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生成AI活用プロジェクトを成功させるための3つの最重要ポイント

今や生成AIは世界中で注目されており、様々な分野でどのようにして自社事業で活用するかが模索されています。

『生成AIを活用してコンテンツ制作を効率化したい』
『生成AIを活用してビジネスの競争力を強化したい』
など、近年は大手企業だけでなく、中小企業や自治体でも導入が進んでいます。

しかしその一方で、導入に失敗している事例がたくさんあるのも現実です。 失敗する原因は様々ですが ほとんどは、

・生成AIに対する認識のずれ
・生成AI活用プロジェクトのすすめかた

に起因しています。
生成AIプロジェクトを成功させるためには、生成AIについて概要を理解することが非常に重要です。

今後の生成AIはどうなっていくのか?これから重要となる視点

ムーアの法則というのをご存知の方は多いと思います。

【ムーアの法則とは】
ムーアの法則(Moore's law)とは、インテル創業者の一人であるゴードン・ムーアが、1965年に自らの論文上で唱えた「半導体の集積率は18か月で2倍になる」という半導体業界の経験則です。

そもそも半導体についての法則として有名ですが、いまでは様々なシーンでムーアの法則の現象が見て取れます。
生成AIの発展についても、このムーアの法則が当てはまっているのではないでしょうか。

現在の生成AIの状況は、この図でいうと加速度的に急上昇する入り口あたりにいると考えています。OpenAIやDeepMindなど大手からスタートアップにいたるまで、生成AIの分野でしのぎを削っています。

生成AIは、最終的には私たちが想像もできないような技術に発展していくはずです。

それこそ自然な会話や創作活動まで生成AIが可能になる世界なのかもしれません。それは半分冗談としても、私自身は生成AIについて「生成AIに仕事を奪われる」と不安を煽るような悲観論者ではありません。むしろ好きな技術です。今後の発展もとても楽しみです。

この新しい技術をいかに適切に自社事業に活かすかという視点が、この大激動の時代を生き抜くために必要と考えています。

1. 生成AIに対する誤解の排除と期待値の最適化

「生成AIをビジネスに活用したい」
こういったご相談をよくいただきます。

生成AIが流行っていますし「○○社が○○のための生成AIを導入」というようなニュースもよく目にしますので、「自社でも生成AIを」となるのは自然な流れです。しかし、いくら流行りの優秀なツールでも使いかたを間違えると痛い目を見ることになります。

まずは、生成AIの「得意なこと」「不得意なこと」を理解することが何よりも重要になります。生成AIはなんでも解決してくれる魔法の杖ではありません。

生成AIの流行りもあり、「生成AIは何でもできる」と勘違いされてしまいがちです。しかし、実際に生成AIというものがどういったものなのかを知ると、意外に活用場面が限定的であることに驚きます。

生成AIには「得意なこと」と「不得意なこと」があります。

【生成AIが得意なことの例】

コンテンツ生成
生成AIは、テキスト、画像、音声、動画などのコンテンツを生成することに優れています。例えば、ChatGPTはテキスト生成、Stable DiffusionやDALL-E2は画像生成、特定の声を模倣する音声生成AIなどがあります
自動化と効率化
定型的な業務やパターン化された作業の自動化に長けており、業務の効率化を図ることができます。例えば、顧客サービスの自動応答や、報告書の自動生成などがあります
アイデア生成
ブレインストーミングや新しいアイデアの提案にも利用されます。生成AIは、与えられたデータや既存の情報から新しい組み合わせや提案を生成することができます
言語翻訳と多言語対応
複数の言語に対応したコンテンツを生成する能力も持っています。これにより、異なる言語間でのコミュニケーションが容易になります

【生成AIが不得意なことの例】

創造性と独創性
生成AIは、あくまで学習したデータや既存の情報に基づいてコンテンツを生成するため、真の意味での創造性や独創性を発揮することは難しいです。完全に新しいアイデアや芸術作品の創出は人間の領域です
感情の理解や表現
AIはプログラムされた範囲内でのみ機能するため、人間のような感情の理解や表現はできません。感情を伴う細やかなコミュニケーションや対人関係の管理は苦手です
倫理的判断や社会的文脈の理解
AIは倫理的な判断を下すことができず、また、文化的なニュアンスや社会的な文脈を完全に理解することも困難です。これにより、不適切なコンテンツを生成するリスクもあります
未知の情報やデータに対する対応
生成AIは訓練されたデータや既知の情報に基づいて機能するため、全く新しい情報や未知のデータに対しては適切に対応することができません

生成AI導入のご相談をいただくのですが、実際にお話を聞いてみると、生成AIではなく人間が作成したほうが適しているというケースも多いのが現状です。

まずは、生成AIに対する誤解をなくすことと、期待値を最適化することが大切です。そして、自社の実現したい目的に生成AIが合っているかどうかということを判断することが先決です。

