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初めてのひとりお籠り日記④

腕に、紙飛行機のタトゥーシールを貼ってみた。

白い光の中を、それぞれのスピードで、風の赴くままに飛んでいくように見えて、結構気に入った。

途中で思いもよらず何処かに引っかかってしまうかもしれないし、地面に落っこちてしまうかもしれない。

自分の意思ではどうにもならないこと、変えられないことは世の中には当たり前にある。
そんな世の中で生きていると、理不尽だと思うことも、自分の無力さを痛感することも、どうしてもあるのだ。

今私は、何処かの木の枝に引っかかってしまっている。

「遠いところまで飛び続けてやる」

そう心に誓って実家を飛び出して、今まで必死になって障害物をかわして来たつもりだったが、これは不覚だった。

今、当時の目標とは違って足止めを食らっているけれど、木の枝から見る景色も悪くない。

窓を開けると、風は春の色を少しだけ含んでいてなんだかうきうきしたし、
黄金色のトーストの上でバターがゆっくりと溶けていく様がとても美しく見えた。
温かいカモミールティーを飲んで体がじんわり痺れていく感覚も好きだ。

強い風に吹かれ続けて、周りもろくに見えないままここに飛ばされて来たけれど、こうしていちど一休みしたら、見逃していた素敵なものをたくさん見つけられた。


次にまた強い風が吹いたら、今度はどんな枝に引っかかるのか、どんな地面に落ちてどんな景色を見られるのか、楽しみにして飛ばされていこう。


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