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スピンのある本、無い本

2021年4月に膵臓がんと診断された筆者の、2021年5月から2021年10月4日の日記。筆者は2021年10月13日に他界されており、人って亡くなる9日前まで書くことができるんだ、それってすごいことかもしれないと思った。逆に作家だったとしても、書けるのはそこまでなんだと感じる人もいるかもしれない。
いずれにしても、私たちには本当には知りえぬ場所の話。

著者とパートナーの方の、現実を悲しみながらも思いやり合って生きる姿が目に浮かんでくる。
私たちの多くは、余命半年と言われたら目の前のどんな人とでも素晴らしいパートナー同士になれるのではないか。お互いの力によって。
本当はみんな、そういう状態なのにね…と思う。半年後に生きてる保証なんて本当は誰も手にしていないのに。

この本にはスピン(紐のしおり)が付いている。私はかなり一気にこの本を読んでしまって(一気に読みたくなる本だと思います)スピンを有効活用しなかったのだけど、一方スピンが無い本で、読むのにめちゃくちゃ時間がかかって、いつもそのとき手元にある名刺やらチラシやらメモ用紙やらを栞にして半年くらい読み続けてる本もある。
誰がどんな判断でスピンが付けるのか、付けないのかわからないけれど、この本は、最後までだるい、眠い、痛い、そんな身体と向き合いながらそれでも本を読み続けた著者が、どんな人でも少しずつ読めるようにとの図らいなのかもしれないと思うと、なんだか涙が出てきた。

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