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暁山瑞希の今 〜シークレット・ディスタンスを終えて〜

こんにちは、ありあです。
ついに来ましたね、瑞希バナー箱イベ……。
2周目の星4はトリを飾ることになり、次の星4がいつ来るかも分からないのがめちゃくちゃ怖いですね……。最悪来月来ますよね、これ。

……とか言ってる場合じゃないですね。
いつものようにイベストに関しての軽い所感と考察をしていく……予定だったのですが、今回のイベストは瑞希の根幹に関わる話だったので、イベストを含めて今現在の〈瑞希という人間がどう描かれているか〉ということについて個人の見解を長々と書いていこうと思います。
考察、みたいな論拠に準じたものではなく、どちらかというと感情の吐露です。とろとろです。

記事遅くなりました、ほんとはイベ開始2日後くらいに出したかったんですけど。

100ランしてました。疲れました。

(注 当記事は瑞希の「サークルメンバーの誰も知らない秘密」は性別のことであるとして執筆されています)

また、今回のイベストについてのみ知りたい方は目次から飛んでください。

Ⅰ.今までの瑞希

まずは、KAMIKOU以前の瑞希。
ユニストや初期ニゴイベ等で描かれていた瑞希は性別に関する苦悩を後景化した、ある種の超人的キャラクターでした。

誰よりも「自分らしく」を徹底して生きる様は高校一年生とは思えないような力強さに満ち溢れ、それでいて他者の思いを蔑ろにすることのない配慮の行き届いた立ち振る舞いは、瑞希の最も大きい魅力だと私は思っていました。

この言葉が瑞希の言葉の中で一番好きです。
この言葉を見たとき、「自分の抱えている苦悩を瑞希に完全に『理解』されちゃったな」って感じたんですよね。
そして、きっと瑞希も何か手に入れたかったものがあるはず、そう思えば思うほど瑞希の魅力と影は深くなっていきました。

いったいどれほどの苦悩の先に瑞希はいるのか、いくつの諦めの先に辿り着いたのか。

瑞希の悩みの氷山の一角にすら触れられない私は、ずっとイベントストーリーでの掘り下げを待っていました。

イベ前までの話に関しては、この記事にたどり着く方はもうすでにお読みいただいてる方も多いと思いますが、以下の記事を参照していただければ嬉しいです。

暁山瑞希とジェンダー問題 〜性別の後景化〜

そして、待望のKAMIKOU FESTIVAL。
ここで思いもよらぬ瑞希の一面が明らかになりました。
それは、〈マイノリティ意識〉です。
瑞希の問題は乗り越えられていると思っていたばかりに、当時は本当に取り乱していました。

クラスTシャツという〈マジョリティ〉を受け入れられるかどうかを主軸に話を進めながら、瑞希を取り巻く環境が中学時代とは比べものにならないくらい良くなったことが「瑞希らしさ」を損なわずに描かれていて、贔屓目ではありますが本当に最高のシナリオでした。

また、シナリオの主軸はマジョリティ・マイノリティの対立ではありますが、着替えの問題や、制服の問題も暗に示していて、瑞希が抱える煩わしさを垣間見ることもできました。

瑞希の、たとえ「それなり」に仲が良かったとしても他人との距離を置いてしまいがちな一面が描かれたのも大きな点です。

杏と仲がいいこはねが来た時、類が司、寧々と楽しそうにしているのを見た時、瑞希はそこに混ざらず、そっと身を引くだけでした。〈行き過ぎた〉配慮ですね。

ニーゴでの外交的な姿ばっかり見てきた私にとって瑞希にそんな一面があることは意外でした。
ざっとKAMIKOUまでの瑞希に対するイメージはこんな感じでした。

Ⅱ.シークレット・ディスタンス

今回は前置きが長かったですね。では本題です。
先述した、「距離を置きがち」な点にフォーカスしたのが今回のイベスト、「シークレット・ディスタンス」でした。

実を言うと、初読の印象は無味でした。

何か明らかになったことはないし、KAMIKOUからさして進んでいないし面白みがないと思っていました。それに加えて姉の件や花見の件は過去のストーリーやエリア会話との齟齬があるしで、ちょっとうーんだな……って思っていました。
ですが、今の評価はバリ高です。KAMIKOUに匹敵とまではいきませんが、いいストーリーだったと思います。
それでは解説していきます。

Ⅱ-ⅰ 瑞希とトラウマ

もはや瑞希を語る上で外せなくなってしまった瑞希の中学時代。


今回のイベストでも、互いのことをもっと知るためにみんなを連れ出そうとする瑞希を躊躇わせます。

瑞希にとって中学時代のトラウマはどれほど大きいんでしょう。

もしかしたら、瑞希が神高のブレザーを着ないのも中学時代がブレザーだったからかもしれないですね。
瑞希の服の好みとブレザーって割と方向性合ってる気がするんですよね、たとえ好みではなくとも着回しの一つには入りそうなのに頑なに着ないのは中学時代のトラウマが大きそうだなって思っています。

