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局所コンパクト空間locally compact spaces

局所コンパクト空間locally compact spaces
 
$${X}$$ を集合として、$${X}$$の部分集合からなる族$${\mathcal{S}}$$ の要素がつぎの3条件を満たしているとする。
(1)$${\phi ,X\in \mathcal{S}}$$
(2)$${\mathcal{S}}$$の任意個の要素の和はまた$${\mathcal{S}}$$に属する
(3)$${\mathcal{S}}$$の有限個の要素の積はまた$${\mathcal{S}}$$に属する
このとき、組$${\left( X,\mathcal{S} \right)}$$は位相空間であるといわれる。$${\mathcal{S}}$$の要素は$${X}$$の開集合と呼ばれる。
位相空間$${X}$$=$${\left( X,\mathcal{S} \right)}$$が局所コンパクトであるとは、各点$${p\in X}$$ について、$${p\in W}$$ かつ$${\bar{W}}$$ がコンパクトとなる$${W\in \mathcal{S}}$$があることである。たとえば、$${{{\mathbb{R}}^{3}}}$$ は局所コンパクト空間である。$${{{\mathbb{R}}^{3}}}$$はコンパクトではないが、それに含まれる閉球はコンパクトである。近視眼な地球人が自分の住んでいる近所だけを見て3次元宇宙をコンパクトと錯覚するようなものである。$${X}$$がハウスドルフ空間である場合、局所コンパクト空間は別のとらえられ方がされる。$${{{\mathbb{R}}^{3}}}$$ における球面
$${{{S}^{2}}=\left\{ x=\left( {{x}_{0}},{{x}_{1}},{{x}_{2}} \right):x_{0}^{2}+x_{1}^{2}+x_{2}^{2}=1 \right\}}$$
はコンパクトである。地図帳は、球面$${{{S}^{2}}}$$ の1点(たとえば、北極)をのぞいたものと、平面$${{{\mathbb{R}}^{2}}}$$が同相であることを応用している。コンパクトではない局所コンパクトハウスドルフ空間である$${{{\mathbb{R}}^{2}}}$$ に$${{{\mathbb{R}}^{2}}}$$に含まれない一点$${\infty}$$ を付け加えたものはコンパクトな$${{{S}^{2}}}$$と同相になる。記号で書くと
$${{{\mathbb{R}}^{2}}\cup \left\{ \infty \right\}\cong {{S}^{2}}}$$となる。一般に
$${{{\mathbb{R}}^{n}}\cup \left\{ \infty \right\}\cong {{S}^{n}}}$$,
$${{{S}^{n}}=\left\{ x :x_{0}^{2}+x_{1}^{2}+\cdots +x_{n}^{2}=1 \right\}}$$
$${x=\left( {{x}_{0}},{{x}_{1}},\cdots ,{{x}_{n}} \right)}$$
one-point compactification と呼ばれることもある。経験的にだが、局所コンパクトな空間というとらえがたい概念をこの特殊例に当てはめて考えるとその姿をかいま見ることができる。
つかう事実:(たいていの教科書に載っている)
事実A)ハウスドルフ空間のコンパクトな部分集合は閉集合である。
事実B)コンパクト位相空間の閉部分空間はコンパクトである。
事実C)コンパクトな部分集合たちの有限和はコンパクトである
事実D)コンパクト集合は連続写像でコンパクト集合に写される

定理:$${X}$$を局所コンパクトハウスドルフ空間とし、$${{{X}^{*}}=X\cup \left\{ \infty \right\}}$$ とする。ただし、$${\infty}$$ は$${X}$$ に属さない点。 このとき、$${\left( {{X}^{*}},\mathcal{T} \right)}$$ はコンパクトハウスドルフ空間になる。
ここで、$${{{X}^{*}}}$$ の位相$${\mathcal{T}}$$は、$${X}$$を$${{{X}^{*}}}$$の部分空間として、相対位相の意味で$${X}$$ の開集合になるものをとる。すなわち$${X\cap V}$$, $${V\in \mathcal{T}}$$ なるようにできる。位相$${\mathcal{T}}$$は同相を除いて一意にさだまる。
 

