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「エリアマネジメント・ケースメソッド Case13 一般社団法人草薙カルテッド ~既存組織のリ・ビルドでまちを変える~」(堀江佑典) (新刊「エリアマネジメント・ケースメソッド」草薙(Case13)のケースから)

 今回は、静岡市の草薙駅周辺地区(Case13:一般社団法人草薙カルテッド)のケースについて、事例執筆者よりまちづくりの裏側をご紹介したいと思います。
5/14以降は、ぜひ本に掲載の事例と合わせてお読みいただけると、より立体的に「街の姿」が見えてくると思います!

 2013年、夏———私が静岡駅から2駅隣のJR草薙駅に初めて降り立ったのは、連日続く猛暑の中でした。
私はまちづくりに関するコンサルタントですので、当然、事前に街の特徴や概況を調べた上で現地に向かいました。

 「草薙」と聞くと、歴史好きの方なら日本武尊伝説で有名な草薙神社、或いは野球好きの方なら草薙球場が思い浮かぶかもしれません。
地図を見ますと、JR草薙駅から少し歩いたところには県立大学があり、美術館や図書館もあり、何より駅前には商店街もあり、後背エリアには住宅地も広がっています。
これだけを聞くと、「資源がいっぱい」と思う方もたくさんいらっしゃることと思います。
学生や文化人が集う文教の街。私も当然そう思っていました。

 しかし、降り立った駅前は、学生もおらず、歴史や文化の薫りすら感じません。
商店街は数店舗営業していましたが、待ち行く人はまばらでした。
商店街の中央に位置する静鉄草薙駅と、JR草薙駅の距離はわずか200m足らずのはずなのに、いわゆる「ハブ感」は皆無。
駅前に小さな喫茶店が1つありましたが、学生やサラリーマンの方のニーズとはちょっと異なるお店でした(ケーキがとても美味しいお店でした)。
駅前に唯一あったコンビニエンスストアを観察していますと、時折サラリーマンの方がコーヒーを買いに来たり、自転車に乗った学生が買い物に来る程度。「人が滞在・滞留する場」はどこにも見当たりませんでした。

 政令指定都市といえども、主要駅から1駅2駅離れれば、その様相は主要駅周辺のそれとはまったく異なるというのは、3大都市圏以外のほとんどの政令指定都市で見られる光景です。
静岡も例に漏れず同様でした。市民の方にとって、草薙にある大学や公益施設は「草薙駅周辺の施設」ではなく、静岡の「おまちから外れた郊外の施設」、というイメージだったのかもしれません。

 そんな街で進められていた再開発事業や駅前再整備の計画。
当然それらは「最小限の整備水準」と「管理しやすさ重視の施設整備」が求められており、「最大限の効果を生む整備」や「管理したくなる施設」といった観点とは全くことなるものでした。

 そのような状況下、若干35~6歳で商店会長を引き継いだ方がのちの「一般社団法人草薙カルテッド」で共同代表を務めることとなる山本さんであり、本書で取り上げさせて頂いた方です。

 本書では、そんな山本さんがエリアマネジメント組織「一般社団法人草薙カルテッド」を組成するまでの軌跡と、本地区のように町内会や商店会といった地縁組織がある中での「エリアマネジメント組織」の役割・位置づけに焦点を当ててご紹介しております。
このような既成市街地かつ中心市街地とも異なる商住一体エリアにおいて一時的な公共投資・民間投資が生まれている中でマネジメントを求められるケースは全国的にも多いのではないでしょうか。
ぜひ本書を見ながら、「自分が山本さんだったら」「自分が町内会長だったら」「自分がその街の住民だったら」と様々立場から「自分事」としてケースメソッド手法によりエリアマネジメントを深堀頂けたら幸いです。

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 最後になりますが、2013年に地域の方・地元県立大学の学生・工学院大学の遠藤研究室と共に街の資源を探すまち歩きを実施した際に参加されていた県立大の学生(地元は静岡県外)が、草薙を好きになり、草薙に住み続けることを決め、静岡市内で就職し、そしてなんと昨年「一般社団法人草薙カルテッド」のスタッフにもなり、先月の4月にオープンした「学生×地域×地元企業をつなぐコラボレーションスペース Takt(タクト)」の運営を任されています。
昨年秋にその元学生さんとお話しした際には「自分のように街とつながる人をもっと増やしたい!」と意気込みを語ってくれました。まちづくりは人づくり、と言いますが、人と人の紡ぎ合い・響き合い(カルテット)こそが街を育て、街を輝かせていくのだなと改めて感じました。
本事掲載の事例執筆にあたっては、山本さんの他、紡ぎ合い・響き合ってきた静岡市職員、地元関係者の方など多くの方にご協力を頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。

5月14日(金)発刊予定 (予約受付中)
エリアマネジメント・ケースメソッド:官民連携による地域経営の教科書
https://amzn.to/3g7igpM

(執筆:堀江佑典)

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