【展覧会レポート】ブランクーシ 本質を象る
アーティゾン美術館で行われているブランクーシの作品展は、まるで時間を超えて彫刻芸術の真髄に触れるような体験だった。以下に、展覧会での印象や所感をまとめた。
展覧会HP: https://www.artizon.museum/exhibition_sp/brancusi/
作品: https://www.artizon.museum/exhibition/download/145
会期: 2024 年 3月30日(土)-7月 7日(日)
ルーマニア出身の彫刻家、コンスタンティン・ブランクーシ(1876-1957)は、純粋なフォルムの探究を通じて、ロダン以後の20世紀彫刻の領野を切り拓いた存在として知られる。
接吻
白い彫刻が印象的な「接吻」。シンプルな形態ながらも、二人の顔が密接に寄り添う様子が巧みに表現されている。見る者に深い愛情と結びつきの力を感じさせる。彫刻でここまでの感情を表現するのは、ブランクーシの技術の高さを感じずにはいられない。
卵形の彫刻
金色に輝く卵形の彫刻は、そのシンプルな形状と滑らかな表面が一見簡単そうに見えるが、実際には非常に複雑な工程を経て作られていることがわかる。モデリングで再現するのも難しいほどの精巧さを持ち、彫刻ならなおさらだ。ブランクーシの作品に対するこだわりが感じられる。
展示空間と什器
この展覧会で特に印象的だったのは、大理石の什器もブランクーシの作品であることだ。什器自体が芸術作品であり、彫刻を引き立てる役割を果たしている。展示空間は白を基調にしており、ブランクーシの光沢ある金色の作品たちが一層映えるように工夫されている。また、ライティングが美しく、作品をより一層魅力的に見せていた。
展覧会の構成
意外だったのは、作品数が想像以上に少なかったこと。1枚のチケットで3フロア分の展示を見られるが、ブランクーシ展はわずか1フロアのみ(2フロアぐらいあるのかなと思っていた)。それも大半が写真で紹介されていた。しかしその分、ブランクーシ本人の人柄がわかる展示会だった。
鳥を象った彫刻
鳥を象った彫刻は、その美しさに見惚れてしまう。流線形のフォルムが力強さと優雅さを兼ね備え、まるで今にも飛び立ちそうな動きのある作品だ。ブランクーシの自然への愛情と理解が深く表れている。
キュレーションと全体の印象
この展覧会では、各作品にタイトルや説明などのキャプションが一切なく、とてもシンプルだった。これはキュレーターの意図やこだわりを強く感じさせるものだった。また、展示されていたブランクーシの白い愛犬がマスコットになっており、買おうか悩んだが、我慢してステッカーを購入した。
巨匠たちの作品も展示
ブランクーシ展の他にも、ピカソ、ブラック、カンディンスキー、ミロ、クレー、シニャック、ジャコメッティなどの巨匠たちの作品も展示されていた。これらの作品を見ることで、20世紀初頭の美術の潮流や、それぞれの芸術家の独自性を感じることができた。
総括
ブランクーシの展覧会は、シンプルな形態の中に込められた深い哲学と技術の結晶を見ることができる貴重な機会だった。作品一つ一つに宿る物語や感情が観る者の心に強く響き、その影響力は現代においても色あせることなく、彫刻芸術の未来を感じさせるものだった。また、巨匠たちの作品や清水多嘉示の特集も相まって、非常に充実した展示内容だった。
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