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第2共役空間

第2共役空間
 
$${X}$$ を係数体$${F=\mathbb{R}}$$または$${F=\mathbb{C}}$$ とする線形ノルム空間とする。$${a\in F}$$は絶対値$${\left| a \right|}$$ をノルムとするバナッハ空間である。$${X}$$ から$${F}$$ への有界線形汎関数の全体$${B\left( X,F \right)}$$ を$${X}$$の共役空間と呼び、$${{{X}^{*}}}$$ と書く。$${F}$$ が完備であるおかげで$${{{X}^{*}}}$$はバナッハ空間となる。$${{{X}^{*}}}$$の点を$${{{x}^{*}},{{y}^{*}},{{z}^{*}}}$$$${\cdots }$$ などと表す。
例)$${X=\left\{ x:x=\left( {{\xi }_{1}},{{\xi }_{2}},\cdots \right) \right\}}$$の場合。
$${X=c}$$ ($${\lim {{\xi }_{n}}}$$ が存在する)、
$${X={{c}_{0}}}$$( $${\lim {{\xi }_{n}}=0}$$となる)、
$${X={{l}^{p}},1\le p<\infty }$$( $${\sum\limits_{k=1}^{\infty }{{{\left| {{\xi }_{k}} \right|}^{p}}<\infty }}$$)
$${X={{l}^{\infty }}}$$( $${\left\{ {{\xi }_{k}} \right\}}$$ が有界)
のそれぞれで、
$${{{\left( c \right)}^{*}}={{\left( {{c}_{0}} \right)}^{*}}={{l}_{1}}}$$,
$${{{\left( {{l}_{p}} \right)}^{*}}={{l}_{q}}}$$,($${\frac{1}{p}+\frac{1}{q}=1}$$,$${1< p< \infty }$$ ),
$${{{\left( {{l}_{\infty }} \right)}^{*}}={{l}_{1}}}$$,
$${{{\left( {{l}_{1}} \right)}^{*}}\ne {{l}_{\infty }}}$$,
など、ほかにもたくさん知られている。
$${X,Y}$$ というノルム空間があり、$${X}$$ から$${Y}$$ への上への1対1線形作用素$${T}$$が存在して、$${\left\| Tx \right\|=\left\| x \right\|,x\in X}$$ を満足するとき、$${X}$$ と$${Y}$$ はノルム空間として同型であるという。$${X,Y}$$ という2つのノルム空間がノルム空間として同型のときそれらを同一視する。$${X\simeq Y}$$ とかくべきだが$${X=Y}$$とかいてしまう。上のばあい
$${Y=F}$$ であり、$${{{\left( {{l}_{p}} \right)}^{*}}\simeq {{l}_{q}}}$$ とかくべきところ$${{{\left( {{l}_{p}} \right)}^{*}}={{l}_{q}}}$$ と書いた。
汎関数は作用素の特別な場合であり、$${{{x}^{*}}\in {{X}^{*}}}$$ のノルムは
$${\left\| {{x}^{*}} \right\|=\underset{\left\| x \right\|\le 1}{\mathop{\sup }}\,\left| {{x}^{*}}\left( x \right) \right|}$$で定義される。
Hahn-Banachの定理より次が証明される。
定理A $${x\in X}$$ に対して、
$${\left\| x \right\|=\underset{\left\| x* \right\|\le 1}{\mathop{\sup }}\,\left| {{x}^{*}}\left( x \right) \right|}$$

