSの対応が注目されます。
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