A∩C:デジタルで建設をDXする[049]

 スターツ総合研究所、スターツアセットマネジメントでは、BIM データの不動産鑑定評価における有用性を検証するため、スターツプロシード投資法人所有の共同住宅の BIM データを日本不動産研究所に提供し、不動産鑑定評価等を依頼する共同実験を実施し、結果を公開した。

資産価値の判定手法の開発でBIMによるサービスを投資・金融・開発などの領域へ延伸

 スターツグループでは、BIMを建物のデータベースとして利活用し、建物管理・修繕等の実務から得た履歴データと組み合わせて加工・分析することによって、事業計画・設計・施工・維持管理といった建物のライフサイクルをマネジメントできるBIM-FM PLATFORMを構築している。
 合わせて社外企業との協働を通じて建物のライフサイクルの各段階におけるソリューションメニューの開発も推進しているが、中でもBIM による建物の資産価値の判定手法の開発は、BIMによるサービスを投資・金融・開発などの領域へと延伸していく上で必須であるとしている。
 日本不動産研究所では、建設業界におけるBIMの普及拡大やDX の進展を受けて、不動産分野におけるBIM データの有用性に着目し、建物評価の精緻化に関する取組みの一環として、BIM データを用いた評価手法について調査・研究を進めている。

鑑定評価のバックデータの見える化+収益性・経済的価値の算出+管理実態に即した評価

 21年2月から7月まで共同実験を行い、鑑定評価書及び各種評価レポートを作成している。BIMデータは、スターツプロシード投資法人が所有する共同住宅2棟のファシリティマネジメント用のモデルで、不動産鑑定用に必要な属性情報を精査し、BIM 要求仕様書に反映した上で日本不動産研究所に提供している。BIM データの抽出から鑑定評価書の作成に至るまでのデータ加工・検証フローは図を参照。
 実験手法及び結果から確認できた有用性について検証する。
 鑑定評価の基礎となったバックデータを見える化できる。BIM データを活用して建物の躯体や設備の数量・性能等を分析・集計することによって顧客への説明責任を果たすことができる。
 BIM データの空間情報(区画・部屋)を基準として各空間の収益性・経済的価値を算出できる。これによって空間ごとに建設等に係る費用を集計することで、長期修繕計画等の建物の建設・運用に係る費用の妥当性を多角的に検証できる。
 建物の個別性を鑑定評価に反映できる。BIM データの部位・部材情報と共に、建物の修繕・更新履歴等の情報を活用することで建物の個別性や管理の実態に即した評価が可能になる。

本格的なアセットマネジメントへの起点となるBIMの建物3次元モデルによる不動産鑑定

 昨年、施設管理とBIMに関するセミナーに参加した際のことだ。大手管財会社から「BIMによる施設管理をというが図面ベースで管理しており、検索もままならないのが現実だ」と聞き、愕然とした。ましてやBIMの精緻な建物3次元モデルによる不動産鑑定は夢のまた夢だ。
 そのような状況下、建物を設計・施工・管理するBIMから経営するBIMへと、不動産鑑定評価において BIM の有用性が確認できた意義は大きい。BIMをエビデンスとする本格的なアセットマネジメントへの起点となるし、将来的には不動産評価の再検討など企業のパランスシートのあり方にも一石を投じるに違いない。

図キャプション
共同実験のスキーム

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