「嘘つき」考察

ある事件が起きて、加害者は「昔から嘘つきだった」「虚言癖だった」と書かれていた。彼女のことは知らないがふと書きたくなったのでこれを書く。



嘘をつくこと、これはみんな経験があると思う。もちろん私も散々嘘をついてきた。今まで嘘を一度もついたことがない人はいないと思っているしいたら尊敬と心配してしまう。

私が三十ウン年生きてきて、出会った人たちの「嘘つき」は大きく分けて3パターン。


・1 罪から逃れる為、吹かし(誇張)

罪から逃れる為というのは大麻を見つかった時の「僕のじゃありません」とか浮気を詰められた時の「浮気してない」とか。罪から逃れる為、自分を守る為の嘘。

吹かしは年収400万少しのところを「年収500万かな〜」とか、出世なんてろくに話も出てないのに「そろそろ課長にって話が来ててさ」など。昔なら「俺、喧嘩強くて番長の片腕だった(実は番長グループの末席)」とか。話を盛って話す。

これらは割とみんながついている嘘、私もついたことがある。だから罪から逃れる嘘も吹かしも理解できる。


・2 嘘常習犯の所謂、虚言癖

これは凄かった。何が本当で何が嘘か分からなくなるほど次々としょうもないことを嘘つきまくる。小さな子どもならギリギリ笑っていられるレベルだ。

例えば仲良くなり始めた人に「そういや、俺あのゲームにめちゃくちゃハマってて」と話題に出して「そうなんだ、俺も好き!今度一緒にやろう!」「いいですね!」という流れになった。

遊びを催促するたび「今日はちょっと用事が」「実は友達に貸してて」とどうも辻褄が合わないことばかり言う。そう、彼は元々ゲームなんて持っていなかった。嘘を咎められた彼はそれでも「いや、本当に持っていた」「実はこの前嫁に売られて」と言っていた。

お気づきだろうか?上記の彼の言葉に本当のことは一つもない。息を吐くように嘘をつき、しかもとてつもなくしょうもない意味のない嘘をついて、その嘘を守る為に次々嘘を重ねている。

同棲中の彼女にも「今月給料が貰えなかった(貰ってる)」「あの事故を起こしたから罰金でお金を引かれた(引かれてない)」「ちゃんと保険に入ってる(入ってない)」「あの人は怖いから会わせたくない(普通の人)」「野球部だった(帰宅部)」「フランス語がペラペラ(話せない)」と知っているだけで軽くこれくらいの嘘はついていたらしい。

彼は知っている間中こんなことばかりだった。誰にでも平等に次々嘘をついた。「何が本当で何が嘘か分からないから信用しない」とみんな言っていた。

そして彼の周りではお金がよく消えた。状況的にもう彼しか考えられないが本人は一切認めない。小銭ばかりだったがある時はお札が消え、そして彼の周りには誰もいなくなった。


虚言癖でもう一人思い出す人がいる。友達の彼女だったあの人。

彼に彼女を「彼女、〇〇(イケメンの大人気俳優)の元彼女なんだ」と紹介された時、心の底から「ぜってええええええ嘘だろう!!!!!!!!」と思った。某イケメン俳優がどんなセンスかは分からないけれど、写真でみる彼女はお世辞にも美人でも可愛くもなく、年齢も結構上で、共通点もほぼなさそうな人だった。しかもよくよく話を聞いても「元彼女」と言っているのは彼女だけだった。

そんな自称某イケメン俳優の元彼女だが、小中学生の時に「私、あのアイドルくんと付き合ってるんだー」と言っている子がいたなー、彼女はそのマインドを今でも持っている感じなのかなー、と思うことにして話を続けてもらった。

一回りほど年上の彼女は病弱でほとんど働けず通院と薬で月20万ほどかかるらしい。「だから俺も少し援助しようかなと思っているんだ」と聞かされた時の私の表情を悟って欲しい。えーっと、馬鹿なのかな?

「何のご病気なの?」「それがちょっと難しい病気で説明しづらいんだって」「え?難病とか?」「そう言うのではないらしいんだけど」「一緒に病院行ってみたら?えーっと、嘘じゃないんだよね?」「うーん、でも薬いっぱい持ってるし本当だとおもう」「難病とかじゃないなら高額医療補助で自己負担は大体10万以下で済むと思うけど手続きしてないの?」「そうなの?」もう一度言うね、お前は馬鹿なのかな????

もしかしたら水やお湯のお姉さんに騙されている感じかな?と聞いてみたけれど水やお湯ではなく普通にバイト先で知り合ったらしい。多大な医療費のために同棲し始めたけれどそこまでの金額は渡していないとのこと。

「彼女モテモテでバイト先でいつもみんなに告白されたらしい」「昔、金持ちの坊ちゃんにストーカーされて大変だったって」「ファンクラブがあったらしい」ーーーーーーーー躊躇いもなく話す彼は本当に本当に純粋で疑うことをしらないんだろう。何の変哲もないとてもつもなく普通な垢抜けない彼女の写真を見ながら私は確信したよ、彼女は間違えなく虚言癖だなって。どこのモテフェロモン香水の広告だよ。

見ていられなくて彼とはそっと疎遠にしたが、色々あって別れて新しい彼女に出会ったと連絡があったときには心底ほっとした。彼女も前記の彼同様本当のことは一つも話していなかったんだと思う。


二人の共通点はいくつもあるけれど、一番思ったのが「次々嘘をつきまくる」ことと「嘘に嘘を重ねすぎること」、そして「嘘を自分自身がもう信じていること」だった。

「嘘も100回言えば真実になる」とナチスの宣伝大臣は言ったがそれに近い。彼らの中では帰宅部だったが野球部だったし、会ったこともないだろうが某イケメン俳優の元彼女で病弱の可哀想なモテモテ彼女なのだ。

