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第15話  アマビエ様の本音!?


清水港近く

予約した料理店、午後1時半にドリーン一行到着


奥座敷に通されると、遠くから見ても豪華なお膳が並んでいるのが解る。

アイク「うぁ~、美味しそうだね!こんなの暫く食べてないよ。お腹ペコペコだから早く食べたいよ~」

ドリーン「アマビエ様待ちよ。」


すると既に上座でゆったりと寛いでいるアマビエ様がいらした。

アイク「やった!お昼にありつけた!」

永遠の成長期!?食いしん坊のアイクである。

ドリーンはアマビエ様のもとに行く

「お待たせしましたか?御免なさい。」

アマビエ様「そんなに待ってないけれど、先に頂いちゃってるわよ~。久々の神女子達でお喋りしたらお腹空いちゃったのよ」

カメラGPS 付きサングラスは頭に置かれている。
玉二郎「どおりで天井しか写ってないわけだ~」

水揚げされたばかりの桜エビを頬張りながら
「これって海のルビーって言うんですってよ、最高ね」とご満悦。

ドリーンさんが、では私達も早速頂きましょうと声掛けをしてくれる。
お寿司や釜揚げうどん、海鮮丼、皆好きな品を黙々と食べる。

ドリーン「皆さん、良かったら地ビールもいかがですか?静岡産の深むし茶を使ったクラフトビール、地元ならではのフレーバーが特徴だそうですよ!」と勧める。

誰も反応しない。

アマビエ様はちょっと考えてから
「皆、仕事中で遠慮してるんでしょ?今夜の宴会用にお土産として沢山買ってもいいかしら、玉ちゃん」と聞く。

玉二郎「それは良いですね。皆さん喜ばれますよ。な、アイク一緒に運べるよな?」
玉二郎さんの横にべったり座るアイク
「勿論!僕も呑みたいから喜んで運びますよ~。お土産、美味しそうなのも有るよね~見に行こう!良いでしょ?ドリーンも行こう」と連れ出す。

アマビエ様が手元の御用ボタンを押すと、すぐに店員さんが来た。
「ねぇ、もずく酢美味しかったから、どんぶりでお代わりね。あと、かき揚げとお新香、クラフトビールビール一番人気のやつ、2本お願い」

待たずにオーダーが運ばれてくる。

(アマビエ様はすでに店の勝手を使って使いこなしている?)と、感心して見ていると
アマビエ様が手招きするのでドキドキして横に座る。


「貴女もいける口でしょ?ビール試飲しましょうよ。ラッパ飲みで良いわよね?はいどーぞ」と渡される。


アマビエ様「は~い乾杯!」

私「か、乾杯!」
(神様と乾杯?人生初だわ~)


アマビエ様「あら、美味しいじゃない、ねぇ」


私「はい、フルーティで飲みやすいですね」
(実は緊張して味なんて解らないのだが・・・)

アマビエ様「ねぇ、貴女とアイク、私のネズ達に遊ばれちゃったんだって?」
(そこか~思い出すと泣きそうになる・・・)


私「スミマセン!大切なペットだと言うことを忘れて私、本気で戦っちゃいました。結局、餌は玉二郎さんに上げて貰っちゃうという、本当にスミマセン」


アマビエ様が微妙な面持ちで、かき揚げを頬張り、ビールをゴクっと飲む。


アマビエ様「良いのよ。気にしなくて。誰が行っても大体皆そんな感じ。玉ちゃんは珍しくアイツラを手なづけられる人なの。」


私「はい、穏やかに餌を食べ始めました。」

アマビエ様はウンウンと頷いた後、しばらくして「ふーっ」と深いため息をついた。

アマビエ様「私もさ、何年も忙しく飛び回っていたから、あの子達をを他人に預けっぱなし。だから会うとお互いに牽制しあって戦いになるのよ。」

私「お忙しそう、、、ですものね。」(子供を預ける痛みは何となく解る)

アマビエ様「最近じゃ誰に対しても反抗的に爪を立てる。手がつけられなくてね~同じ部屋にも置いとけないから困ってんのよ」

私「そういうことなんですね~。」

アマビエ様「もう、考えるのも疲れちゃった。どうすれば良いんだろ」


(アマビエ様も長い間、育児?の悩みを抱かれているんだな・・・)

私「親は永遠に子供との関わりを考えさせられますよね?」

(我が家の場合は、既に親子逆転して息子の悩みのタネのようだが、、、)


