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カレー屋での失恋のはなし

ずっと蓋をしてきた、十数年前の失恋の話。
今夜、初めて信頼する友人のひとりに話した。

初めて心のままに、追いかけた人だったこと。
会えなくなってからは、毎日枯れるまで泣き続けた。
私にとっては苦くて苦くて、
今となっては愛しすぎる思い出だ。

ただ、今でもふと当時の記憶が蘇ってきては
胸が苦しくなることがある。
ずっと恋愛はしてない、と言いつつ
心の奥ではずっと大切に守ってきた。
私はずっと恋愛をしていたのかもしれない。

しかし、いつのまにかこの思い出にも蓋をしてしまった。
そうすることでしか、歩けない時もあった。
誰かに話すことなく、心の宝箱に入れておくことが美しいことだとも思っていた。
しかし、何故かこのタイミングで話したくなったのである。

そんなことを恒例のカレー会で、
食後のチャイを啜りながら、話してしまった。

友達は相槌を打つだけで、じっと聞いてくれた。
そして、「いいなぁ。私もそんな恋愛がしてみたい。」と呟いた。

長い間向き合えず、踏み出せなかった、
心の水面下に広がる淡い灰色の感情を
そんな風に捉えて、思わぬ言葉で包んでくれた。

泣きそうだった。
泣けなかった。

今日のチャイは、
いつもより渋くて甘かった。

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