2. 既存の業務や既存のシステムに囚われない

生成AIは万能でないことを理解する

大切なのは生成AIは万能ではないことを理解することです(今のところは)。
とくに、既存のコンテンツ制作を生成AIで完全自動化することは現実的でないケースがほとんどです。前述した通り、生成AIで完全自動化できる領域はまだまだ限定的です。

定型的な文章や単純な画像の生成には生成AIが適していますが、オリジナリティが求められるコンテンツは人間が作成するのが適しています。

また、生成AIに100%の精度を期待することはやめるべきです。
完全自動化ではなく、
・生成AIが出力した文章や画像を人間が確認・修正する
・生成AIをアイデア出しのサポートツールとして活用する
といった『人間のサポート役』として捉えることがポイントになるのではないでしょうか。

あくまでコンテンツ制作プロセス全体の一部として生成AIが機能していると認識し、不確実性を考慮したプロジェクト設計が求められます。

生成AIプロジェクトを新たな価値を生み出す新規事業設計として考える

一般的に生成AIを活用していく場面では、既存のコンテンツ制作フローのコストカット施策として検討する姿勢に陥りやすいです。しかし、そうすると最終的に「人件費を削る」というところがゴールになってしまいます。

人件費を削減することが目的になると、人間の業務を代替えするための精度を求めることになります。その結果、開発費が余計にかかることになります。
生成AIは
・100%の精度は出ない。完璧ではない
・人のサポート役として考えるべき

という前提に立つことが非常に大切です。

人を排除するという考えは捨てるべきです。

プロジェクトではできる限り「新たな価値を生む」可能性へと投資し、拡大・継続していくという姿勢で取り組むべきと考えます。

そのためには、既存のコンテンツ制作フローに囚われず、それを刷新することに躊躇しないという思考も重要になります。場合によっては、生成AIに特化した外部ベンダーやパートナー企業を見つけて協業するという手段もありますが、そういった場合も最終的には内製化を見越したプロジェクト設計が必要です。

3. 小さな目標と「やってみる」という思考を持つ

生成AIに期待する品質を決める

まずは生成AIに期待する出力の品質を決めましょう。

ビジネス、特にコンテンツ制作に生成AIを活用する場合、「人間の代替」と「人間のサポート」の2パターンになります。人間の代替とは今まで人がやっていたコンテンツ制作を生成AIに任せるというものです。前述したとおり人間の完全代替はハードルが高く、現実的でない場合が多いです。

一方、人間のサポートとはアイデア出しやドラフト作成やリサーチ作業など、プロセスの一部を生成AIにサポートしてもらうというものです。

例えば、記事や広告コピーの生成をAIにさせる場合の、期待する品質はどの程度か考えておきましょう。
・人間が書いたものと遜色ない品質でないと使えない
・アイデア出しのサポート程度でよい
生成AIに期待する出力の品質によって、適用する手法や工数が変わってきます。

スモールステップを設計し進める

品質目標を決めて、いざプロジェクト開始となっても厳しい現実があります。時間とお金をかけたのに、期待した品質が出なかった、、ということも起こり得ます。

大きな範囲で高い品質を出すために動き出すのはリスクが高いです。
まずは、大きな範囲を小さく分割して、スモールステップで進めていくことが現実的です。

小さく分割することで、生成AIを使わずに人間が作成したほうが良い部分も見えてきます。適材適所という言葉がありますが、生成AIにも適した場所というものがあります。

大きな範囲すべてに生成AIを適用しようとするよりも、適切な箇所に生成AIを活用していったほうが全体的な品質が上がることが多いです。まずは、スモールステップに分けて仮説・検証を進めることが大切です。

・生成AIに期待する品質を決める
・スモールステップで進める

上記のことを意識するだけでも、ローリスクハイリターンの環境でプロジェクトを進めることができます。

まとめ『どれだけ小さくどれだけ早く試行できるか』

生成AI開発プロジェクトの場合、どれだけ小さく始めてどれだけ早く試行を繰り返せるか、という方針をとることが最も適しています。

成功する生成AIプロジェクトに共通する3つの最重要ポイントを紹介してきましたが、この中でも一番大切なのは3つめで紹介した「やってみる」ということです。

生成AIは実際に使ってみなければわからない部分が多いため、プロジェクト設計の段階で入念な準備に工数を割いても、思ったような成果にならないことが起こり得ます。

検討/準備期間が長期に及んでしまうことで、多くの会議や社内への根回し、多くの資料作成などに時間を取られてしまうと、それ自体がプロジェクトの成功を阻害する大きな要因のひとつになってしまいます。

繰り返しになりますが
『どれだけ小さくどれだけ早く試行できるか』
が重要なポイントです。
そのためにまず取るべき最初のアクションとしては、

・無料で公開されている生成AIツールやデモを試してみる
・生成AIの知見や実績のあるパートナーを見つけて相談する

などが確実かつ有効です。

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