証明)$${{{X}^{*}}}$$ の部分集合族$${\mathcal{T}}$$は次のtype1,2のいずれかをみたす$${U}$$全体で成り立っている。
(type1)$${U\in \mathcal{S}}$$。すなわち、$${U}$$は$${X}$$ の開集合である。
(type2)$${\infty \in U}$$かつ$${X\backslash U}$$ が$${X}$$ のコンパクトな部分集合である。
(type2)の場合、事実Aより$${X\backslash U}$$は$${X}$$ の閉集合、すなわち、$${X\cap U}$$ は$${X}$$ の開集合である。結局、$${X\cap U}$$($${U\in \mathcal{T}}$$)全体が$${X}$$ の開集合全体になっていることがわかる。
族$${\mathcal{T}}$$が$${Y}$$の位相であることを示す。
$${\phi \in \mathcal{S}}$$よりtype1 の意味で $${\phi \in \mathcal{T}}$$がなり立つ。$${~{{X}^{*}}\in \mathcal{T}}$$は$${X\in \mathcal{S}}$$なので、type2からとった任意の$${U}$$ をつかって、$${~{{X}^{*}}=X\cup U}$$ より成り立つ。
つぎに任意の和集合、と有限積集合が族$${\mathcal{T}}$$にはいることを示す。
$${{{\left\{ {{U}_{\alpha }} \right\}}_{\alpha \in \Lambda }}\subset \mathcal{T}}$$、$${U=\bigcup\nolimits_{\alpha \in \Lambda }{{{U}_{\alpha }}}}$$とする。
case1)すべての$${\alpha \in \Lambda}$$で$${{{U}_{\alpha }}\in \mathcal{S}}$$である場合type1意味で $${U\in \mathcal{T}}$$がなりたつ。
case2)ある$${{{\alpha }_{0}}\in \Lambda}$$で$${\infty \in {{U}_{{{\alpha }_{0}}}}}$$ の場合、$${X\backslash {{U}_{{{\alpha }_{0}}}}}$$ は$${X}$$ でコンパクトしたがって、$${X\backslash U=\left( X\backslash {{U}_{{{\alpha }_{0}}}} \right)\cap \left( \bigcap\limits_{\alpha \in \Lambda }{\left( X\backslash {{U}_{\alpha }} \right)} \right)}$$は、$${X\backslash {{U}_{{{\alpha }_{0}}}}}$$がコンパクト、$${\left( \bigcap\limits_{\alpha \in \Lambda }{\left( X\backslash {{U}_{\alpha }} \right)} \right)}$$は$${X}$$ の閉集合であるから、事実Bより、コンパクトである、したがってtype2に該当する。
case1),case2)いずれの場合も$${{{\left\{ {{U}_{\alpha }} \right\}}_{\alpha \in \Lambda }}\subset \mathcal{T}}$$のとき、$${U=\bigcup\nolimits_{\alpha \in \Lambda }{{{U}_{\alpha }}}}$$ は$${\mathcal{T}}$$に属することが示せた。
つぎに、$${{{U}_{1}},{{U}_{2}},\cdots ,{{U}_{n}}}$$ が$${\mathcal{T}}$$に属するとき、$${U={{U}_{1}}\cap {{U}_{2}}\cap \cdots \cap {{U}_{n}}}$$とおく。
すくなくともどれかひとつの$${{{U}_{1}},{{U}_{2}},\cdots ,{{U}_{n}}}$$が$${\infty}$$を要素としないとき、$${U}$$ は$${X}$$ の開集合すなわちtype1の意味で$${\mathcal{T}}$$に属する。$${{{U}_{1}},{{U}_{2}},\cdots ,{{U}_{n}}}$$のすべてが$${\infty}$$ を要素としている場合は
$${X\backslash U=\left( X\backslash {{U}_{1}} \right)\cup \left( X\backslash {{U}_{2}} \right)\cup \cdots \cup \left( X\backslash {{U}_{n}} \right)}$$はコンパクト集合の有限和であるから事実Cによりコンパクト。したがってtype2 の意味で$${\mathcal{T}}$$に属する。
これで。$${\mathcal{T}}$$が$${{{X}^{*}}}$$ の位相を決めることがわかった。
つぎに$${{{X}^{*}}}$$ がコンパクトであることを示す。$${{{\left\{ {{V}_{\alpha }} \right\}}_{\alpha \in A}}\subset \mathcal{T}}$$ を$${{{X}^{*}}}$$ の開被覆とする。この場合ある$${{{\alpha }_{0}}}$$ があり、$${\infty \in {{V}_{{{\alpha }_{0}}}}}$$ となっていなくてはならない。$${{{\left\{ X\cap {{V}_{\alpha }} \right\}}_{\alpha \in A}}}$$は$${X}$$ の開被覆
であるが、それは$${X}$$ のコンパクト集合$${{{X}^{*}}\backslash {{V}_{{{\alpha }_{0}}}}}$$の開被覆でもある。したがって、$${A}$$ のなかから有限個の$${{{\alpha }_{1}},{{\alpha }_{2}},\cdots {{\alpha }_{n}}}$$ を選んで
$${{{X}^{*}}\backslash {{V}_{{{\alpha }_{0}}}}\subset {{V}_{{{\alpha }_{1}}}}\cup {{V}_{{{\alpha }_{2}}}}\cup \cdots \cup {{V}_{{{\alpha }_{n}}}}}$$とできる。したがって、
$${{{X}^{*}}\subset {{V}_{{{\alpha }_{0}}}}\cup {{V}_{{{\alpha }_{1}}}}\cup {{V}_{{{\alpha }_{2}}}}\cup \cdots \cup {{V}_{{{\alpha }_{n}}}}}$$
となるから、$${{{X}^{*}}}$$ がコンパクトであることがいえた。
つぎに$${{{X}^{*}}}$$ がハウスドルフ空間であることを示そう。分離したい2点が$${X}$$ に属している場合はあきらかだから、$${x\in X}$$ に対して、$${X}$$ の開集合$${U}$$と$${{{X}^{*}}}$$ の開集合 $${V}$$で$${U\cap V=\phi}$$, $${x\in U}$$,$${\infty \in V}$$となるものの存在を言えば十分である。ここで、局所コンパクトの定義を使う。$${x}$$ の近傍$${U}$$ で$${\bar{U}}$$ がコンパクトであるものをとる。そして、$${V={{X}^{*}}\backslash \bar{U}}$$ とする。$${U,V}$$は$${{{X}^{*}}}$$の開集合で$${x}$$ と$${\infty}$$ を分離している。このようにして$${\left( {{X}^{*}},\mathcal{T} \right)}$$ はコンパクトハウスドルフ空間となった。
 
