A∩C:デジタルで建設をDXする[091]

 国土交通省が建築BIM加速化事業で80億円の予算を計上したインパクトは大きかった。建築主もBIMの重要性に気づいている。ユニクロのファーストリテイリングでは、BIMスペシャリストの募集を始めた。BIMの普及・浸透を加速化させる新たな胎動が生まれている。

建築主としてファシリティを管理・運用するためにはBIM情報の利活用が不可欠と宣言

 3月5日、ファーストリテイリングの採用情報に目を見張った。BIMマネージャーを募集していた。グローバルファシリティマネージメントと修辞を付けてだ。世界的なスケールで、店舗、施設などのファシリティを管理、運用するためには、BIMをベースにしたデジタル情報の利活用が不可欠であると建築主として宣言している。早速、ゼネコンのBIM担当からは「ファシリティの情報は、何をどこに置き、何がどれだけ売れているかの基本だし、出店スケジュールやコストコントロールのためには避けて通れない」とコメントがネット上に発せられた。
 募集背景も明快だ。配属予定先の出店開発部のミッションは、ファーストリテイリンググループの全ブランドの事業戦略の構築とグローバルな出店網の拡大であり、そのような全社戦略に伴い、旗艦店の出店、積極的なScrap & Build、急速なデジタル化などが求められる中、それぞれの地域にとって最適な出店を展開するとしている。
 職務内容では、BIMマネージャーとして、設計施工領域で推進中のFR-BIMプロジェクト推進のためのプラットフォーム構築、コンテンツ作成、コンテンツの保守保全、ユーザーサポートを行うと共に、将来的にはBIM社内人材(国内・海外)の育成を行うとしている。キャリアパスについては、出店部署内の他チーム(出店開発、店舗設計、アセットマネージメント)への異動を通じて、長期的には経営課題解決を推進していく役割を期待するとしており、BIM情報がアセットマネージメントの中核であり、経営課題の解決に直結するとの認識が明示されている。
国土交通省の建築BIM加速化事業の募集要項において、補助⾦の対象としてBIMマネージャー、BIMコーディネーターに関わる人件費、委託費が計上されていることからも、建築BIMの推進には、それらの人的資源が重要視されていることがわかる。

セミナーでBIMマネージャーの役割設定の考え方を解説+海外の先進的な取り込み事例報告

 BIMソフト「Revit」のベンダーであるオートデスク社では、4月6日に建設業デジタル戦略セミナー「BIMマネージャーとは?」をハイブリット形式で開催するとし、参加者を募集している。
 セミナー開催の趣旨によると、オートデスク社では、BIMの推進に伴い、BIMマネージャー、BIMコーディネーターなどの職能が建設プロジェクトの成功にとって極めて重要になっているにも関わらず、企業・組織側では、BIMマネージャーの役割と責任をどのように設定するか、BIMマネージャーを建設プロジェクトにどのように参画させるべきなのかが不明確であると現状を認識している。そのためセミナーでは、組織戦略及びプロジェクト推進の観点からBIMマネージャーの役割設定の考え方を解説し、海外の先進的な取り込み事例についても報告する。
 講演者の高橋りえん(グローバル事業開発部アジア太平洋地域建設事業開発部長)氏は、東北大学工学研究科卒業、修士(工学)修了、建築設計および地域環境計画専門。22年より現職。アジア太平洋地域の建設業界を中心に事業開発を統括し、オートデスクの建築ソリューションのビジョン、世界におけるBIM・DXの状況のリサーチ結果などを国内建築業界に共有・展開している。

建築BIM加速化事業の概要から

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