家族ゲーム

 主人公は中三の受験生。家庭教師の松田優作が不愛想なようで、子どもに寄り添って、高校に合格させる。

都営住宅か住宅公社かの集合住宅。家族は食事のテーブルで、向き合わず横に並ぶ。家庭教師はお茶もワインも一息に飲み、いつも学研の図鑑の植物を持ってる。日常のようで、非現実的。

 家庭教師ってのは、ごはんも一緒に食べるものなのか。家庭に溶け込むのが家庭教師なのかもしれない。

 主人公の中学生だけが心情描写されている。父親は成績のことのみ気にし、母親は周りの家の奥さんのようにジャズダンスをしたいとか言う。受験戦争まっさかりの、高度成長期の頃のサラリーマン家庭というのは、こうだったのかもしれない。

テストは点数を公表して成績順に返される。何人もに体をつかまれ女子とキスするよう強要されたり、集団になぐられたり、当時の中学のいやな世界が再現されていて、見ていてきつかった。

 主人公はまじめに勉強に取り組もうとしなかったが、家庭教師の暴力的な指導に屈して、だんだん成績が上がる。殴り合いに勝つ方法も教わり、心を通わせる。好かれようとする姿勢を見せることもなく、子どもに勉強を強要する。顔を叩いて服従させる。成績を上げるには最善の方法だ。今なら批判される教育法だが、当時は成績さえ上がれば良しとする空気があった。

無理だと思われた高校に合格した祝いの夕食のテーブルで、家庭教師はマヨネーズやワインをぶちまけ、パスタを投げる。中学生は高校に合格したけど、兄の高校生は学校を辞めたいと言う。どこまで行っても家族は、なにかしら問題を抱えている。それでよし。それが生きるということだ。

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