アマビエ様「あの子達が生きている限り死ねないと思ってんのよ。」

私「ペットちゃん達の親御さんは、それが共通の悩みですね。でも、取り敢えず今はお腹いっぱいでゆったり過ごせてますから安心しましょうよ。」


アマビエ様「そうね、折角のお昼を楽しまなきゃね!」


私「そういえば疫病退散も、大変お疲れさまでした。どれだけ長く戦ってこられたんですか?」と伺う。

アマビエ様がモジモジしはじめ、耳元で囁く

「アンタだけに言うけど今回のコロナ、私戦ってないからね~」


飲みかけたビールを思わず置く。
私「えっ!!?戦ってない???」

アマビエ様「声でかいよ。何だろうね~もう戦いはさ、緑色の半纏着た奴らに任せておけば良いと思ってんのよ。」


私「?」

アマビエ様「私も年を重ねてね、解ったことがあるの。」
私「はい、伺いたいです。」

アマビエ様「悪霊退散とか疫病退散とかさ、今まで色々やってきたけどさ、戦っても敵は減るどころか増えんのよ。手を変え品を変え。」

私「そういうものなんですね?」

アマビエ様「ホントに疲れんのよ」グビグビ(喉仏が動く)

アマビエ様「もう引退して、ネズ達と海の底でやり直そうと思ったら、又、今回引っ張り出されてさ~どうしようかと思ったわよ。」

私「は~、中々家に戻れなかった訳ですね、、、それから?」

アマビエ様「日本中何処行っても選挙ポスターみたいにはられてね、どう?そういうの。嬉しいような、ヤメて、恥ずかしい~と思いながらも期待に答えなきゃってやっぱりなるでしょ。」

私「なったんですね?」

アマビエ様「だから、あちこちの神社とかで拝まれて、こっちも扉の内側に座って話を黙ってひたすら伺うわけよ。」

私「はい。」

アマビエ様「するとさ、人間様は、はぁ~アマビエに頼んだからやってくれるだろうと御札買ったり張ったりしてホッとする。少しは明るい気持ちになってくれる」

私「確かに。」

アマビエ様「安心すると神社の帰り道とかでお腹すいたの思い出してさ、近くの店に入り何か美味しいもの口にするでしょ?」

私「私なら口にしちゃいます。」

アマビエ様「でしょ?するとさ、自分だけって訳にもいかず、家族とか誰かにお土産でも買おうかなって気になるじゃない。誰かの安全、安心を祈ってさ。」

私「そんな気になります。普段よりも。特に今回は家族や友達の健康と安全を願いました。世界中の人達がそうでしたね?」

アマビエ様「それでいいのよ。誰かを思いやる気持ちが大事。その愛は無敵なの!免疫力も上がるのよ!」

私「確かに落ち込んでると、免疫力下がるって思います。」

アマビエ様「だから、疫病を封じ込めたのは私じゃないの!」

~グビグビ~

アマビエ様「最前線で頑張った研究者や医療チーム、そして一人ひとりの心がけと衛生マナーが勝利したのよ。」


私「それは、仰るとおり。でも、願いを聞き続けるって中々出来るものではないですよ、アマビエ様!」

~私もグビグビ~

アマビエ様「あ~、ありんさんだっけ?私の気持ち解ってよ!こんな私じゃなくて本当に頑張った人間様や亡くなられた方々を癒やして差し上げたいの。どうすりゃいい?」


アマビエ様の本音が聞けた気がした。


人様の願いや望みを優先して、ペット、家族、自分の事を何百年も後回しにしてきた忍耐力の賜物のような謙虚なアマビエ様だからこそ、先ず癒やすべきお方。


今回の依頼主である七福神様もそんな状況を全てお見通しだろうから、旅の企画をドリーンさんに依頼されたのだろうし。

私もスタッフの一人として、そして個人的にも自分の持てる力を最大限に発揮したい、癒やしのお手伝いがしたいという気持ちが溢れて出てくる。


売店でアマビエ様グッズを沢山見つけて見せに来るアイク
アイク「似てる?似てない?どっち~何、酔っ払ってるの?二人共タコみたいに真っ赤だよ~見て、玉二郎さん!」


玉二郎「たった2本でこれだけ酔えるんだ、安上がりだなぁ」ビールの段ボール箱を軽々と抱えてくる。


今夜の為に山程のお土産を買い込んで来たドリーン

「帰りは間違いなく飛べませんね~さ、皆さん、バスに乗ってもらいますよ~帰りましょう」と号令をかけ一同店をあとにする。

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