荷重移動の話3【複合方向】

複雑に前後左右にかかる荷重の話の最終章。

前回、前々回の話しに続き、前後、左右、の荷重移動の説明をしたがこれを複合させていくとどうなるだろうか?という疑問に辿りつく。

答えは簡単である、バイク本体にかかる遠心力を打ち消す為に斜め方向に反力が必要となる。

例えば、ブレーキングしながら左コーナーに進入しようとすると、前方向に荷重がかかった状態で右方向へ遠心力が加わる。その遠心力を打ち消す為には左方向へバイクを傾ける必要がある。
更に前方向へ荷重がかかり過ぎない様にブレーキ力を弱める必要と体が「前のめり」にならない様に頭を起こす必要もある。

わかりにくいのでmotoGPライダーのブレーキング画像を貼っておく。

MotoGP コーナー進入時の画像

2台がコーナー進入時にブレーキングで争っている画像だ。乗り方の違いもあるが、イン側に入っている25番はブレーキングにより弱ドリフト状態で右カウンターステアを当て頭を起こしながら左足を出している、何とも奇妙な絵である。

これはまず、強烈な前ブレーキ+リアブレーキにより、前のめりになったバイクへ後ろ側へ荷重を移す為に頭を起こし、前後の荷重を調整しつつ、荷重が減った事によりスライドするリアタイヤと進行方向を調整する為に右ハンドルを切り、更に左へ曲がる為にバイクを左へ倒し込む為に左足を外へ出して左へ荷重移動を行っている。

ライダーが意識している荷重方向は左斜め後ろ側という事になる。53番よりも速い速度でコーナーへ進入した為、強いブレーキ力と遠心力によってリアタイヤのグリップは限界を超えた、おそらく102%前後の状態かとは思う。ここから前ブレーキを弱めつつバイクを左へ倒し込みながらリアタイヤのスライドを止め、軽くアクセルONの状態で左コーナーを曲げていく。不安定な状態から安定状態へと持ち込むのだ。
最高峰レースともなると、この様な繊細かつスピーディな技術が必要となる。
私もこの「足出し」は経験があり、倒し込みのきっかけとして使うことがある。
もっとバイクを倒していきたいがシート荷重(後ろ側)を弱める事ができない時、内足を出してバイクをイン側へ傾ける。オフロードやモタードバイクではよく使われる技だ。
シートに乗せた後ろ荷重を抜いてしまうと、ライダーの荷重はバイク前方向へ移行してしまうので、リアタイヤが浮き上がり、必要なコーナリングフォースを発生させられなくなってしまう、そんな時に尻はずらさずに内足を外(IN側)へ出して倒し込みのきっかけを作るのである。

この様に複合的に意図して荷重をコントロールしながら曲げていくのが2輪車の楽しさの醍醐味ではないのであろうか。それによって操作や判断が難しいので経験や練習が必要となるが、できる様になると上達した実感もひとしおであるかと思う。

4輪では運転手の体はシートに固定されている為、荷重移動はブレーキとステリングのみであるが、2輪車は前後左右の「体重移動」すなわち「荷重移動」がライダー自身に求められる。
バイクの車重ととライダーの体重を合計すると、個体差はあるがおよそ260kgくらいはある。ライダーの体重が装備重量含め80kg、バイクの総重量が180kgとすると、合計重量のおよそ30%程度がある程度動かせるライダー重量となり、その役割はとても大きい。

基本的にはコーナー進入前にブレーキとシフトダウンを終了させ、前後の荷重移動を終了させてからコーナーへ進入する準備をし、左右、つまり横方向の荷重移動を行い曲がって行くのが望ましいが、極論となると同時に行う必要があるので、複合的な荷重移動が必要という話になった。

前後、左右、複合(斜め)と3段階で理解していくことが良いと思う。

私もサーキット等で更に練習を積んでいこうと思う。
これを読んだバイク好きの人へ少しでも参考になれば良いと思い、あくまでも私の「自論」としての話を読んでくれてありがとう。

荷重移動の話 ー完ー

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