「カワイイ」、「オシャレ」を自他共に認める瑞希が、トラウマを理由に避けているんだとしたら……と思うとだいぶ辛くなります。

そして、ニーゴでの意図しないお花見。
この時にも瑞希は中学時代を回想します。

このように、KAMIKOUでも今回のイベストでも、瑞希のストーリーの主軸は〈トラウマの克服〉なんですね。

KAMIKOU FESIVALが文化祭という〈学校〉を代表する行事の場でのトラウマの克服だったのに対して、シークレット・ディスタンスは桜に換喩される〈関係性〉のトラウマの克服なんです。

さて、新学期と聞いて皆さんは何を思うでしょうか。
入学式やクラス替えと言ったものに代表される、新たな「出会いの季節」であるとともに、今まであった関係性が〈変化〉する季節でもあります。

クラスが一緒の頃は毎日遊んでいたのに、クラスが変わってお互い別々の人と遊ぶようになった、別々の学校に進んだ、など。出会いは往々にして〈別れ〉を内包します。

だから、春は関係性の維持を確認し合う季節でもあるんです。

〈新学期〉、桜並木で瑞希は新たな出会いへの可能性を切り捨てます。
それは、瑞希の中学1年間が瑞希にとって果てなく〈つまらない〉ものであった証左でしょう。

同級生も社交辞令として接するだけで、通り過ぎた後本人に聞こえるくらいの声量で本音を言っています(ここ、〜の声になってるの芸コマですね)。

桜が毎年咲くように、来年も一緒にいることを確信して、関係性を作って維持できる「普通の人」の感性を瑞希は全く理解できないのです。

そして、毎年咲く桜が綺麗なことをさも当然のように賛美することもできないのです。

だからこそ、瑞希は「今を楽しむ」生き方になったのでしょう。もっと言えば、瑞希は「今を楽しむ」ことしかできないのです。

普通じゃないから。

しかし、ここで瑞希は中学時代とは違い、桜が綺麗に見えることに気づきます。

桜自体も、そして瑞希自身も大きく変わっていないのに目の前にある桜は綺麗に見える。

それに対して奏が解答をくれます。

ここに瑞希のカタルシスが生まれました。

桜は綺麗なもの、という既存の価値観の枠組みを壊した上で、もう一度桜の美を再構築するニーゴの面々。
瑞希はここでニーゴへの強い共感を得ます。

この桜が廃校の近くにあるというのも、学校では馴染めないながらもこうして一緒にいられるニーゴというものを象徴している感じでいいですね。

文化祭を楽しめるのが〈マジョリティ〉の人間。
桜を楽しめるのが〈普通〉の人間。
そう言った瑞希の中に内在化した偏見を瑞希の周囲の人間は無自覚で壊していきます。

そして瑞希の中にあったトラウマは一つ一つ丁寧に上書きされていきます。

桜のような温かみを持って。

Ⅱ-ⅱ ハイド・クリノリンとカミングアウト

まあここで終わらないのが瑞希のシナリオですよね。
みんなで見た桜の綺麗さに心奪われた瑞希は「また来年」遊ぶことを提案しようとします。

「普通の人」がしていた、関係性の維持の確認を瑞希もしようとするのです。
ですが、その言葉はつかえてついぞ出てくることはありません。

その理由は言うまでもなく、瑞希の抱えている秘密。
性別のことに他なりません。

ですが、この秘密に関して、今までの瑞希って必死に隠し通す感じではなかったんですよね。

例えばエリア会話では声質の違いを指摘され、「鋭いなー」とコメントしてます。
一人称の「ボク」に関してもその一例です。
瑞希は単純に言っていない、というだけで隠し通すつもりはなかったんじゃないかというのが私の印象です。

しかし、先の場面で瑞希にとってニーゴがかけがえのない居場所になったことにより、状況は一変します。

瑞希は、自分がここまで共感でき、自分のことを『理解』してくれるニーゴという関係性を維持したくなってしまいました。

KAMIKOU FESTIVALの時よりも強く、ニーゴを〈居場所〉として認識するようになってしまいました。

ただ、瑞希は自分のことを伝えられない、そして伝えられない限りニーゴは真の意味での居場所にはならないと独白します。

はい、これが瑞希の最後にして最強のトラウマ、〈カミングアウト〉です。
これについて話していきます。

ところで、瑞希は何をそんなに怖がってるんだろうと思ってる方もいるんじゃないかなと思うんですよね。
「ニーゴのみんななら、受け入れてくれるだろ」みたいに思ってる人いますよね?
いなくても話します。

まず、瑞希にとってニーゴのメンバーは初めての〈戸籍性別を知らない〉関係の人間なんですよね。

学校ってものすごく性別区画がはっきりしてるんですよ。
制服をはじめとして、並ぶ順番、席、班、委員。それら全てが性別から離れることはありません。例えばクラス委員は大体男子1女子1とかで選びますよね。
筆者は男子校だったので知りませんけど。

