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ころりと横になる今日が終わつている 第二稿

ころりと横になる今日が終わつている・第二稿


立川早紀・園と暮らしている。
鈴木裕也・立川と同じ会社で働く。立川と同期だが仲良くはない。
園実華・立川の同居人。器用な変わり者。ブラジリアン柔術をやっていた


・「宇宙人の現れ」・初夏の夜⒒時の車通りのない道路脇
立川が舞台中央に横になっている
立川 あーーーーーー、
 鈴木が出てくる
立川 あーーーーーー、
 鈴木固まる
立川 あーーーーーー、(鈴木に気付く)あ。
鈴木 あ。
 間
鈴木 え、あ大丈夫っすか?
立川 あ~
鈴木 どうしたんすか。
立川 あー
鈴木 え立川さん?こんな。道路んとこで、…え?何してるんすか。
立川 あーーーーーーーーー
鈴木 大丈夫ですか(立川の傍に近づく)立川さん。
立川 あーー
鈴木 もうお帰りの時間ですよね、え、だいーじょうぶ…すか。立川さん
立川 いーー
鈴木 お酒、飲みました?大丈夫ですか、
 間
鈴木 あのここ道なんで、その…立川さん?ねぇ、聴いてますぅ?立川さん?…え?(困惑して笑いながら)な…え立川さん?
立川 いーーー
鈴木 あー(すこし笑う)だめかな。分かります?あの、ぼくー、鈴木です。鈴木裕也、同じ会社の、分かります?聴こえます?
立川 うーーーーー
 間
鈴木 あなたは。立川さん。立川、早紀さん、
立川 えーーーー
鈴木 ですよね?
 間
鈴木 あの、駅まで行きます?(立川の傍でしゃがむ)
立川 おぁーーーーーー
鈴木 あ。分かりました(明るく笑って)
 鈴木が立川をお姫様抱っこしようと手を伸ばす。服に触れた瞬間立川が自分のバッグを引っ掴み、鈴木を9回連続で殴る
鈴木 すいませんすいませんすいませんすいません
 立川、また横になる。バッグは鈴木の近くに落ちており、中身が出ている
鈴木 なんですか…。ほんとに…立川さん。
 立川の荒い呼吸が少しのこっている
 沈黙
鈴木 分からない。ですか?もしかしてなんか。会話だって通じてないですもん。急に、すんごい来るし。暴力。
立川 …
鈴木 立川さん?
 間
鈴木 …え?何にも言わなくなっちゃったよ。立川さーん、たちかわさ~ん?
 沈黙
鈴木 バックの中身出てますよー?立川さーん?見てもいいすかー?、バックの中身見えちゃってますよー
立川 宇宙人でーす
 長めの間
鈴木 あー聴こえてるんだ。
立川 宇宙人です、
鈴木 立川さん
立川 宇宙人です。
鈴木 あの…
立川 宇宙人です。
 鈴木、立ち上がる
鈴木 そんなわけないでしょ立川さん
立川 宇宙人
鈴木 えーー…。
 間
鈴木 立川さん。…立って帰りましょ?飲み行きますか?おごりますよ。
 立川、おもむろに立ち上がる
鈴木 お。やっと通じましたね。立川さんと心が。
立川 お前、コロス。
鈴木 え怖。まだ宇宙人だったんすか
 三秒の沈黙
 立川、無言で鈴木に近づく
鈴木 え、…何かあったらほんとお酒でも何でも付き合いますよ?立川さん
 立川、鈴木の首を両手で絞める。そこには非力さと慣れなさが滲む。
鈴木 えなんで…どういうことなんですかこれは。倒れた方が良い感じですかこれは。
 長めの間、双方どうしたらいいのか分からない状況
 そこに婦人警官のコスプレをした園実華がゆっくり歩いて来る。
園 あ。
鈴木 が。
園 ちょっと、何やってるの
鈴木 あの、なんか急にこうなってよくわかんないんですけど別にそんな苦しい訳でもないんで、(園が間に入る)あ、お願いしま、(園、首絞める)え?…
 園、鈴木の首を絞めて簡単に気絶させる。道に鈴木を横たわらせる
園 どうしたの。
立川 うん。
園 帰れる?
 立川、道に散らばったバッグの中身を集め、気絶している鈴木の身体の上に並べ始める
園 (鈴木を見ながら)鶏、貰ったんだった。
立川 鶏肉?(園を見上げる。)
 園、倒れた鈴木の傍にしゃがむ。
園 うんニワトリ。
立川 え?殺ッたの?首
園 やったよ。
 間
園 違うよ。違う違う、この人じゃないよ?
立川 ニワトリでしょ。
園 斜め前の横内さんがニワトリ捌いて見せてくれて。それで、やってみる?みたいな。
立川 横内さんそんな感じの人なんだ
園 包丁で首アレして。……横内さんは優しくて面白い人だよ。
立川 面白がられてるんじゃなく?
園 どういうこと?
立川 ああ、いいや、感じてないならいい
 沈黙
園 この人誰?
立川 え?
園 首絞めてた人
