24.人の命が消えるとき。
もうすぐ子どもたちに会えるかもしれない!と期待を胸に、先輩の働く弁護士事務所へ足早に向かいました。久しぶりに会う先輩はキリッとスーツを着こなしていて、すっかり弁護士姿が板についていました。
ざっくり、今までの経緯を話しました。ちょっと話にユーモアを交え、夫の不倫相手がAKB48の子に似ていることや、探偵に依頼したけどバレちゃって何の証拠も得られなかった話など、重たい話ではあるけど、時に笑いが起こるくらいにざっくり経緯を話しました。先輩もその話を真面目に聞いてくれたけど、たまにクスッと笑いながら「大変だったね!」と言ってくれました。
そして、話はさらに続き、いよいよ子どもたちが連れ去られてしまった日のことを話し始めると、突然先輩の表情が変わりました。固い表情になったというか、固まってしまったというか、明らかにさっきとは様子が違います。そして、一通り話し終わると先輩はこう言いました。
「ナリちゃん本当にごめんね。知り合いの離婚案件は受けられない・・・」
家庭法律相談センターのことを教えてくれて、「気を確かにがんばってね。お子さんとはやく会えるといいね。」と声をかけてくれたけど、最悪、子どもに会えないかもしれないくらいの大変な状況であることくらい、バカな私にでも何となく解ってしまいました。その日の帰り道のことは、どうやって家路についたのもよく覚えていません。でも、五感が鈍ったような感じがして、とても息と心が苦しくて、周囲の音があまり聞こえくなって、景色の色もあまり感じられなくて、ふっと気を抜くとふっと生きていることを忘れてしまいそうな、ふっと消えてなくなってしまいそうな、そんな感覚になったことだけは何となく覚えています。
この日のことは、例えば人身事故で電車が止まった時など、車内でイライラしながら「迷惑なんだよ!こっちは急いでるのに!」って怒っている人とかを見かけた時などに、必ずと言っていいほど思い出してしまいます。何とも言えない気持ちになり、自殺してしまった人の中には、ふっと気を抜いた瞬間に、あの時の私みたいな感覚に陥ってふっと自分の意思とかに関係なく、電車の通る線路や、車の通る大通りに飛び込んでしまったりした人もいたんじゃないかなと。そういうことを考えてしまうのです。
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