この定理から、すべての$${{{x}^{*}}\in {{X}^{*}}}$$に対して$${{{x}^{*}}\left( x \right)=0}$$ならば$${x=0}$$ がいえる。
 $${X}$$がノルム空間のとき、$${{{X}^{*}}}$$の共役空間$${{{\left( {{X}^{*}} \right)}^{*}}}$$ を$${{{X}^{**}}}$$ であらわす。$${x\in X}$$があたえられたとき、$${{{x}^{*}}\in {{X}^{*}}}$$ を変数とする$${{{x}^{*}}\left( x \right)}$$ は$${{{X}^{*}}}$$で定義される1つの有界線形汎関数と考えることができる。そこで、$${{{x}^{**}}\left( {{x}^{*}} \right)={{x}^{*}}\left( x \right),{{x}^{*}}\in {{X}^{*}}}$$
( $${{{x}^{**}}\left( {{y}^{*}} \right)={{y}^{*}}\left( x \right),{{y}^{*}}\in {{X}^{*}}}$$)
とおくと、$${{{x}^{**}}\in {{X}^{**}}}$$ が$${{X}^{*}}$$上の有界線形汎関数になることが示される。実際、
$${x_{1}^{*},x_{2}^{*}\in {{X}^{*}}}$$ 、$${\alpha \in F}$$ のとき、
$${{{x}^{**}}\left( x_{1}^{*}+x_{2}^{*} \right)=\left( x_{1}^{*}+x_{2}^{*} \right)\left( x \right)=}$$$${\left( x_{1}^{*} \right)\left( x \right)+\left( x_{2}^{*} \right)\left( x \right)={{x}^{**}}\left( x_{1}^{*} \right)+{{x}^{**}}\left( x_{2}^{*} \right)}$$
かつ
$${\left| {{x}^{**}}\left( {{x}^{*}} \right) \right|=\left| {{x}^{*}}\left( x \right) \right|\le \left\| x \right\|\left\| {{x}^{*}} \right\|}$$
が成立する。したがって
$${\left\| {{x}^{**}} \right\|=\underset{\left\| x* \right\|\le 1}{\mathop{\sup }}\,\left\| {{x}^{**}}\left( {{x}^{*}} \right) \right\|\le \left\| x \right\|}$$。
さらに上の定理Aより
$${\left\| x \right\|=\underset{\left\| {{x}^{*}} \right\|\le 1}{\mathop{\sup }}\,\left| {{x}^{*}}\left( x \right) \right|}$$。
であったからこの不等式は等式となり、$${\left\| {{x}^{**}} \right\|=\left\| x \right\|}$$が得られる。$${x\in X}$$ に$${{{x}^{**}}\left( {{y}^{*}} \right)={{y}^{*}}\left( x \right),{{y}^{*}}\in {{X}^{*}}}$$で定義される$${{{x}^{**}}\in {{X}^{**}}}$$を対応させる作用素を$${X}$$ から$${{{X}^{**}}}$$ への自然な写像といい$${J}$$であらわす。$${J}$$は$${X}$$から$${{{X}^{**}}}$$への線形作用素である。$${\left\| {{x}^{**}} \right\|=\left\| x \right\|}$$より$${\left\| Jx \right\|=\left\| x \right\|}$$ であることから、$${J}$$が1対1がわかり次の定理を得る。

定理B ノルム空間$${X}$$ は、自然な写像$${J}$$ により、$${{{X}^{**}}}$$の線形部分空間$${Ran\left( J \right)}$$ ($${J}$$の値域 )と同型である。上の同一視$${Ran\left( J \right)=X}$$より、$${X\subset {{X}^{**}}}$$と考えることができる。
 
定義:$${X}$$が回帰的reflexiveであるとは、$${Ran\left( J \right)={{X}^{**}}}$$すなわち、$${{{X}^{**}}=X}$$となることである。換言すれば、任意の$${{{x}^{**}}\in {{X}^{**}}}$$に対して、$${{{x}^{**}}\left( {{x}^{*}} \right)={{x}^{*}}\left( x \right)\,\,({{x}^{*}}\in {{X}^{*}})}$$となる$${x}$$ が存在するとき$${X}$$は回帰的reflexiveである。
 