立川 鈴木。
園 気絶したことに気付いてないと思うけどやっぱ起こした方がいい?
立川 かーーーーー
園 おーい。私が落としたんだけど起きろー、(鈴木をペチペチする)
 立川、立ち上がって鈴木から離れる
鈴木 (目覚めて起き上る、記憶はさっきのまま)え!!、何で首絞めてんですか。
 沈黙
鈴木 ……あれ。ここ………いつ?
 間
鈴木 すいません、………すいません説明しょうとしてましたよね。
園 (はっきりゆっくりと口調を変え)もういちど最初から話してみてください。
鈴木 (記憶を探すように)説明、あの、この人が、立川さんがこの道で倒れててぇ、それで僕が通りかかって……
園 (立川を見て)そうなんですか?
立川 宇宙人です。
園 はい
鈴木 なんでそっちに確認取るんですか、
立川 宇宙人。
鈴木 「宇宙人です」しか言わないんですから
立川 宇宙人。
園 なるほど
鈴木 そう。で、なんか宇宙人って
園 宇宙人?
鈴木 いやあの、道で倒れた宇宙人、いやちがあの、立川さんが
立川 宇宙人が来た。
園 宇宙人が来た…。
鈴木 宇宙人は来てません
 間
園 なんですか。
鈴木 すいません、
立川 宇宙人。
鈴木 宇宙人っていうか立川さ、ん?今、会話しましたよね!、自分で説明してくださいよぉ巡りさんに。
立川 アーーーーーー!
鈴木 あのこんなこと言ってますけど、立川って言います。この人は。立川早紀さん。この道の向こう行ったトコにある会社のに。勤めてるんです。僕も。
園 はい。
鈴木 地元の人なら分かりますよね。
立川 宇宙人です!
園 (立川へ向けて)はい、宇宙人。
鈴木 ちょっと(園へ向けて)話通じてます?
園 はい。五分五分で。
鈴木 あの僕はこの人駅まで連れていきます。(立ち上がる)
立川 宇宙人です。
鈴木 なんで、大丈夫です。あの、………お巡りさん迷惑かけました。(少し頭を下げる)
立川 私は宇宙人です。
鈴木 たちかわさん。立川さんは宇宙人じゃないですよ。
立川 違います。
鈴木 (立川の目を見ようとする)タチカワサキサン、なんですよ。大人の、一人の女性として仕事も生活もしているっていう…、立派な。
 沈黙
園 は?
立川 違います!宇宙人です!
園 そうなんですよねー。
鈴木 宇宙人立川さん、もう警察の人にも迷惑なんで行きますよ?
 立川、道に横になる
鈴木 (呆れた口調で大げさに)立川さん!!
立川 ……。
園 あのー、宇宙人を尊重したらどうですか。
鈴木 えー、宇宙人?立川さんの?
園 立川さんだと思っているんですね?この宇宙人を
鈴木 立川さんなんですけどね、この人は。
 沈黙
 立川がそっと鈴木を睨んでいる
鈴木 いやあの、ぶっちゃけなんか、ビックリしたんですよ(園へ向けて)
園 は?
鈴木 え…
園 なんですか?
鈴木 いやビックリだったんです。でしょ?道で倒れてたら、ワッて思うでしょ、常識。
 間
園 常識…?
鈴木 常識。それで道で倒れてるから常識的に、助け起こしますよね?
園 助ける…
鈴木 うん、はい。そしたら立川さんが
立川 宇宙人です。
園 うん
鈴木 (園へ向けて)違います立川さんです。
園 これはあなたに訊きますけど、もし立川さんが倒れていて、その場合あなたが立川さんを起そうとする動機はなんですか。
 沈黙
鈴木 えーっと。それは、気遣いです。
園 気遣い?
鈴木 立川さんは同じ会社の人なわけですから? まあの、ただ。同僚ってことで、それは助けようとしますよ。
園 助ける必要があなたにあるんですか?
 間
鈴木 ………違いますって、なんかそんなやましい事とかじゃないですって。そういう事じゃなくて、ただその、常識的に心配って言うか何か他の所で嫌な事なんかあったのかなって、そうだったら相談乗ってあげようって思って。
園 あー。
鈴木 だから、そういう普通のアレです。
 間
鈴木 あの、立川さん相談いつでもいいんで。
園 これは宇宙人です!!
鈴木 え、あー、はい。
 沈黙
立川 宇宙人。
園 分かりました。
鈴木 何がですか、
園 お帰り下さい。後はこちらがなんとかするので。
立川 私は宇宙人だ
 沈黙
鈴木 あー、はい、まぁ、はい、そうですよね。そうですもんね。(などと言いながら去る)
 時間は⒓時近くになっている。
 園、立ったまま
 沈黙
園 続きなんだけど、唐揚げにしようってサ、思ってんのサ。
 長い間
立川 うん。
園 そ。っでー、だからー、帰ろうよ。ウチにサ。
立川 あーーーー、私はやっぱり宇宙人です。
園 宇宙人。