だから、学校という場で関わりがある人間で瑞希の戸籍性別を知らない人間っていないはずなんですよ。それくらい学校って性に対して〈無慈悲〉なんです。

バイト先も流石に戸籍性別は告知されてしまうのではないかなあと思います。まあでも、店長みたいなお偉いさん以外は知らないかもしれません。この辺りは掘り下げが欲しいですね。

だから、中学時代もし性別のことでカミングアウトが起こったのであればそれは〈内面の吐露〉であったはずなんですね。

ごめんなさい、直接的な表現は控えさせてください、書くのがあまりにも苦しかったです。

それを象徴するかのように中学時代、瑞希に声をかけた同級生の一人称は「僕」なんですよ。

だから、もし、万が一、億が一中学時代にカミングアウトがあったとしたら、瑞希が押し殺していた心を耐えきれなくなって吐露したんだと思っています。
そして、それがトラウマにというのがあり得そうかな、と。

一方、ニーゴとの関係性はこれの真逆になります。
ニーゴでは瑞希は心を押し殺してなどおらず、好きなように振る舞い本当に楽しそうに過ごしています。
だから、カミングアウトの必要性など今までは全く存在しませんでした。

しかし、そんなニーゴに「これから」を求めたことによって、ニーゴには楽しむための場としての役割に居場所としての役割が付与されてしまいました。

では、居場所に必要なのは何でしょうか。

それは、安心です。

遊び疲れて、帰りの電車でふと眠ってしまうような、そんな安心です。
手放しで安らげるような、何も心配せずにいられる環境。
それを実現するためには、どうしてもカミングアウトが必要になってしまいます。
瑞希の〈身体の吐露〉が必要になってしまいます。

しかし、瑞希の告白は場合によってはニーゴという関係をグチャグチャにしてしまいかねません。

その理由は、ニーゴが同性集団という性質を持っているからに他なりません。

私たちは、学校のせいもあり〈身体的な〉同性と一緒にいる時間が多くなる傾向があります。
その傾向は、思春期を超えて成熟しても、いや、成熟すればするほど顕著になっていきます。そして、集団は異性集団と同性集団で性質を異にし、中での立ち振る舞いも大きく変わっていきます。

特に、異性集団では否が応でも性別を意識するのではないでしょうか。

ニーゴというサークルも、同性集団であるがために、性別はさして意識に顕在化していません。

しかし、そこに瑞希が告白してしまうと今まで存在しなかった性別区画がニーゴにできてしまう可能性があるんです。

それを瑞希は危惧しているのではないでしょうか。

本当に大切になった場所だからこそ、自分の手で変質させるなんてできない。そんな足踏みも瑞希にあるように思えてなりません。

さて、今回のイベストによって瑞希の中で半ば透明化していた「秘密」という意識が再び浮上してくることになります。
しかも、今回はハッキリとした自覚を持って。

これから先、ニーゴで楽しいことが起こるたびに瑞希は「秘密を言えていない」とある種の後ろめたさ、罪悪感を抱えることになります。
楽しむ場であったニーゴに安心まで求めた結果、楽しむ場としてのニーゴすら奪われていく、皮肉にしてはやりすぎな展開です。
誰か瑞希を助けてくれ……。

だから、私個人としてはもし瑞希のカミングアウトが起こるならばそれは、ニーゴのことを真に信頼してのカミングアウトではなく、肥大化した罪悪感に耐えきれなくなって、ニーゴのことを壊そうとするためのカミングアウトになるんじゃないかなって思ってます(100%個人的な好みです)。

瑞希一人が居心地の悪さを我慢すればニーゴはこのままでいられるわけですしね。瑞希が自分一人の居心地の良さを得るためだけにカミングアウトするのは少し想像しづらいです。

まあ、ニーゴを壊すためにカミングアウトするのはもっと想像しづらいですけど。
何も言わずにふっと、いなくなるのが一番あり得そうですかね。

(琴岡みかげムーブして欲しいってだけです、琴岡みかげ大好き)

これに関連して、今回の瑞希の衣装名が「ハイド・クリノリン」なんですよね。本来クリノリン自体が下着みたいな性質を持つ上に「ハイド」という接頭語がついています。

なのに、クリノリンが丸見えなのなんでなんですか????

そうなんですよね、クリノリンって本来見せる必要ないんですよ。外見を美しく見せるための下着で、それ自体は秘匿されるべきものなんですよ。
それを見せることが瑞希の告白に換喩されてるとしたら……はぁー……。
あんまり使いたくない表現ではあるんですが、クリノリンの中を見せることって文字通り「スカートの中を見せる」ことになるんですよね。

本来必要のない行為としての告白を喩えてるんだとしたら本当に悪趣味だと思います……。助けて。

さて、今回のイベストを終えて瑞希を取り巻く環境だけでなく、瑞希自身も変容したことが描かれました。

以前、瑞希のストーリーは外からの視線とどう向き合っていくかで進むんじゃないかな、なんて言ってましたけどだいぶ違いましたね。

これから先は瑞希が自身の内面と向き合って、ニーゴと対決していく話になると思います。

おわりに

絵名、瑞希を救ってくれ。

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