虚言癖は相手に嘘をついているというよりも自分自身に嘘をついている。相手につく嘘なんて可愛いのもかもしれない、自分につく嘘は泥沼の始まりだ。誰しもある程度の想像や思い込みはあるだろう、ただ「俺は帰宅部なんかじゃなく野球部だった」「私は喪女じゃなくイケメン俳優と付き合っていた」と自分に100回嘘をついたらそれは真実になる、あくまで自分限定だが。嘘をつくとき、自分の耳が聞いているのを忘れないで欲しい。

嘘がバレたときに謝れたら良いが謝れなかったら嘘を重ねるしかないだろう。私も経験がある、泥舟でしかないので謝れるならさっさと謝るに越したことはない。小さな嘘を重ねるといつか大きな嘘をついてしまう、だってもう大きな嘘じゃないと隠せないから。

自分がついた嘘から逃げ出したくて自ら去ったり、相手に去られたりしたのか彼も彼女も「昔からの友達」の話はそこまで聞かなかった。人間関係を続けるには「虚言癖キャラ」で行く他は無いかもしれない。本人が認めないのが虚言癖の怖いところなので無理だろうけれど。


・3 サイコパス

虚言癖とセットになって言われるが、一人だけサイコパスだと確信を持って言えるその人は上記の二人とは全くの別物だった。

彼は真っ正面から嘘をつき、嘘をつくことに全く躊躇いもなく、嘘を暴かれることにも無関心だった。普通の人なら嘘がバレると恥ずかしいとか嫌という感情が少なくともあると思うが、彼には一ミリも感じない。

例えるなら昔のアイドルが言う「好きな食べ物はスフレです♡」、マジシャンが言う「何の仕掛けもありません」、など罪悪感の伴わない嘘。実はお煎餅が好きとバレても仕掛けがあるとバレても「はい、バレましたー!」と言う感じだと思う。その感覚。虚言癖と同じくらい嘘を次々とついたがショーのネタバレのようにケロッとしていた。彼はちゃんと「嘘」だとわかっていた。

他の虚言癖との差は「とても利己的であったこと」。彼の中には一般的なソレとはまったく比較にならないほど「利用できる人間」「利用できない人間」しかいなかったと思う。

ある時彼は「最近ラッキーなことがないなぁ」と言っていた。良いことないの?と聞いてみるとどうも違う。彼にとっての「ラッキー」とは利用できる相手と出会って利用できたことで、「アンラッキー」とはそういう相手に出会えないことだった。彼には善悪の区別がなく、平然とそう言うことを言える彼に底知れぬ怖さを感じた。

嘘を交え相手にメリットをチラつかせながら懐いたふりをして人の懐にさっと入り込み、嘘がバレても「で、どうしたいんですか?」「警察行きます?これくらいで?」と冷静に言い放ち、形勢が悪くなったらあっさり大切な人も切り売りした彼。思いやりとか愛情とか恩とか綺麗さっぱりなかった、多分彼にとってはSFの世界の話と同じなんだと思う。

もう付き合いがなくなって大分経つがあの強烈な感覚は今でも忘れられない。



私は今子育て中である。子供が嘘をつく時もあるし私や夫が子どもに嘘をつく日もある。「嘘はよくない」と教えたいが自ら守れてないのでそこまでは言えない。言えることと言えば「嘘をついたらまた嘘をつけなければいけなくなる、そうなるととても苦しくなる、だからやめよう」くらいだ。

3はともかく2の彼らはどうやって育ってきたんだろう、と思っていたら1から2に華麗な変身を遂げた人がいた。

彼には理想があった。こうあるべき、と言う思い込みもあった。でも今の自分では足りない。そこを努力で埋めるかある程度諦めて妥協するかがほとんどだと思う。彼は努力することも妥協することもできなかった。

足りないところを嘘で埋めた。最初は「吹かし」レベルだったが、嘘も100回つけば何とやらで彼の中では真実になった。そうなるとどんどん理想が上がる。でも彼自身は変わっていないので差は増えてゆく。彼は今更「今の自分」を認められない。

嘘が増えると、嘘に嘘を重ねると、ボロが出やすくなる。人はそのボロを見つけてしまった時に不信感を抱く。責められると彼は言う「嘘じゃない、真実だ」「そっちがおかしいんだろう」「そう言う風なニュアンスで言ったんじゃない」。

それでも追求すれば彼も自分の虚言に気づくかも知れない。でも子どもならまだしもいい大人だからほとんどの人は実害が少なければそこまではせずそっと去っていく。彼は「本当の今の自分」を知らない新しい人間関係を築いてそして「真実だと思っている理想の自分」を騙る。

彼の行末は知らないがこうなるともう破滅しか見えない。そこから逆転大成功を収めるかも知れないがどこかで自分を省みないと難しいだろう。省みることも等身大の自分を認めることも苦しい、彼には出来るだろうか。


私も今身バレしないように一部嘘をつきながらこれを書いている。嘘は身近だ。どうか「自分につく嘘」だけは気を付けて欲しい。

私もいつの間にか「まだそこそこのスタイル」と自分に嘘をついていたようで、前後左右撮影してやっと真実に気付いてしまった。なんだこの豚は!と驚愕したのは言うまでもない。毎日鏡を見ていたが気づかなかった。ついでに顔のシミやたるみのヤバさも綺麗さっぱり見えてなかったが最近やっと見えるようになった。鏡を見ていてもとてつもなく良いように自分を見ていたようだ。

私はダイエットと肌ケアに力を入れる、ついでにグータラせずに家事や仕事もしようと思う(多分)。