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設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#019:参加表明を求める是非

公告と同時に参加表明の受付を始めるプロポーザルは少なくありません。ですが、そもそもこの参加表明の受付に意味はあるでしょうか。あらためて考えてみましょう。

参加表明を求める理由は主に2点と思います。1点目はプロポーザルが無事成立する保障を得るため、いわば安心感のためです。最低でも数者(複数者)、できれば10者以上の参加表明があれば、競争性がある形でプロポーザルが行われることが保障される見込みが高く、担当者としては安心でしょう。その心理はよくわかります。
2点目は参加表明の受付をもって参加資格の確認を行い、実質的な審査を伴うことがあるためです。正直、この意義はよくわかりません。実際、参加表明での審査は非常に難しくないでしょうか。

さて、この2点には合理的な理由が本当にあるでしょうか。まず1点目ですが、そもそも参加資格をむやみに厳しくしなければ、参加者はほぼ必ず集まります。良くも悪くもそれくらい公共建築の設計(者)プロポーザルには関心が高いものです。
そして、それ以前に参加表明を受け付けるとその処理に行政側の手間が発生しませんか。たとえば、20者から参加表明があると想像してみてください。参加表明書類が1式で3枚(A4)であっても60枚もの確認が発生します。
1者の確認をダブルチェックで行うのにさすがに20分程度はかけるとします。3者の処理をするのに60分、1時間かかります。20者分となると、それだけで1日を要します。この時間の使い方、行政コストのかけ方は生産的でしょうか。

生産性のある仕事なのか?という問いは設計者側にも言えます。公告では提案課題が示されているのに、それに向き合う前に書類作成に追われることになります。書類作成に専念できるスタッフがいる中規模以上の設計事務所ならともかく、数名のアトリエ系事務所には大きな負担です。公正な競争を阻む要因に見えませんか。参加表明は出す側も出される側も生産的ではないのです。

以上を踏まえると、参加表明を求める是非の結論は明らかです。プロポーザルの始まりにあたって、まず参加表明の提出を求めるのは止めましょう。参加者がおらず、プロポーザルが不成立に終わる恐れを感じるなら、プロポーザルの条件を見直しましょう。参加者の挑戦心を高めるプロポーザルを設計すれば、意志も意欲もある挑戦者は必ず現れます。

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