つぎの定理を証明しよう。
 
定理C 回帰的なバナッハ空間$${X}$$の閉部分空間$${M}$$ は回帰的である。

証明;$${M}$$はそれ自身バナッハ空間である。
$${M}$$ の共役空間を$${{M}^{*}}$$、$${{M}^{*}}$$ の共役空間を$${{M}^{**}}$$とかく。
$${{{m}^{*}}\left( x \right)={{x}^{*}}\left( x \right),x\in M}$$とおく。
$${{{m}^{*}}}$$ は$${{{x}^{*}}}$$ の$${M}$$への制限となっている。$${\left\| {{m}^{*}} \right\|=\underset{\left\| x \right\|\le 1,x\in M}{\mathop{\sup }}\,\left| {{m}^{*}}\left( x \right) \right|\le \underset{\left\| x \right\|\le 1,x\in X}{\mathop{\sup }}\,\left| {{x}^{*}}\left( x \right) \right|=\left\| {{x}^{*}} \right\|}$$
であるから、$${{{x}^{*}}\in {{X}^{*}}}$$ に上のようして得られる$${{{m}^{*}}\in {M}^{*}}$$ を対応させる作用素
$${T:{X}^{*}\to {M}^{*}}$$
は有界線形作用素
($${{{m}^{*}}=T{{x}^{*}}}$$ 、$${\left\| {{m}^{*}} \right\|=\left\| T{{x}^{*}} \right\|\le \left\| {{x}^{*}} \right\|}$$、$${T{{x}^{*}}\left( x \right)={{x}^{*}}\left( x \right),x\in M}$$)
である。一方Hahn-Banachの定理より、任意の$${{{m}^{*}}\in {M}^{*}}$$に対して、
$${{{x}^{*}}\left( x \right)={{m}^{*}}\left( x \right),x\in M}$$、
$${\left\| {{x}^{*}} \right\|=\left\| {{m}^{*}} \right\|}$$ となる$${{{x}^{*}}\in {{X}^{*}}}$$が存在する。
($${{{x}^{*}}}$$は$${{{m}^{*}}}$$ のノルムを変えない拡張になっている)。ゆえに、$${T:{X}^{*}\to {M}^{*}}$$は上への写像である。いま、$${{{m}^{**}}\in {{M}^{**}}}$$に対して、
$${{{x}^{**}}\in {{X}^{**}}}$$を
$${{{x}^{**}}\left( {{x}^{*}} \right)={{m}^{**}}\left( T{{x}^{*}} \right),({{x}^{*}}\in {{X}^{*}})}$$
と定義する。$${X}$$が回帰的であるから、
$${{{x}^{**}}\leftrightarrow x}$$ となる$${x\in X}$$ で
$${{{x}^{**}}\left( {{x}^{*}} \right)={{x}^{*}}\left( x \right)({{x}^{*}}\in {{X}^{*}})}$$
を満たすものがある。以上のことから、
$${{{m}^{**}}\in {{M}^{**}}}$$に対して
$${{{m}^{**}}\left( T{{x}^{*}} \right)={{x}^{*}}\left( x \right)({{x}^{*}}\in {{X}^{*}})}$$をみたす$${x\in X}$$が存在することがわかった。
 $${{{m}^{*}}\left( x \right)=\left( T{{x}^{*}} \right)\left( x \right)={{x}^{*}}\left( x \right),x\in M}$$
であった。いま、$${x\in M}$$ を仮定すると、$${{{m}^{**}}\left( T{{x}^{*}} \right)={{x}^{*}}\left( x \right)({{x}^{*}}\in {{X}^{*}})}$$は、$${x=m}$$とおいて$${{{m}^{**}}\left( {{m}^{*}} \right)={{m}^{*}}\left( m \right)({{x}^{*}}\in {{X}^{*}})}$$をみたす。つまり、任意の$${{{m}^{**}}}$$に対して$${m\in M}$$ が存在して$${{{m}^{**}}\left( {{m}^{*}} \right)={{m}^{*}}\left( m \right)({{x}^{*}}\in {{X}^{*}})}$$となっている。これは$${M}$$ が回帰的ということの定義である。それゆえ、$${x\in M}$$なることを示せばよい。
 いま、$${x\notin M}$$とすると、$${{{x}^{*}}\left( M \right)=0}$$ 、$${{{x}^{*}}\left( x \right)=1}$$となる$${{{x}^{*}}\in {{X}^{*}}}$$ が存在する(Hahn-Banachの定理から出てくる命題)。
上のほうにある式$${\left( T{{x}^{*}} \right)\left( z \right)={{x}^{*}}\left( z \right),x\in M}$$において、$${{{x}^{*}}\left( M \right)=0}$$より、$${T{x}^{*}=0}$$ となる。他方で、$${x}$$ は$${{{m}^{**}}\left( T{{x}^{*}} \right)={{x}^{*}}\left( x \right)({{x}^{*}}\in {{X}^{*}})}$$をみたすものであった。これから
$${0={{m}^{**}}\left( 0 \right)={{m}^{**}}\left( T{{x}^{*}} \right)={{x}^{*}}\left( x \right)=1}$$という矛盾が出てくる。$${x\notin M}$$がいけなかった。つまり、$${x\in M}$$が示され、証明が終わる。