このような拡張が同相を除いて一意であることは次の重要な定理からの帰結である。
 

定理:コンパクトな空間$${X}$$ からハウスドルフ空間$${Y}$$ の上への1対1連続写像$${f}$$ があるとき、$${X}$$ と$${Y}$$ は同相である。


証明)$${Y}$$の開集合$${V}$$に対して、$${{{f}^{-1}}\left( V \right)}$$ は$${X}$$ の開集合となるのは、連続の定義によるが、定理を言うためには$${X}$$ の開集合$${U}$$ が$${Y}$$ の開集合$${f\left( U \right)}$$ となることを示す必要がある。閉集合$${X\backslash U}$$ は事実Bよりコンパクトである。したがって事実Dより$${f\left( X\backslash U \right)}$$もコンパクトである。事実Aより$${f\left( X\backslash U \right)}$$は閉集合がいえる。しかし、$${f\left( X\backslash U \right)=f\left( X \right)\backslash f\left( U \right)=Y\backslash f\left( U \right)}$$
と書いてみれば$${f\left( U \right)}$$ が開集合であることがわかる。証明おわり
 
この定理は、コンパクトとハウスドルフ性がいかに親密に結びついているかを示している。これを頭に刻んでおくだけで秘密の花園を垣間見れた気がする。
 
 
 

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