立川 絶対に立川ではない。申し訳ないけど立川早紀ではない。
園 私たち人間にはかなり立川早紀に見えるんだけれどどうしよう。
立川 私は立川早紀ではなくって、名前の無い宇宙人です。人間ではないです。
園 そうですかー、うん。
 間
立川 宇宙人には分からぬ。人間の社会のことも人生の事も。何故そうまでして生きなければならないのかも。
園 うん
立川 私は宇宙人。殺意と悪意を持った極悪の宇宙人なのだった。人間の常識など宇宙人には通じない。だからこそこの道に寝てしまう。
園 宇宙人ならしょうがないね。
立川 宇宙人だと認めてくれるかい?
園 とりあえず。宇宙人として。
立川 助かる。
 間
園 宇宙人は、どこから来たの?火星?
立川 関東。
園 あ、そーなんだ私も一緒~。
立川 宇宙人はずっと社会の中で生きている。ずっと生きてきた。
園 そう。そんな気はしてた。侵略できない宇宙人
立川 侵略はできない。侵略されてる側だから。
園 それはごめんなさい。
立川 いや、そういうことじゃなくて、侵略されている宇宙人にも責任はあると思う。侵略されにいっているというか、侵略されて人間に成りきることによって生きているから。
園 それは良くないこと?、じゃないの?人間になっちゃうのはさ。
立川 あーー、結局は成り切れないんだけど、人間には。だからこうやって道に寝ている。宇宙人。
 間
園 宇宙人とさ、人間の差って何?
 沈黙
立川 実はそんなものは無い。
園 あ。難しい。じゃあ誰が宇宙人なの?
立川 私には分からない。
園 ああー、なんか分かった。
立川 私は人間です
 立川、立ち上がる
園 早紀?
立川 なに。
園 ああ!…帰る?
立川 今何時?
園 時計持ってないんだよね、これに着替えたから。
立川 変だからね。警察のコスプレして外歩くとか
園 そうかな、役に立ったよ
立川 宇宙人だよ。
園 え?
立川 こういう事できるのは宇宙人だけ。
 園、道に仰向けに寝る
園 どうせ宇宙人だからサ、人間のフリするのなんか辞めてしまえって思うよ、一人の、宇宙人として私はサ。
立川 そんなことしたら社会が、会社が成り立たないわ。
園 えーーーーー、それを言っちゃうのか
立川 社会も会社も人間でなくちゃ。人間の歴史に書かれることをサ、宇宙人がやったらいけない。やっぱ立派に、名刺に人間の名前書けないと。立川早紀って。
園 (上体を起す)あのさ、気付いてたよ、実は。
立川 ん?
園 横内さんっていうか、私らが引っ越してきた家の周りに住んでる人の反応?
立川 うん。
園 なんか、まぁ本当に宇宙人が来たとまでは言わないけどさ、新しい動物が動物園に来たから観に行こうみたいな、面白がられ方?だったよ。確かに。
立川 うん。
園 でもそれはしょうがない、んじゃないかな。だってちょっとサビれた土地にさ、おっきな工場っていうか研究所が出来て、そこに勤める人が越して来たってだけでもすごいのに。変な女二人だよ?……珍獣の定めっていうか、宇宙人の定めじゃない?
立川 そういうの、私は嫌なんだよね。やっぱり。
園 だから人間になろうとする。?
立川 親と関係良好でおしとやか、スーツ着て、ハイヒールで走れます時間とお金はコンパクト、白い部屋で生きてて料理もできる家庭的な一面アリ。仕事も!できる既婚で二児の母
 間
園 そんなの最早人間じゃないよ
立川 うん。
園 (また横になる)人間の中で宇宙人が生きてるって言った?さっき。
立川 大体ね。
園 それはもう間違いです。
立川 おお
園 もうほとんど宇宙人です。というか元々人間なんて居なかったのです。宇宙人しかいなかった所に、人間が入り込んだので。
立川 ほんとに?
園 だからみんな認めるべきなのです。本当は宇宙人だと。そうすれば宇宙人たちが人間コンテストで競争する必要もないんじゃないかな。
立川 なら鈴木も宇宙人なんだ。
園 そう。…誰か覚えてないけど。
立川 うん、。そうか。みんな宇宙人なのか。実は。
 間
園 そういえば人間。唐揚げ好き?
立川 や、みんな宇宙人なんでしょ
園 訊き方違った、。早紀、唐揚げ好き?
立川 まあね。
園 なら帰ろ。
立川 起きろや
 園、立ち上がる
園 今度あの人に会ったらどうする?
立川 鈴木?
園 宇宙人に戻せるならそうしてしまいなよ
立川 人間で接することにする。人間の方が幸せに生きられる宇宙人だろうから。
園 あ。難しい。

終わり

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