 定理D:$${X}$$ をバナッハ空間とする。このとき、
$${X}$$が回帰的$${\Leftrightarrow }$$$${{X}^{*}}$$が回帰的

証明)$${\Rightarrow }$$
$${X}$$が回帰的とする。$${{{J}_{1}}}$$ を$${{{X}^{*}}}$$ から$${{{X}^{***}}}$$への
$${{{J}_{1}}{{x}^{*}}\left( {{x}^{**}} \right)={{x}^{**}}\left( {{x}^{*}} \right)}$$, $${{{x}^{**}}\in {{X}^{**}}}$$
で定義される自然な写像とする。$${{{X}^{***}}}$$から任意の要素$${{x}^{***}}$$ をえらぶ。$${\left\| Jx \right\|=\left\| x \right\|}$$より、$${{{x}^{***}}\left( Jx \right)}$$ は$${X}$$ 上の有界な線形汎関数である。したがって、ある$${{{x}^{*}}\in {{X}^{*}}}$$ が存在して$${{{x}^{**}}\left( Jx \right)={{x}^{*}}\left( x \right)}$$,$${x\in X}$$が成り立っている。他方$${X}$$が回帰的とした仮定から、
$${{{x}^{*}}\left( x \right)=Jx\left( {{x}^{*}} \right)}$$,$${x\in X}$$
結局
$${{{x}^{***}}\left( Jx \right)=Jx\left( {{x}^{*}} \right)}$$,$${x\in X}$$
となった。これは、
$${{{x}^{***}}\left( {{x}^{**}} \right)={{x}^{**}}\left( {{x}^{*}} \right)}$$,$${{{x}^{**}}\in {{X}^{**}}}$$
ともみなせる。($${Jx={{x}^{**}}}$$ としてみよ)
$${{{J}_{1}}{{x}^{*}}\left( {{x}^{**}} \right)={{x}^{**}}\left( {{x}^{*}} \right)}$$ , $${{{x}^{**}}\in {{X}^{**}}}$$
とみくらべると、$${{{J}_{1}}{{x}^{*}}={{x}^{***}}}$$であり、$${{{x}^{***}}}$$は$${{{X}^{***}}}$$から任意に選んだ要素であったことをかんがえれば、$${{{X}^{*}}={{X}^{***}}}$$つまり、$${{{X}^{*}}}$$ が回帰的であることを示している。
証明$${\Leftarrow }$$
$${{{X}^{*}}}$$が回帰的であるを仮定する。$${RanJ}$$ が$${{{X}^{**}}}$$で閉部分空間であることを示そう。$${J{{x}_{n}}\to {{x}^{**}}}$$ とする。収束列はコーシー列であるから$${\left\{ J{{x}_{n}} \right\}}$$はコーシー列 である。$${\left\| {{x}_{n}}-{{x}_{m}} \right\|=\left\| J{{x}_{n}}-J{{x}_{m}} \right\|\to 0}$$より、$${\left\{ {{x}_{n}} \right\}}$$そのものがコーシー列であることがわかる。$${X}$$ はバナッハ空間であるから$${{{x}_{n}}\to x}$$ 。そして、$${J{{x}_{n}}\to Jx}$$。上とあわせれば$${{{x}^{**}}=Jx\in RanJ}$$となり $${RanJ}$$ が$${{{X}^{**}}}$$ で閉部分空間であることがわかった。上でしめした十分条件
($${X}$$が回帰的$${\Rightarrow }$$ $${{X}^{*}}$$が回帰的)
の証明をそのまま使って言える命題
($${{{X}^{*}}}$$が回帰的$${\Rightarrow }$$$${{{X}^{**}}}$$は回帰的)
より、$${{{X}^{**}}}$$は回帰的である。したがって回帰的なバナッハ空間の閉部分空間も回帰的になるという定理Cより$${Ran\left( J \right)=X}$$は回帰的であることが示された。
証明終わり。
 
竹ノ内修著函数解析朝倉書店では、
$${{{\left( {X}^{*} \right)}^{**}}={{\left( {{X}^{**}} \right)}^{*}}}$$ において、
$${{{X}^{**}}=X}$$ なら、
$${{{\left({X}^{*} \right)}^{**}}={{\left( X \right)}^{*}}={{X}^{*}}}$$
したがって、$${X}$$ が回帰的$${\Rightarrow }$$$${{X}^{*}}$$が回帰的
と書いてある。
コルモゴロフ:フォーミン函数解析の基礎には、
モスコーの数学者ア・イ・ブレスネルは、任意のノルム空間$${R}$$ については2つの場合
$${R}$$は回帰的、
$${R={{R}^{**}}={{R}^{****}}=\cdots }$$
$${{{R}^{*}}={{R}^{***}}=\cdots }$$
であるか、または
$${R,{{R}^{*}},{{R}^{**}},\cdots }$$は悉く異なる
かのどちらかであることを証明したとある。
むかし、C言語を勉強してた時、変数のおかれた番地をポインタ*でさすとき、ポインタのポインタ**が出てきて混乱したことを思い出した。
 

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