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8.砂漠のオアシスは蜃気楼。

 私は夫に「離婚したい」と言いました。夫も承諾してくれました。

 ところが・・・!数日後、夫が突然「離婚したくない」と言い出したのです。おそらく不倫相手の女の子に振られてしまったのでしょう。本当のことはわからないのですが、なんとなくそうだと思いました。

 あれですよね。砂漠のオアシスは蜃気楼だったんですね。

 それからというもの手のひらを返したように優しくなりました。


「たくさん苦労かけちゃったから、今日から家事は全部僕がやるからね。」

「子どもたちは僕がみてるから気分転換にどこか行ってきたら?」

 でもいくら優しくされても、私の心に空いた穴は埋まりませんでした。前みたいな仲良しの夫婦に戻りたい気持ちと、どうしても消化出来ない重たい気持ちと、どこからともなく湧き出てくる負の感情が私の中でうずめいていました。

 ある日「どうしたら許してくれる?」と夫が言いました。

 心の中で「私は夫のオアシスにはなれなかったんだなぁ。許すことができれば、いつの日か蜃気楼ではないオアシスになれるのかなぁ・・・。」と、そんなことをぼんやりと考えながら何も答えられずに黙ってうつむいてしまいました。

次の話


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