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女神の港

リグーリア州 ポルトヴェーネレ

海と山の間の狭小地にびっしり建ち並ぶカラフルな家並み。
イタリアには、そんなフォトジェニックな港町がたくさんある。北イタリア・リグーリア州ではCinque terre(チンクエテッレ)が観光客に人気だが、この年(2019年)はPorto venere(ポルトヴェーネレ)という町に立ち寄ってみた。
海を向いてズラリと横並びで建つ「背の高い」カラフルな建物群は、圧巻だ。この建物群の「高さ」が、他のカラフル港町とは違う。まるで暴風壁か城壁のようだ。というのも、この建物群の裏(後ろ側)には、メインストリートのような街路があってたくさんの民家や商店が軒を連ねているからだ。
 
土産屋で店員さんと世間話をしていると、奥の方から別の店員さんがニコニコしながらこちらに来る。そして、メモ用紙を差し出して
「ここに、日本語でPortovenereって書いて」
と言う。
私はまず、“ポルトヴェーネレ”とカタカナで書いてあげた。
すると、店員さん達はちょっと戸惑ったような顔。
「あ、そうか」
私はすぐに察して、書き直した。
“女神の港”と。
すると、店員さん達は「おおっ」という顔に。
 
彼らがイメージする日本語の文字、といえば漢字なのだ。ただ、漢字は音だけでなく意味を表す文字。いつも、音をとるか、意味をとるかで迷ってしまう。
今回は意味を採用した。ポルトヴェーネレの当て字が難しかったというのもあるが、せっかくPortovenere(英語でいうと、Venus port)という、神話のような美しい名前があるのだから。

フィレンツェからの一日旅行だったので、ぜひもう一度ゆっくり訪問したい、と思っていたのだが、この数か月後、イタリアを含め世界がCovid19の惨禍に見舞われることとなる。

《Portovenere》透明水彩、2019年5月訪問  本人撮影写真参考


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