A∩C:デジタルで建設をDXする[034]

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 地方都市でのBIMの導入も進んでいる。現況を探るべく、沖縄県那覇市に本社を構える金秀建設の宮城諭(企画営業本部設計部部長)と山川真衣(同係長)の両氏にオンライン取材した。


膨大な労力の「平立断」図面間の確認・修正作業から解放されるメリットに気づいた設計者


 金秀建設は、建築・土木の請負工事、建築の設計・監理業務、自社独自のマンションの企画開発など多岐に渡り事業展開する総合建設会社である。
 BIMソフト「GLOOBE」は、設計実務をデジタル化し、生産性と品質の向上を目的にトップダウンによる決断で14年に導入した。当時はBIMに関わる情報も限られており、社内にはBIMはこれからの建設業に必要だが、果たして何ができるのかとの思いも潜在していた。
 2次元CADでは図面をベースに設計を進めるのに、BIMでは3次元の建物モデルを前提に設計を進める。設計手法の決定的な相違を克服するため、管理職も含めて設計部員がベンダーのセミナーに積極的に参加して課題解決を進めた。
 セミナーでは、BIMソフト「GLOOBE」によってどのように建物3次元モデルを構築し、建物3次元モデルから2次元図面が自動生成されるのかを学んだ。設計者は、「平立断」図面間の整合性が確保されるのを理解し、膨大な労力を要する「平立断」図面間の確認・修正作業から解放されるとのメリットに気付いていく。合わせて建物3次元モデル構築に多くの手間を要しても、2次元図面間の整合性が確保できるとのメリットによって、設計者はBIM活用へのモチベーションを高めていった。

目指すのは設計・施工から維持管理までの一貫したBIMによる建物3次元モデルの活用

 総合建設業として設計部門でのBIM運用に留まらず更なる展望も描いている。企画・基本設計から実施設計に至るまでを内製化すると共に、協力会社へのBIMソフト「GLOOBE」導入なども推進することで、次なる施工BIMへの連携も志向している。
設計BIMモデルの数量データと積算ソフトを連携し、施工BIMへと繋げる目標を立てた。それら案件では、設計部内で企画・基本設計から実施設計までを行い、数量ベースでの施工との連携を実現する予定だ。
 建物3次元モデルを現場監理での干渉チェックなどに用いて設計との相違点の把握を進める。工程会議の際に、2次元の紙ベースではなく、BIMによる建物3次元モデルで打合せを行うことで、変更への対応を容易に把握でき、維持管理フェーズへと繋げることでBIMの運用効果を生み出していく。そのように設計・施工から維持管理まで一貫してBIMによる建物3次元モデルを活用することで、業務の効率化が実現できるとの期待を持っている。

驚きの声も上がり効果が絶大であった30名余の関係者が列席した理事会での動画プレゼン


 競合に勝ち抜き、獲得した案件が「沖縄県自動車整備振興会会館新築工事(仮称)」だ。鉄骨造2階建て、延床面積1837.7平米の事務所建築だ。公共性の高い建築物であり、受注すれば社内外への影響も明らかだと考え、BIMソフト「GLOOBE」によるプロポーザルに挑戦した。
 特に効果を発揮したのが刻々と変化する日射の動画だ。居室の細部までの3次元入力に多大な時間を要したが、理事会での正式プレゼンの前に担当者に動画を見せると、図面や文章だけでは分からない箇所も動画で確認できるのでとても分かりやすいと好評を博した。30名余の関係者が列席した理事会では競合他社の前での動画放映となった。効果は絶大であった。
 今回の案件受注によって設計者はBIMのメリットをより一層、明確にできた。今後は、BIMのスキルアップに努め、新規案件に対しても機動的に対応、設計施工案件においてはフルBIMによるデジタル連携を本格化させる計画だ。



図キャプション
沖縄県自動車整備振興会会館新築工事(仮称)外観パース

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