吉祥寺駅のプラットホームにて
ジャンバーのポケットに入れていたホットレモンのペットボトルの蓋が緩かったみたいだ。ポケットに突っ込んだ左手から生ぬるい液体を感じた。だんだんジャンバーが湿ってきて残念に思う。
今、電車が通り過ぎた、と錯覚するくらい強くて冷たい風が頬を打つ。無意識に足踏みをしてみる。あんなに帰りたくなかった自分の家に早く帰りたいと思ってしまっていた。私は電車が来るまであと五分くらい待たなければならなかった。私の目の前に立っていたカップルは手をきつく繋いでいて、私は彼らがこれからもずっと一緒にいられる未来を想像した。私が持つ可笑しな孤独と皆への憧れはきっと今日の寒さから来ていたのだと気づいた。友達と別れた後の帰り道は、一人でいない人が沢山目に止まってしまうから嫌いだ。
寂しくなってきて、とうとうこの寒さにも耐えられなくなってきたから、丁度プラットホームに入ってきた乗るはずだった電車とは逆方向の電車に乗った。私は背を向けている人全ての人が無事にお家に帰れることを祈りながら、電車のドアが閉まっていくのを見た。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?