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ダントウボウが食べてみたい

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(イメージ画像)
ダントウボウという魚がいる。中国の揚子江などにいる魚だ。体高が高くて、小顔の不思議な魚。フナをひし形に引き伸ばしたような感じだ。中国では盛んに食用にされているらしい。

冒頭のイメージ画像というのは、ダントウボウっぽい魚をベトナムの市場で見かけた時に撮った写真だからだ。つまるところこの魚がダントウボウかは怪しい。というか、別種だろう。

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アジアに行った時は、この何ともいえないひし形のフナ的な魚を食べてみたくて、積極的に探してはいたのだが、なかなかお目にかかれなかった。
こんな小さなダントウボウチックな魚を捕まえたことはあったが、これを食べてもおそらくは「小さなコイ科」の域を出ない。だったら市場のダントウボウを買って食えば良かったのだが、後悔先に立たずである。

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(学生たちと霞ヶ浦周辺でダントウボウ探し)
ただこの魚、日本にもいる。外来種の見本市として名を馳せる霞ヶ浦だ。
霞ヶ浦はオオクチバスやブルーギルのような日本各地にいる有名どころから、底物をなんでも食べてしまう悪名高いアメリカナマズ、ハクレンやアオウオといった中華魚類にペヘレイのような南米魚類などなど。

なんというか、凄まじいことになっている。そしてその中にはあのダントウボウもいるのだそうだ。そこまで外来種だらけとなると、保全活動をしている身としてはなんとも言い難い状況だが、好奇心旺盛な生物屋としては是非とも採って食べてみたい。

いうことで、2017年頃からダントウボウ改めてDTBチャレンジと称して捜索を開始した。


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数年間、たまにだが霞ヶ浦に顔を出すと色んな魚が見られる。こちらはオオタナゴ。外来種。
タナゴは二枚貝の中に産卵するのだが、淡水真珠養殖のために持ってきたヒレイケチョウガイの中に入っていたらしい。


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ちなみにこちらがヒレイケチョウガイ。味は悪くないのだが、めちゃくちゃ硬い。これも霞ヶ浦や同じく淡水真珠養殖のために持ち込まれた琵琶湖などに定着している。


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こちらはアメリカナマズ。
釣りで狙うと外道で釣れてくる。



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あとはハクレン。これは投網に入ると網がぬたぬたになる。淡水魚は総じてヌルヌルではあるが、なんというかこのハクレンは段違い。ウナギに匹敵する粘液。


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こちらはワタカ。琵琶湖原産の魚で霞ヶ浦では国内外来種となる。琵琶湖では絶滅しかけてるのに、移入先では増えているなんとも言い難い魚。


そして、そうこうしているうちに、2019年。

ついにダントウボウに対面する機会に恵まれた。

そして一瞬で過ぎ去った。


投網に入ったダントウボウは、その場にいた数名の友人たちの目の前で霞ヶ浦へと帰って行った。あの意味不明な体高のせいで投網に上手くはいりきらなかったのだ。

大型のフナなら余裕で入る投網でも、体高だけなら巨大なコイに匹敵するダントウボウ。構造のバグである。

追い求めたダントウボウは霞と消えた。

そしてコロナ禍が始まり、DTBチャレンジも頓挫した。




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(友人撮影)
……かに思えたが、なんと当時一緒に追い求めていた北里大の友人たちが仕留めたのだ!!!
ありがとうチーム北里!




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そしてそのまま我が家に来た!

ありがとう、DTBチャレンジに関わってくれた皆!!!



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さて、このダントウボウだが身は存外綺麗だ。これはかなり期待できそう。

臭いも強くはない。川にいるフナ程度で、ドブのボラのような絶望みはない。



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何だこの入れ歯構造……。唇の表面が取れた。




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本来は素材の味を確かめるために塩焼きとかから始めるべきだが、ここは前々からやりたかった中華料理でいこうではないか。

というか、中華魚類を食べる上で、中華料理以外の選択肢があるだろうか。いや、ない。

骨切りをした後、ニンニクの芽と生姜を一緒に酒で蒸す。
そこに中華だしと醤油、砂糖で作ったタレを加えて、ネギをまぶし、最後に熱したごま油をかける。


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シンプルだがとても美味い淡水魚料理、清蒸魚の完成だ!

泥臭さは思ったよりなく抵抗なく食べられる。とくに腹側には脂がのっており「普通に美味しく食べられる淡水魚」といった感じだ。

そして一番臭みが集まる皮も、もちっとした感じで面白い。臭みが無い訳では無いが、清蒸魚効果があるとはいえ泥抜き無しでここまで食べられるなら十分美味しい淡水魚の部類に入るのではなかろうか。また身も多く、満足感もある。少なくとも、ハクレンよりかは食べやすい。

日本ではあまり受けないかもしれないが、確かにこれは淡水魚食が盛んな東アジアや東南アジアでは受けそうな感じだ。

そんなこんなで、DTBチャレンジは幕を下ろした。

足掛け4年?手伝ってくれた皆様、ありがとうございました。




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追伸、というか、食後の感想。
やはりこの背骨の伸張はハンパない。体高が高ければ丸呑みされにくいので分からなくはない進化だが、それにしても不思議な魚である。

そして次なる「骨格標本にしてみたい」という欲が出てきてしまった。人間の欲は恐ろしい。

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