初めて、だと思う。
4時間近く、たっぷりと祖父母の家で過ごしたのは。
何をするでもなく、何か始めたいような、
ただ単にもっと話を聞きたいだけのような。
初めから目的をもたなくてもいいか。
おじーちゃんとおばあちゃんに会いたいなと思った。
いつも乗せられてきた祖父母の家に、
自分の運転で来られたぞ。
いよいよこの道の先だとわかったときのウキウキは
新しい道を発見したときの童心の喜びに似ていた。
もういい歳だよ、私は。
祖父母との会話は心地がよかった。
向こうに見える伐採の作業の現場の人に誤って切られてしまったパイプのこと。
2頭の鹿が植えたばかりの苗を食べてしまうこと。
収穫前のキャベツが割れてしまったこと。
見たことのない模様のカエル。これはひょっとするとガマガエルのちびっこじゃないか?ってこと。
かつて馬を飼っていたこと。
祖父が学校に入る頃にはやめていたこと。
(馬蹄は思っていたより大きく、農作業用の馬っこだったのかもしれない。今度聞いてみる。)
オオタカを見に来る女性のこと。
ミニトマト。貯水タンクから水をひき、ビニルハウス中にわたらせた水道管から水を与えること。
このあたりでは今年はまだ見かけない熊のこと。
でも子熊を見た人があるから、近くにはいただろうということ。
新しい道路が完成するのは来年7月の予定。
代々のお墓を町場に移したのは、それとは関係がないこと。
道ができても、遠くを通りすぎるだけさ。
(どういう脈絡だったかは忘れてしまった)
お宮さん。
今は杉を売っても昔ほど高くないこと。
ツバメが軒下の巣に戻らず、近くの電線からこちらを窺っている。
縁側に私といちほ(28kgのでかい犬)がいるからかな、と聞いたら、どうもちがうようだとすぐ答えてくれたこと。
確かにそのあとすぐに、ツバメは私の頭上の巣に戻り、卵を温めていた。
近所に生まれた4匹の子猫のこと。
この土地は、祖父で4代目だということ。
私が小さい頃、猟犬を何頭か飼っていた家には今は誰も住んでいないということ。
ビニルハウスとビニルハウスの間のパセリ。とっといで。
そう言って、祖母は錆びた包丁を私に手渡した。
裏の青い網は鹿避けが目的であって、その先の畑も祖父母の土地だということ。
でも今はやっていない。
お互いの犬のこと。
ハルちゃんは左の後ろ足をびっこひいている。けど痛くはないみたい。
おじいちゃんはよく冗談を言うのだ。
けれど時々訛りで聞き取ることができない。
カモシカ。
苗を食べたのはシカ。
工事現場へのダンプカーは、お昼時だけ全く通らなくなり静かになること。お互いごはんを食べている。
「新しいどうろ」「古い道」
まだよくわかっていない。
ダムもまだ完成していないこと。
今までの「またね」は、
次会うのはお盆かな?正月かな?元気でね、の「またね」だったけど、
今日はあっけないほどシンプルに「またね」だけで別れた。
仰々しくお礼を何度も口にするのも今日は何か違うと思った。
今度の「またね」は、
またすぐ来るね、だからこれくらいでいいよな。
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