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絵のない絵本

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絵がない世界の絵本。 この絵本の世界はだれかの中で生まれ だれかの中で育つのでしょう。 目に見えるだけの世界では味わえない世界を お楽しみください。
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記事一覧

「わからないわよね」

ころり ころり とわらうおんな

「……あんたのそばは なぜか ここちいい」

ぶっきらぼうな ことば
でも、すこしだけ ひとみが やさしい

「そう、こうえい だわ」

ひとりと いっぴきは ひとのいないもりで おだやかに すごした。

臥待月
4年前

せかいの ちゅうしんには かけがえのない ひとがいる

「でもね、ひとり じゃないのよ」

おんなは いつくしむ
おおかみの しらない あたたかさ

「……わからない」

ふふ、とわらった おんなは けつやのいい おおかみを なでた

臥待月
4年前
1

くろいおおかみの ことばに おんなは めを おおきくして おどろいた

「……へんなひとね」

あかい うつくしい ひとみが ふしぎそうにまたたいた

「あんたは ずっと ひとりだった のか? 」

「えぇ、もちろん」

ひとりでいる でも ひとりじゃない

臥待月
4年前
1

だれよりも じゆうで
だれよりも さみしそうな
おんなは いつも ほほえんでいる

「くろいおおかみさん きみは じゆうだ
どこへいっても いいんだよ」

すこし こまったように わらう おんな

「すきに していいのだから おれは ここにいる」

ともに いたいと おもった

臥待月
4年前

いてついた こころの おおかみは
すこし まぶしそうに おんなをみた
「……あんた ふしぎだな」
「あら わたしはふしぎではないわ」
ただ いきているのと どうじに しんでいるだけ だもの
と ほほえんだ

臥待月
4年前

「とても しずかだな」
めをほそめた おおかみは つぶやいた
「そうね でも わたしのまわりには きもちがあるのよ」
きぎのさえずり どうぶつたちのしせん くうきのこえ
しぜんの きもち がそこにはあった

臥待月
4年前

おんなのいるせかいは とてもしずかだった きぎが ある かわが ながれる かぜが ふく それだけでも おと はする なのに、おんなのまわりは おと がしなかった

くろいおおかみの けいやくを
うわがきして くろいおおかみに
じゆう をあたえた

「……じゆうというのは わたしにひっついていることではないわよ?」

臥待月
6年前

ないはずの
「こころ」というものが うごいた

「おや、わたしとおなじ ひとみ なんだね」

おんなは とても つよかった

臥待月
6年前

「のろいをはこぶ くろいおおかみ
わたしに なにかごようかしら?」

ばらのように つきのように
ほほえむおんな

くろいおおかみの しょうたいを
しっていても おそれず ほほえむ
きじょうで つよいおんな

臥待月
6年前

くろいおおかみとは
すこしちがう あかいひとみ
こきゅうをわすれるほど
みいっていた

臥待月
6年前

「はじめまして」
すずのなるような こえ

「なにか ごよう?
しっこくの おおかみさん」
ほほえんだおんなに
くろいおおかみは
おとこの めいれいをわすれた

臥待月
6年前

くろいおおかみを めのまえにして
さけんだり おびえたり おこったり
にんげんは とてもさわがしい

でも いま めのまえにいる
くろかみのおんなは ちがっていた

おびえも いかりも なにもない
ただ しずかに くろいおおかみに ほほえんだ

臥待月
6年前

もりのなか ひとり すんでいる くろかみのうつくしいおんなは とてもしずかだった