ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲

 ミスター・ビーンが007になったら、というコメディ。ベテラン世代になったミスタービーンが、IT起業家と戦う。

 深刻な映画もいいが、何も考えずに楽しめるのも、映画の大きな魅力だ。重いメッセージがあった方が、批評家の評判はいいのだろうが、普通に映画を見る人たちは、批評家より厳しい現実を生きているのだから、小難しい映画なんて必要ない。上映中のひと時だけでも浮世を忘れられるものこそが、多くの人に求められている。

この作品にも当然筋書きはあるが、そんなのに囚われるのは野暮だ。何も考えず、ただビーンの起こす騒動を笑うのが、この作品に対する敬意の表し方だ。粗筋なんて覚えていたら、むしろ失礼だ。ただ笑って、ただ時を忘れる。厳しい社会を生きる現代人にとって、中途半端に哲学させてくれる映画より、何も考えずに時間を過ごせられる映画の方が、よほど意義あるものといえよう。

 ミスター・ビーンことローワン・アトキンソンも年をとった。ビーン映画の時より額のしわが深くなっているが、コミカルな動きは以前のままだ。アトキンソンは英国の志村けんと言われ、志村けんはコロナでもうあの世に行った。時の移り変わりに、人間は抗えない。時間を忘れさせられる映画が、そのテーマの深刻さに関わらず、いい映画といえるのではないか。

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