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絵のない絵本

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絵がない世界の絵本。 この絵本の世界はだれかの中で生まれ だれかの中で育つのでしょう。 目に見えるだけの世界では味わえない世界を お楽しみください。
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2020年3月の記事一覧

「わからないわよね」

ころり ころり とわらうおんな

「……あんたのそばは なぜか ここちいい」

ぶっきらぼうな ことば
でも、すこしだけ ひとみが やさしい

「そう、こうえい だわ」

ひとりと いっぴきは ひとのいないもりで おだやかに すごした。

臥待月
4年前

せかいの ちゅうしんには かけがえのない ひとがいる

「でもね、ひとり じゃないのよ」

おんなは いつくしむ
おおかみの しらない あたたかさ

「……わからない」

ふふ、とわらった おんなは けつやのいい おおかみを なでた

臥待月
4年前
1

くろいおおかみの ことばに おんなは めを おおきくして おどろいた

「……へんなひとね」

あかい うつくしい ひとみが ふしぎそうにまたたいた

「あんたは ずっと ひとりだった のか? 」

「えぇ、もちろん」

ひとりでいる でも ひとりじゃない

臥待月
4年前
1

だれよりも じゆうで
だれよりも さみしそうな
おんなは いつも ほほえんでいる

「くろいおおかみさん きみは じゆうだ
どこへいっても いいんだよ」

すこし こまったように わらう おんな

「すきに していいのだから おれは ここにいる」

ともに いたいと おもった

臥待月
4年前

いてついた こころの おおかみは
すこし まぶしそうに おんなをみた
「……あんた ふしぎだな」
「あら わたしはふしぎではないわ」
ただ いきているのと どうじに しんでいるだけ だもの
と ほほえんだ

臥待月
4年前

「とても しずかだな」
めをほそめた おおかみは つぶやいた
「そうね でも わたしのまわりには きもちがあるのよ」
きぎのさえずり どうぶつたちのしせん くうきのこえ
しぜんの きもち がそこにはあった

臥待月
4年前