A∩C:デジタルで建設をDXする[085]

 BIMの大きな山が動いた。国土交通省では、11月15日開催の建築BIM環境整備部会において「BIMによる建築確認申請の試行」を25年度までに開始するとした。部会では省側から「令和4年度第二次補正予算(案)にBIM関連事業費80億円計上」との発言もあり、その後、間髪を入れず、「建築BIM加速化事業」として実施要項が公表された。

25年度までにBIM相互のデータ連携環境の実現と共にBIMによる建築確認申請の試行開始

 BIMによる建築確認申請の試行は、建築BIMの将来像と工程表の改訂に向けたロードマップであるタスク案の中で明示されている。
 タスク案では、BIMの成熟度をLevel0〜4に分類、25年度までにBIM相互のデータ連携環境(Level2 )を実現すると共に、BIMによる建築確認申請の試行を開始し、BIMの周辺ソフトや関連デジタルデータとの連携(Level3)を進めていくとしている。
 BIM相互のデータ連携環境では、BIMの属性情報の標準化ルールや数量・コスト算出方法の策定、PLATEAU※1との連携などを対象としている。
 BIMによる建築確認申請の試行については、確認データの書き出し+読み込みルールを策定するのと合わせて、確認用の共通データ環境CDE※2を構築し、試行の後にさらなる機能改善を行い、実施と普及に繋げていく。

BIMモデル作成費用・建物要件など詳細に明らかにされた建築BIM加速化事業の補助対象
 建築BIM加速化事業の目的は、「中小事業者が建築BIMを活用する建築プロジェクトの整備に対して支援することにより、建築BIMの社会実装のさらなる加速化を図る」とされている。QRコードから国土交通省住宅局建築指導課のホームページにアクセスして詳細を確認できる。
 補助対象は、1.23年度末までの基本設計、実施設計、施工のBIMモデル作成、2.設計BIMモデルや施工BIMモデルの作成等に要する費用、3.下請け事業者だけでなく元請事業者も、となっている。
 補助対象の建物の要件は、3階建て以上で敷地面積が1,000平米以上となっており、補助上限額は、建物の延べ床面積に応じて設計費は2,500万~3,500万円、工事費は4,000万~5,500万円となっている。
 補助を受けるためには、プロジェクトの代表となる事業者が登録する必要がある。国交省では事業者登録を23年1月中旬~3月下旬にかけて行い、交付申請は登録後、随時行う。

BIM導入時のライセンス費と共にBIMコーディネーター費などソフト面のコストも見える化

 16年3月17日、BIMの課題と可能性・105「シンガポールからの最新情報」において1社単位でBIM導入のソフト・ハード購入費、教育費、人件費など最大半額(上限あり)までを補助するシンガポール政府のBIM推進策を報告した。
シンガポールの事例にあるように、BIM援用のプロジェクトには教育費などソフト面で広範囲に渡るコストが必要となる。表「BIMモデル作成費」にあるように、本事業においても「BIMライセンス費」「BIMコーディネーター費」「BIMモデラ―費」が計上されている。それらソフト面でのコストの見える化、配慮からも国交省の本気度がわかる。
 これらの動きは、真水予算80億円の計上をBIM推進の起爆剤として建設業界のDX戦略を急進させる。新年は、建設業界を横断的に糾合し、BIMに象徴されるDX戦略を推進するべく活動を続けるRXコンソーシアム、建設業における組織の壁を超えたデジタルによる協働の優位性を担保するCDE「Bimsync」に関する報告からスタートする。 
※1:CDE(Common Data Environment): 建設プロジェクトに関わる多くの組織がより効果的に協働するために必須なクラウド上の共通データ環境。
※2:PLATEAU: 国土交通省が主導する日本全国の3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化プロジェクト。

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